【考察】君に捧ぐアイビー

※希佐ルート、世長ルート、白田ルートの一部ネタバレを含みます。
※主に世長ルート、田中右エンドのスチルバレがあります(画像はなし)。
※取り扱うテーマの関係上、性的表現やモチーフに関する内容が含まれます。


(始めに)
本記事は主に以下の複数方々の情報と協力の下に作成されています。

1.アイビーの花言葉
https://twitter.com/Kairi_JJ/status/1411266396240056327

2.Cö shu NieのiB
https://twitter.com/snd_because/status/1428756210593927171

3.植物のアイビーの性質
https://twitter.com/haruka_ito_0309/status/1428898191647277066

4.アイビー牛と油化粧
https://twitter.com/hiresake224/status/1415671760402280459

記事作成及びツイート掲載のご快諾、誠にありがとうございました。
今回記載を行っていない方々を含めこの場をかりて改めてお礼を申し上げます。


さて、本題に入っていきましょう。

今回の考察の主軸はタイトルや前置きの通り「アイビー」。
ツル植物の一種でガーデニングやインテリア、ブーケなど多方面に利用されています。
(属名はキ「ヅタ」だけど、実態は「ツル」植物というややこしいヤツでもある。)
で、なんでジャックジャンヌと一見関係なさそうなアイビーが出てきたのかというと、どのルートの最終公演でも登場するイザクのこのセリフ。

イザク「僕、アイビー牛のステーキがいいな」

ただ単に「ステーキがいいな」というセリフでもいいのになぜ「アイビー牛」指定?
一応このセリフ、おそらくここから後のシーンで同じくルートによらず登場する

※シシアの足の細工について
側近「……少佐。
あのシシアという団員……」
アズール「アイビー牛の油化粧だ。
牛脂を溶かした湯にしっかり肌を浸さないと落ちない」

という会話に繋がっている――と考えられます。
つまり、イザクはシシアのクアトラルを隠す細工に使う牛脂を入手するためにアイビー牛のステーキを希望した可能性が高いです。

「え?
イザクがシシアの正体を知っている、幼馴染みなのは希佐ルート、世長ルートだけでしょ。
ただの深読みじゃね?
他ルートではそんなはずないじゃん」という人たちへ。

ここで希佐ルートの会話を思い出してみましょう。

※最終公演前
世長「イザクの過去か……。
……シシアの幼なじみ?
(中略)
シシアの顔を見て……。
イザクだけが気づく。
シシアだ、って。」
希佐「シシアは気づかない……?」
世長「どっちだろう。
2人の間ではわかりあっているのかも。
……でもイザクはそれを言わない。
シシアもわかってて黙っていてほしいな。
これはシシアの物語だから。
(中略)
……最後まで、イザクは道化を演じる。
それがピエロの役目だから。」

世長がイザクの過去について考えるシーンですが、「シシアがイザクと面識がある素振りを見せる必要はない」と話しています。
また、その理由を「これはシシアの物語だから」、とも。
これようするに、物語としてこの部分をはっきり開示してしまうと蛇足になるから、でしょう。
最終公演は選択したルートによってスポットライトのあたる人物が変わる仕様です。
この世長の考えは、希佐ルート以外の他6バージョンにも適用されている、と仮定することができます。
つまり、

織巻ルートならば、「シシアとチャンスの物語」だから、シシアはイザクと面識がある素振りを「見せる必要はない」。
白田ルートならば、「シシアとカルロの物語」だから、シシアはイザクと面識がある素振りを「見せる必要はない」。
高科ルートならば、「シシアとアドラの物語」だから、シシアはイザクと面識がある素振りを「見せる必要はない」。

睦実ルート、根地ルートも同様です。
ただし、

世長ルートならば、「シシアとイザクの物語」だから、シシアはイザクと面識がある素振りを「見せる必要がある、あるいは見せてもいい」。

ということになります。
希佐ルートの場合、イザクの設定は世長が根地に進言する形で追加されたように描写されていますが、ここで彼が希佐に話した内容は世長ルートで開示されるものと同じです。
世長の進言の有無によらず、根地はイザクについて、同じような発想、解釈を行っていると考えることができます。

また、根地の脚本はあてがきで、演者と役の間には強い繋がりがあります。
「シシアの正体を知っており彼女を守ろうとする」世長ルートのイザクの言動は、世長が「希佐の性別を知っており彼女の手助けをしている」ことに対応していると考えられます。
つまり、「希佐の性別バレ=シシアの正体バレ」です。
さらに、世長ルートを考慮すると、根地は希佐の秘密を知らぬまま(おそらく)直感的にこの二人の関係をシシアとイザクという役に綺麗に落とし込んでいる、と推測されます。
※他にも根地は希佐の秘密を無意識下では感じ取っている節がある。
https://note.com/snowblossom_jj/n/n2a79984397fb
加えて、世長はルートに寄らず希佐の性別を知っており、なおかつその事実を彼女と共有している数少ない人物です。
※フミや白田は気づいていても自ルートに入らなければ、本人に確認ができないため事情が異なる。

以上のことをふまえれば、
「イザクはシシアの正体を知っており、彼女を守ろうとしている」
という設定は描写されていないだけで、全ルートで生きていると考えた方が自然でしょう。
また、コンプリートコレクションのイザクの紹介文には、「シシアの幼馴染で、シシアが隷国の出身であることに気が付いている」とはっきり記載されています。
よって、イザクがわざわざアイビー牛と種類まで指定して食事の希望を出しているのは、先に述べたように、やはりシシアのクアトラルの細工に使う牛脂を入手するための密やかなサポートと捉えることができます。

(補足)
イザクが特定ルートでのみ幼馴染みでシシアの正体を知っている――と解釈されることがある原因の一つはおそらく、シシアの性別が可変であるためでしょう。
特に、攻略キャラをパートナーに選ぶ6ルートの中で、白田のシシアのみがジャックエース(男)という少し特殊な状態になっています。
しかし、希佐ルートの根地の発言を思い出してください。

根地「シシアを、性別を超えた主人公にしたいんだ。
(中略)
『天使』みたいなものかな。
もちろんどちらでもあるから、劇中で、彼……あるいは彼女に愛情を寄せるのも自由だよ。
チャンスとファン・カルロが同時にシシアを愛することもできる。」

シシアのイメージは性別が曖昧な天使です。
男でもあるし、女でもある。
「チャンス(→男)とファン・カルロ(→女)が同時にシシアを愛することもできる」というように、恋愛関係になる相手、対象がどこまでも自由な存在。
そして、演者が希佐であることはどのルートも変わりません。
(イレギュラーが発生する世長ルートでもあくまでモデルは希佐です。)
ならば、あてがきの形式をとる根地の脚本の中で、シシアに重ねられているイメージも根底にあるもの――基本は同じでしょう。
アルジャンヌ(女)もジャックエース(男)もシシアの一側面。
希佐の透明な器に入るもの=パートナーにあわせた形をとっているだけ。
演者の希佐と同じように、各ルートのシシアは異なる選択を行った結果、受ける印象が変わっているだけで同一の存在です。

さて、ここまで長々と書き連ねてきましたが、それでもやはりイザクやアズールの会話に出てくる単語が「アイビー牛」である必要性はありません。
単なる「牛」、「牛脂」でも誰も気にとめないはずです。

ジャックジャンヌ作中に登場する各公演の内容の構成の緻密さは今までの考察にお付き合いいただいてきた方には何となく伝わっているかと思います。
※参考1 月の王含む全6作品はモチーフごとに対になるように規則的に並べられている
https://note.com/snowblossom_jj/n/n3a79a307ee04
※参考2 根地が執筆した脚本には必ず彼のトラウマが存在する
https://note.com/snowblossom_jj/n/n2a79984397fb
※参考3 各演者には決まったモチーフがあり、全てそれに従う形で各役もデザインされている
1.世長 https://note.com/snowblossom_jj/n/n4aae5212c3da
2.スズ https://note.com/snowblossom_jj/n/ne2ad4d5cd3b2
3.白田 https://note.com/snowblossom_jj/n/n7dee9791f870
(他クォーツ生の一覧も鋭意作成中……。)

よって、この「アイビー牛」にも根地(とスイ先生、十和田先生)は何らかの意味をもたせている可能性が高いです。
そしてここで(やっと)前置きなどで触れたアイビー――今回の主軸の話に入っていきます。

この「アイビー牛」という単語、「アイビー」部分が実は大事で植物のアイビーとCö shu NieのiBのことじゃないの?

という話です。
仮定をもとに一つ一つ情報を整理していきましょう。


①植物のアイビー

1.花言葉は永遠の愛、結婚、不滅など

世長はフギオーの話を織り交ぜつつ希佐にこんなことを話しています。

※冬公演後(好感度差分)
世長「……フギオーはね、チッチのこと心から愛していたよ。
どんなにつれなくされても、拒絶されても、多分これからもずっと、あきらめ悪く愛し続けるんだと思う。
それがいいことなのかどうか、僕にはわからないけど……。
ちょっと、うらやましいんだ。
フギオーは自分の気持ちに正直だからさ。
僕とは全然違う。
でも、すごく似てる……。
君がほかの誰かにヨモギ売りの仕事をしていたら、僕はいやだったよ。
僕、チッチのこと、好きだな。
チッチの強いところも、弱いところも、全部。
本当に……全部好きだ。」

2.1に加えて「死んでも離さない」という怖い花言葉があることで有名
→世長と同じ二面性(表か裏か Heads Or Trails)を持つ存在
※参考1 https://note.com/snowblossom_jj/n/nc976944dbeb4
※参考2 https://note.com/snowblossom_jj/n/n57449ab553e6

3.繁殖力がとても強い
→世長は豊穣神、生(性)を司る存在
※参考1 https://note.com/snowblossom_jj/n/n57449ab553e6
※参考2 https://note.com/snowblossom_jj/n/na8776559a57c

4.種類が多く、利用方法も多様
→世長はジャックもジャンヌも華も器もできるクォーツの器(透明な器)
※参考1 https://note.com/snowblossom_jj/n/nc976944dbeb4
※参考2 https://note.com/snowblossom_jj/n/n0408989b3106

5.モノに巻き付いて這うように成長する緑色で細長い植物
→モノに巻き付いたり、地を這う緑色で細長い何か
→ヘビ
→世長は嗜好や見た目がヘビそのもの
※参考1 https://note.com/snowblossom_jj/n/n57449ab553e6
※参考2 https://note.com/snowblossom_jj/n/ncd48ae4c5451


②Cö shu NieのiB
そもそもCö shu Nieはスイ先生自身が東京喰種:reに関わるアーティストとして抜擢、起用し、同作OPのasphyxiaでメジャーデビューしている。
つまり、ジャックジャンヌを作ったスイ先生とはもともと関わりが深い。
TwitterでCDをまとめて購入している様子なども呟いている。
また、スイ先生は東京喰種の時から作業の際に音楽をよく聞いているようで、イラストとセットでアーティスト名、曲名が投稿することも多い。

1.iBの読み方
植物と同じアイビーが正しい。
※音楽配信サイトやカラオケ公式サイトで確認。

2.歌詞
iB「明日は雨だって一日中、部屋にいようね」
→希佐と世長の合言葉「(今日は)いい天気だね=一緒に出かけよう」

晴れの日に出かけるなら雨の日は2月24日してるんですか?と一部からネタにされていたが、同曲の歌詞を全文見てみるとあながち間違ってもいなさそうである。
他にも世長ルートのセリフや描写を彷彿とさせる内容がチラホラ……。


③旧約聖書のイヴ
希佐の主要な元ネタの一つ。
ジャックジャンヌの作中には世長=アダム、希佐=イブというモチーフや構図が頻繁に登場する。
※参考 https://note.com/snowblossom_jj/n/n2e88776b11db

①、②とあわせて

アイビー→iB→イブ(イヴ)=希佐

という言葉遊び。
(ちなみに、Cö shu NieのiBはしばしばイブと誤読されるらしい。)
また、ヘビ(=アイビー ※①参照)はイブを唆して禁断の果実を食べさせた存在であるため、彼女とはセット、シンボルの関係にある。
希佐の役の衣装にもこの考えが反映されているものが複数ある。
※参考 https://note.com/snowblossom_jj/n/n2e88776b11db


よって、①~③より、イザクが好きなアイビー牛は

植物のアイビー
+Cö shu NieのiB(アイビー)
+希佐に重ねられている旧約聖書のイヴ(→I・bu→I・B→アイ・ビー)

のトリプルミーニングと考えられます。
そして、

イザク「僕、アイビー牛のステーキがいいな」

というセリフはイザクからシシア、世長から希佐に向けた影の献身の表れであり、例えどんな運命や結末があろうと君を永遠に愛し続けるという密やかな告白と誓いでもあった――というわけです。
(さりげない一言のクソデカ感情がやばすぎる。)

さてこの考察、これで終わりではありません。
このアイビー、実はジャックジャンヌの作中にスチルや背景の形で頻繁に登場しており、世長を象徴する植物であることが分かると意味が解けるものが結構多いのです。
では以下、「アイビー=世長あるいはヘビ」という解釈を前提として順に見ていきましょう。


①新人公演:不眠王、終盤の娘と不眠王のスチル
背景の白い柱にアイビーが絡みついているのが確認できる。

西洋絵画で十字架は柱で表現されることがあり、イエス(→世長の元ネタ)の磔刑は旧約聖書に登場する旗竿(→棒状のもの→柱)の先に掲げられたヘビ(青銅の蛇)と重ねられることがある。
また、白とヘビの組み合わせ(→白ヘビ)も世長のモチーフに大きく関わっている。
※参考1 https://note.com/snowblossom_jj/n/n0e897dc0c78d
※参考2 https://note.com/snowblossom_jj/n/n57449ab553e6
※参考3 https://note.com/snowblossom_jj/n/ncd48ae4c5451

つまり、

アイビーが絡みついた白い柱
→ヘビが絡みついた旗竿
→イエスの磔刑
=世長の死

であり、世長に近い将来に訪れる死の暗喩である。
※世長と死の運命については https://note.com/snowblossom_jj/n/n57449ab553e6

なお、なぜ希佐とスズが主役の公演でこのような不吉な暗喩が出てくるのかについては、不眠王とヴィルヌーヴ版美女と野獣、キューピットとプシュケーの伝承の関係性の解説が必要になるため今回は省略とする。
(掃除番の秘密と彼女が閉幕後に辿る運命に繋がる大事な部分でもある。)


②秋公演:メアリー・ジェーン、シャルルとフィガロのスチル
背景の建物とおぼしきものにびっしりとアイビーが生い茂っている。

シャルルとフィガロは、

・シャルルは男(ジャック)ではなく男装の少女
※参考 https://note.com/snowblossom_jj/n/n2a79984397fb

・実際はシャルルが妹、フィガロが兄で双子の近親相姦カップル
※参考1 https://note.com/snowblossom_jj/n/n2a79984397fb
※参考2 https://note.com/snowblossom_jj/n/n2e88776b11db

ではないか、と過去に何度か考察で触れてきた。
加えて、

・フィガロの名前の由来はカロン・ド・ボーマルシェのフィガロの「結婚」
※参考 https://note.com/snowblossom_jj/n/n4aae5212c3da

・アイビーは永遠の愛などの花言葉から「結婚」式のブーケや華飾りに使用される

よってこのスチル、背景のアイビーを用いてフィガロとシャルルが、アダムとイヴなどをイメージした近親相姦の恋人――をさらに越えた夫婦であることを示唆していたものと考えられる。


③冬公演前、田中右と希佐のダンススチル
背景にアイビーがシルエットで描かれている。

まず、前提として田中右はジャックジャンヌにおける死の概念の象徴である。
※参考 https://note.com/snowblossom_jj/n/n6f18c0a2de71
つまり、このスチルの希佐は死とダンスをしている、と言える。
これは、死の舞踏(ダンス・マカブル)という死の恐怖や理不尽さ、平等性などを描いた西洋美術の様式のオマージュである。

さらに、ジャックジャンヌの中ではしばしばダンスが性行為の暗喩として登場する。
※参考1 https://note.com/snowblossom_jj/n/n7ef59ca4f9a9
※参考2 https://note.com/snowblossom_jj/n/n2a79984397fb
ここでの希佐は、田中右=死とセックス(=ダンス)している、という解釈も可能である。
おそらくスチルが縦長の構図のようなのに、頭が右向きで横画面表示されるのもこれが理由。
(私信:某方へ いつも指摘と情報共有ありがとうございます。)
よく見ると田中右の足がやや不自然な描き方をされており、二人の下腹部が異常に接触している。
もっと言うと、田中右が希佐を押し倒して男性器を突き入れているように見えるように、意図的に調整されている。
ここでの二人を目撃した攻略キャラが希佐に対して女を感じたというような旨の発言をするのも、まあそういうことである。
(真っ昼間の野外でヤッてんだよ、暗喩的には。)

おそらく田中右ENDのスチルも同様に死の舞踏+男女のセックスを表現したものである。
(希佐ちゃんの貞操が大分心配なEND……。)

で、このスチルの背景に世長のシンボルであるアイビーが登場しているのはなぜかというと、他のシーンとの対比のためだ。
ジャックジャンヌという作品の中で世長(イザク)は生(豊穣神、リビドー)を、田中右(がしゃどくろ)は死(不毛、死神、デストルドー)を象徴する対極の存在にある。
※参考 https://note.com/snowblossom_jj/n/na8776559a57c
大まかな解釈としては、

生を司る世長(豊穣神)との性行為(世長ルート:2月24日など)
→生と一体化する(体を繋ぐ)
→命を得る

死を司る田中右(死神)との性行為(希佐ルート:田中右ENDなど)
→死と一体化する(体を繋ぐ)
→命を奪われる

という構図。
※この他にも世長と田中右には細かな対比が複数ある https://note.com/snowblossom_jj/n/n6f18c0a2de71

この世長と田中右、生と死の対比は立花希佐という人物を掘り下げる上でかなり重要なポイントなのでまた個別記事にて(年内公開を目処に執筆中)。
なお、カイも睦実ルートで希佐と肉体関係をもっていると思しき描写があるが、ここはまたニュアンスが微妙に異なる。
(内容的には関係している部分もあるため、カイについても世長と田中右に関する記事で取り上げる予定です。)


④世長ルート、田中右と百無の稽古スチル
③と同じく、背景にアイビーがシルエットで描かれている。

世長ルートを基準にした場合は③とは少し趣が異なり、世長と希佐、百無と田中右のペアが対比になっていることがシナリオを読むことで分かる。
このスチル

・背景にアイビー→世長のシンボル
・百無がなぜか赤目→世長の瞳と同系色
・百無の口が横に異様なほど裂けた不可解な表情→ヘビ=世長

と意図的に百無が世長のイメージと重なるようになっている。
さらに、このルートのポイントは「世長と百無が似ていること」である。
世長は最終的に百無とは「似ているけど違う」という結論に至っているが、彼が指摘してきた自分の歪さの全てを否定するということはしていない。

よって、ここでアイビーが描かれている理由は、世長の希佐に対する愛が持つ側面の一つ――希佐を食べてしまいたい、一体化したいという歪み、狂気の示唆である、と考えられる。
もっと言うと、希佐を食べてしまいたい=抱きたい(体を繋ぐセックス→一体化)という世長の肉体的な激しい愛やリビドー(生、性の衝動)の表現でもある。

・アイビーが黒いシルエット
・鮮やかな緑の背景

と③と似たようなデザインが施されているのも、性行為(肉体的な愛)の表現を主な軸として2枚のスチルが対比になっているからだろう。


⑤ユニヴェールの校舎外観
会話シーンに使用されている背景画をよく見ると、建物の壁にツル植物(おそらくアイビー)が大量にまとわりついている。
※共通シナリオ序盤の白田のスチル背景でも確認可能。

まず、ユニヴェールの校舎の宮殿風のデザインは、世長と希佐の主要な元ネタの一つであるキューピットとプシュケーの伝承の以下の部分がモチーフである。
※参考 https://note.com/snowblossom_jj/n/n0e897dc0c78d

キューピット(=世長)との婚姻が決まったプシュケー(=希佐)は山(=大伊達山)の上で、風の神ゼピュロスに運ばれ(=EDの風が吹いたんだ)、彼の用意した楽園のような宮殿(=ユニヴェール)にやってきてもてなされる(=夢を見る)。

ようするにこの大量のツル植物、学校は世長=キューピットの持ち物と遠回しに言いたいらしい。

またこの背景、建物側――画面右の地面をよく見ると、タイルと芝生と思しきものが正方形に仕切られ、互い違いのモノクロタイルのように配置されている。
これ、おそらく世長が持つ二面性(表か裏か Heads Or Trails)の象徴である。
実は各キャラが自ルートで受け取るバレンタインチョコ全12種には、それぞれの種類や数、形に応じて全て細かい元ネタやモチーフ、意味がある(来年2月にはまとめたい所存)。
世長は手作りを選択した場合に希佐から受け取るのが、白と黒の正方形のチョコを互い違いに詰めたもの(→モノクロタイル)。

互い違いに並べられた正方形の白と黒のチョコあるいはタイル
→白と黒、神と悪魔、豊穣神と祟り神、フギオーとイザク
=世長が持つ二面性(表か裏か Heads Or Trails)

という発想。

ようするにユニヴェール、学校ではあるのだが実際のイメージはがっつり世長の領域(宮殿、城)、もっと言うと馬鹿でかい彼の家で希佐とのハネムーン空間である。
(なんだこいつ……。)

ちなみにこれ、ネタとかではなくしっかり意味があるのでまたいずれ。

(補足)
白黒タイルの表現は、世長と同じモチーフやセルフオマージュ的要素がよく見られるスイ先生の前作、東京喰種の主人公カネキにも使用されている。
精神世界にしばしば登場するが、それ以外にも特に象徴的な描かれ方をされている箇所がある。
カネキの人間か喰種かという自己認識(=世長と同じ二面性、表か裏か Heads Or Trails)の大きなターニングポイントとなるヤモリ戦(無印7巻)の舞台はモノクロタイルの部屋である。


~番外編~ ユニヴェールの図書館
アイビーは特にないのだが(まあ室内だし)、少しデザインの異なるモノクロタイルが床になっていて⑤と関連性があるのでまとめて掲載。
床のデザインや世長が比較的よくいることから、ここも彼の領域なのがなんとなく分かるかと思う。
で、ここ具体的になんなのかというと、

・昼間でも他と比べて薄暗い室内
・トンネル状の構造が多い
・図書館は湿気がち

以上のことからおそらくヘビの巣穴。
ユニヴェール自体が世長の家のようなデザインだが、特に図書館は彼のプライベート空間と思われる。
そりゃよくいるわけだ……(マジでなんなんだこいつ)。
なんでよりによって図書館なのかというと、おそらく西洋絵画などで書物を手にしたイエス(=世長の元ネタ)は律法の伝導者を意味するから。
世長と同じ元ネタを持つスイ先生の前作、東京喰種の主人公カネキが読書家なのもおそらくこれが理由の一つ。
(こんなんわからん。)


では、今回はここまでです。
お付き合いありがとうございました。
次回更新(早ければ明日)は世長のオムライスに関する考察の予定です(自ら逃げ場を立つスタイル)。



~以下どうでもいい近況~
この記事のためにアイビーに関してずっと調べたり確認作業をしていたせいで、私はあつ森の一部家具を見るたびに世長を感じるようになってしまいましたとさ。
(アイビー飾られてる家具、もともとデザインが好きで結構飾ってたっていう……。)