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逃避夢(レビュー/読書感想文)

逃避夢(藤谷文子)を読みました。
2001年の作。藤谷文子さんは女優としてのイメージが強いかも知れませんが文筆業もされています。現在は米国在住とのこと。

私は、この世界の、どこに行けばいいの?
女優 藤谷文子=21歳、が17~18歳で書いた多感を極めた処女ノベル。どうしようもない人のつながり、運命に傷つけられた少女をVividな感覚で描く。
母の言葉によってどんどん逃げ場を失う少女・純は、女の子のような名前を付けられた1人の男に出会う。極限までの優しさを描く!話題の映画「式日」のベースストーリー

講談社「逃避夢/焼け犬」紹介ページより(上記リンク)

私は映画「式日」は発表当時に観ていましたが、ふとその原作とされる本作のことが気になり今回初めて読んでみました。ちなみに、映画の内容は以下です。

撮るべきテーマを失い、故郷へと戻ったカントク。ある日彼は、明日を拒絶し“誕生日の前日”を生き続ける“彼女”と出会う。カントクは彼女に興味を抱き、カメラを手にする。

映画ナタリー「式日」紹介ページより(上記リンク)

映画を観たのはもう随分前なので細部は覚えていませんが、「明日は私の誕生日なの」という言葉を毎日繰り返す少女(主演は藤谷文子さん本人)の狂気は今も印象に残っています。

今回、初めて「逃避夢」を読みましたが、映画とは別物であるように思えました。

映画は、小説のエッセンス(テーマ)を抽出し、再構築したという感じでしょうか。

正直、読み解くのは相当に困難です。現実と虚構の描写が入り乱れますし、本文は三人称で綴られているものの視点は同一のセンテンスの中でコロコロと変わります。読みやすい小説とはとうてい言えません。

読者のことを考えて書いているわけではなく、とにかく作者である藤谷文子さんが自身(十代当時)の内面をあるがまま生々しく書き殴ったような作品です。

そう書くと悪印象の感想のように取られるかもしれませんが、私は本作のことが嫌いではありません。生きづらさを抱える内面をどう発露するかは人それぞれでしょうが、たとえその表現が歪つであっても不思議と伝わる人には伝わります。また、生きづらさを訴えることは若者だけの特権でもありません。コミュニケーションの難しさは人にとって永遠のテーマです。

映画「式日」を久しぶりに観てみようかと思いました。


#読書感想文
#藤谷文子
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