見出し画像

いつでもきてねって言える覚悟をもって


道を歩くと、どこのお店の看板からも、こう声が聞こえる。
いらっしゃいっという言葉が。


来てくれた人を迎える言葉は。
いつでもおいでっていう言葉でもあって。


いつてもおいでって言葉は、そのお店の人の覚悟なんだ。



お昼ごはんを食べていたときのこと。


「煮付けは、弱いのよね。」


カウンターで食べていたら、常連さんと女将さんの会話がとなりからこぼれてきた。意外だねぇっていう常連さん。


「煮付けはね。でも、この人は作りたくって。でも、やっぱりね。」


となりで煮付けをあたためている旦那さんをつつきながら言う。いつもよりも空いている店内を見渡して、ポロポロとこぼす。


その声に、カウンターやテーブル席からもどんどん会話がひろがる。
はじめまして同士の会話に目を細めながら。カレイの煮付けをつついた。


どんな天気でも、どんな気持ちの日でも。とびっきりの材料と全力をつくす自分で待っているよ。飲食店を営むいっらっしゃいには、そんな意味がこめられているのだろう。


きてくれる人を迎えるために待っていることがどれだけすごいことなのか。こうして、書いてなかったらきっと理解できなかっただろう。


そんなの当たり前じゃないかって。それが商売で仕事なんでしょうって。あまり考えずにいってしまっていただろう。


当たり前なんて、言えない。
つよくつよく、そして折れずにいられる覚悟がないとできない。


ひとりもこなかったら、食材も作った時間も、自分の時間もムダになるかもしれない。

気持ちを、志を、ブレさせるおおきな要因にはなる。不安になったりすることだって、たくさんあるだろう。


いくらでもでてきてしまうブレさせる何かはなくならない。もうそれは、覚悟でしかなくて。
同時に楽しんでいくくらいの余裕がないと、とてもじゃないけど、つづけられない。


この人は、何度乗り越えてきたんだろう。そっと、カウンターの向こう側で盛りつけをしている大将をちらっとみる。


結果がどうであっても、ぶれずにいられる。
目指すところをみるというよりも、いつでもありたい自分で。その極めたいことをずっと楽しもうって気持ちで。


むしろ、このくらいの強さがあれば、きっと、わたしも書きつづけていけるかな。


どんな天気でも、どんな気持ちの日でも。
あなたが少しの間、ほっとひと息つけるようなとびっきりの言葉と物語をつくりだして、待っています。いつでもきてくださいね。


ここ、noteでは、そんな意味がこめていたい。きてくれる人を迎えるために待っていたいなって。



「じゃあ、お先に。」


煮付けがいかに美味しいかや、一番の人気は天丼とか。いやいや、これでしょうとか。


どんどんまわりを巻き込んで、盛りあがって話していた人が、ひとり、またひとり、自分の仕事のためにもどっていく。


はっと時計をみると、いい時間だった。そっと席をたつと、女将さんがにっこりとお会計をしてくれた。


「ありがとうございました。」


カウンターごしにならぶ夫婦に、敬意をこめて、のれんをくぐった。

またきますねって、そう言ってもらえるような言葉をわたしも書こう。そう心に決めながら。

いつも読んでくださり、ありがとうございます♡