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【2. 大山・大神山神社(鳥取県米子市) レイラインツアー2023〜祈りの御来光道】

☆ルート:皆生温泉〜大神山神社本宮〜鳥取砂丘〜福知山 216km
宿泊地:ホテルロイヤルヒル福知山&スパ
☆参加者:蕎麦宗・矢部周作・手塚博文


伯耆大山の朝陽

 『寝食を共にする』
という言葉がある。学生時代に、合宿などの経験がある方にはすぐに伝わるだろうあの感覚。多くを語らずとも、共に時間と空間を過ごすことで理解し合う事が出来ることを、この旅でも確認できた。
 《皆生風雅》への宿泊は初日ということもあり、そのことを踏まえて敢えて大部屋の共用とした。特に矢部君と僕ら2人は互いを知らなすぎるので、ここでの会話は距離を縮めるのにずいぶんと役立った。
 幸いにも30畳を超える贅沢なしつらえで、襖を閉じれば3部屋にも分かれる。安眠は旅の英気を養うには必須。*雑魚寝でも爆睡だった若かりし頃は、いったいどこへ行ってしまったのだろうか。そんなことを思いながら、別部屋に分けても微かに聞こえる互いの寝息をうっすらと枕元に感つつ、深い眠りへと落ちて行く。

 翌朝。東の窓側の間を選んだ自分は、伯耆大山のそばから上る朝陽を拝んだ。あの山の頂はレイライン上にある。晴れ渡った東の空は徐々に白み、やがて黄金色の陽光を届けてくれた。
 太古の人々、我らの祖先は、神と崇めたあの光を追って西から《偉大なる旅グレートジャーニー》をして、東の果てのこの島へとやって来た。大山の先には富士山や玉前神社がある。西には出雲大社が鎮座する。偶然と必然の創作。改めて神々しく日の出を眺めた。
*雑魚寝…大勢の人が雑然と入り交じって寝ること。現代人は苦手になりつつある。

右手が大山
日の出
神々しい

大神山神社

 3回のご飯お代わり朝食で、午前中のカロリー分を補給する。今日は215kmの予定。参拝時間を踏まえ7:55に宿を出発し、国道431号線で大神山神社神社へと向かった。

 ここは、出雲大社同様に大己貴命おおなむちのみこと=大国主命を祀っている伯耆二宮の小さな社で、でも、その小さな境内には似つかわしくない、溢れるエネルギーに満たされている。1人ずつ丁寧に参拝したあと、木漏れ日からの陽光と社殿の影の対比を写真に納め、早々と日響娃さんへと送った。

『行く先々の7箇所の神社の写真を送って下さい、その神々からのメッセージを宗さんにお伝えします』

 【阿闍梨の勾玉・精麻と日響のコトノハ】に書いたように、彼女が神様の言の葉コトノハを降ろしてくれるという。詳しくはその別記事を読んで頂くとして、現代に生きる巫女みこの伝える《神》の言葉に素直に耳傾ける人はどのくらいいるのだろうか。
 僕は昨日の出雲大社《大国主命》の言葉には正直ゾクゾクした。手塚君にも見せたら同様に感じたようだ。旅進む7つの神社に捧げる祈りは、より敬虔けいけんに、そして神との対峙が楽しみになった。

 大神山神社への参拝と御朱印帳への記入・お札受けなどにかかった時間は、ここから先に日々参拝する神社でのおおよその滞在時間の目安となる。出雲大社は特別に大きく、また初日ということもあってずいぶんと時間が掛かった。おそらく、その他の神社はここと同様に30〜40分ほどで事足りるだろう。
 今日の旅路は長い。早々に大神山神社を後にして、出発したのは9:00ちょうどだった。

鳥居
伯耆二宮 大神山神社
陽の出ずる社殿

鳥取砂丘

 この日は吹き付ける南風が、横殴りだったりま向かう向かい風だったりに苦しめられた一日。それを切り裂く矢部機関車は恐るべし。そして本当に頼りになった、
 前半は伯耆大山をクルリと取り囲みながら東へと向かう。左手には青く日本海。そこに時折巨大な風車が現れるのは、この地が風強いことの証。鳥取砂丘までの道は【チャリ鉄の旅・その1】にて、一年半前に一度走っているので覚えていた。 
 そんな中、正面や真横から吹き付ける風を受けながらの平坦&緩いアップダウンに、体重の軽い手塚君はダウン気味。本人の予想を超える長丁場のそれが、余計にメンタルを削ってゆく。そこでトレインの順序を替え、僕が最後尾となって彼を最も消耗の少ない2番手とした。

 鳥取砂丘に着いたのは、ほぼ予定通りの12:30。ここまで100kmで、

『残り116kmでーす』

と、レイラインツアーのグループLINEに書き込むと、???皆さんから意味不明だというリアクション。僕ら自転車乗りにとって普通な距離も、一般の方々からするとクレイジー。
 とはいえ、普段あまり長距離を走っていない手塚君にはあり得ない負荷だったようで、若いとはいえ徐々に疲弊してゆくのが手に取れた。残念なのは、それを補おうと目指した牛骨ラーメン屋がことごとく定休日であり着けず、観光レストランでの普通な食事となったことだった。そして時間に余裕はないので、ここも早々に出発。福知山までは僕も矢部君も未知なるルート、国道9号線を行くことにする。

角度で姿を変える大山
鳥取砂丘

台湾からの旅人

 国道9号線を地図で見る限り、400〜500mほどの峠が何箇所かあるものの、トンネルで貫いているためにさほどのキツイ上りは無いと踏んだ。
 実際に走ってみても過酷な峠道では無い。それでもダラダラと長い上り基調で、さらに南風は僕らの南東方向への進路に合わせて谷間を吹き抜ける。つまり、ほとんどが向かい風の登り坂。

 この中を午前中と変わらぬペース・速度で、矢部機関車は相変わらず淡々と引いてくれている。途中、前にいる矢部君の自転車から異音がした。どうも後輪タイヤを擦っている音のようで、近づくとサドルバックの紐が緩み、荷物全体が垂れ下がっていた。

『ちょっと止まって直そう』

湯村温泉の立ち並ぶ旅館のわきに空き地を見つけ停車。パッキングを直していざ出発という時に後方から少し訛った声がした。

『こんにちは』

ジャイアントのMTBに載せたサイドバックやパニアバックに大量の荷物を詰め込んだ旅人で、聞けば日本一周旅のためにはるばる台湾からやってきた若者だった。名前は雷博崴。アニメ好きが高じて日本好きになり、そのおかげで日本語は堪能。早速LINEやFacebookで繋がる。でも台湾語で読めないので尋ねると、レイ君というようだ。レイラインツアーの最中に出会う旅人がレイ。このシンクロニシティは実に愉快だ。
 僕らは、普段のロードバイクとは異なり、沢山の荷物を積んでいるので正直言って重い。初日には藤原さんがサポートカーに積んでくれたので、軽やかなロードバイクのままだった。しかし、今日は不慣れな重量級自転車になっていて、そこは走り的にも不満であった。
 でも、それにしても彼の自転車は持ち上がらないほどに重い。いわゆるキャンピングスタイルだから、僕らの比ではなかった。そんなこんなが逐一ちくいち楽しく、ここでの彼との談笑は、僕らに気分転換と元気を与えてくれた。

 このあと彼は天橋立を目指すらしい。そのまま日本一周旅をのんびり続けるというので、『変態やな』と言うと嬉しそうだった。僕らのルートと予定を見せると、速すぎて『クレイジーだ』と喜んでいた。旅路での交流は良き思い出になる。お礼に阿闍梨から頂いた精麻を巻いてあげた。とっても嬉しそうだった。
 後日、その御守りのおかげもあって完走したとのと連絡をLINEにて受けた。彼は日本海を直走ひたはしって函館へと渡り、北海道をぐるりと回って千歳空港へゴールしたようだ。日本一周旅を終え、無事台湾へ帰国。次に日本へ来る時は、伊豆へ三島へ蕎麦宗へと立ち寄りたい、と約束をしてくれた。

台湾人の旅人・レイ君こと雷博崴
大荷物は日本一周旅のため

但馬牛の故郷で

 さぁ、旅を続けよう。向かい風の国道9号をひた行く最中、既にずいぶんと削られている手塚君の脚が止まる。ガス欠気味らしい。自転車乗りのペダリングは速度(運動強度)にもよるが、遅筋ベースと速筋ベースに大別できる。彼のそれは後者だ。速筋はグリコーゲンがエネルギー源なので、大量のカロリー消費を補うには補給食が重要となるのだ。
 彼に対して僕は遅筋で走る。エネルギー源は身体に蓄えられた脂肪。矢部君を風除けにしているので強度も低いため、尚のことカロリーは抑えられている。つまりは、こういった状況になると、手塚君のような細マッチョよりもデブ気味の方が優位に立つということだ。
 はて、矢部君はどうだろうか。体脂肪率は明らかに低いし、体型からしては持久系のタイプ。そして僕らよりも高い実力の持ち主。けれど、常に機関車役の彼がどの程度の強度で走っているのかは、この時はまだ掴めなかった。

 但馬牛の故郷にて道の駅《村岡ファームガーデン》に寄って補給。さすがに今、牛肉は要らないけれど、ソフトクリームを食べたい僕らの想いも満たしてくれた。ほどほどにお腹いっぱいにして復活。うんざりしかけた登り坂も楽しめるかも、と思いきや、
 『体の半分が灰になりました。無事に着けるでしょうか。』と、手塚君が弱気な発言をLINEに書き込む。と、皆さんから応援のエールが届く。走れそうだ、さてと、もう一踏ん張り。福知山へ向け残りは65kmほど。出発。

但馬牛
イチゴアイスに舌鼓の矢部君

焼肉食べて福知山

 八井谷峠のトンネルを過ぎ関宮のループ橋を下る。先に知っていたなら、この魅力的な映えスポットを行くトレインを動画撮影すると気取りたいところ。しかしながらその余裕はなく、勢いのままに下り、先を急いだ。
 養父を過ぎると山陰本線に出会う。鉄路があるということは、勾配が緩く平坦に近いというサイン。朝来あさらいを抜けて国道176号線と合流したらまもなく福知山。ようやく到着の目処が立ったので、グループLINEに連絡を入れたら安堵の声。今日も応援ありがとうございます。
 そこで、先に夕食を済ませてから今日の宿泊地であるホテルロイヤルヒル福知山&スパに向かうことにする。さて、何を食べよう。手塚君の希望で焼肉となり、勿論、皆大賛成。
このタイミングに合わせて嬉しいことに、note読者の鈴木小夜子さんから

『皆んなで美味しい物でも食べてください』

と、高額のサポートを頂いた。このnoteの投げ銭機能と合わせ、実にありがたい。おかげさまで腹一杯の肉!肉!肉!、3人で喰らいつく肉!肉!肉!。鈴木さん、ゴチになりました。

 そうして、無事この日の宿《ホテルロイヤルヒル福知山&スパ》に到着。浴場で冷温交代浴をして疲労回復に努める。宿のチョイスは完璧だと思った。
 本日の距離は216kmでアベレージ約28km/h。向かい風なうえに、獲得標高が1758mあったことを踏まえると実に速い。
 明日は距離も短く、矢部君にとっては庭とも言える勝手知ったる区間。少しは余裕を持って観光気分に浸れるかもしれない。
 こうして、レイラインツアーの2日目も無事終えることが出来たのだった。

焼き肉屋の前で到着の挨拶
ハラミとレバーが効く
第②日目のGPSログデータ

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