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【賠償金数十億円を踏み倒し!?】司法システムの欠陥を突くリーガルプログラマー「ひろゆき」さんは天使か悪魔か?

今回は「ひろゆきさん」の話をしたいと思います。匿名掲示板「2ちゃんねる」の管理人として著名な方ですね。法律関係で言うと「裁判に負けて、命じられた数億もの損害賠償金を踏み倒した」伝説で有名だったりします。

さて、そんなことってできるんですかね?これ、掘り下げるといろいろなことが見える話です。

1:その「賠償金」は、どうして生まれたの?

そもそも彼が負っている賠償金ってどういうものかというと、過去にネット上の掲示板「2ちゃんねる」で誹謗中傷投稿があった際にできたもの。

「2ちゃんねる」は匿名の掲示板で、書き込んだ人が特定できない場所でもあるので「管理人のひろゆきが削除しろ」と被害者が主張するケースがあって、ひろゆきさんが思った通りに削除してくれなかったことに対して「管理人の責任を果たしてない」と主張して、損害賠償を申し立てたという訴訟の賠償金なんですよね。

ああいったネット上の掲示板の投稿の削除って「管理者の立場」というかポジションがとても難しいんですよね。

管理者って、単に場所を用意しただけで、そういう違法な書き込みを煽ったわけでもないのですから、アメリカ等では、そもそも一切責任がなかったりします。勝手に削除すれば書いた人に文句を言われるし、放っておけば書かれた人から突き上げられるということで、板挟みのポジションでもありますからね。。。

ひろゆきさんが、最初に訴えられた時は、そもそも管理者がそういう時にどうすべきかについては、日本では明確な法律(その後「プロバイダ責任制限法」が施行されることになる)もないし、裁判例もあまりなくて、裁判官も「社会常識的にどうかなぁ・・・」と言うことを根拠に「ケースバイケース」の判断をしているような状態だったんですよね。

そもそも、当時はインターネットの利用者もそこまで多くなくて、裁判官も「ネット」がどう言うものかを実感を持って知ってるわけでなく、さらにいえば「2ちゃん」なんて「アンダーグラウンドの掲示板」ですから、そこに書き込みがされることに、一体どの程度の意味があるのか、だれもよくわからない状態で裁判をしていたんですよね。

2:ひろゆきさんの対応方針(当初は・・・・)

ちなみに、ひろゆきさんって、ああ見えて(?)常識的なところのある人でもあって、警察などの捜査には、ほぼ全面協力をしてるんですよね。

「完全匿名がウリ」だった2ちゃんねるの仕様を、その気になれば「身元をトラッキングできる仕様」に変更して、事件の時には発信者の情報を警察に公開できる形に変更したりもしています。

そんなこともあって、2ちゃんを利用した事件が起こることがあっても「彼自身が逮捕されるようなことはなかった」んですよね。「全面的な捜査協力者」だったので。

そんなスタンスなので、誹謗中傷についての損害賠償請求の裁判でも、もともとは「社会的な義務だし、常識的にやらないとしょうがないべ」という様な姿勢で、誠実に対応していて、パソコンもインターネットもよくわかってない裁判官に対して「基本のキ」から説明をして裁判に臨む日々を過ごしていたようなんです。

あの膨大で日々増え続ける2ちゃんねるの投稿を、管理者が全て追っかけているわけでもないという事情や、「独特の隠語」というか暗号みたいなヤツで書き込まれてたりしていて、「それが誹謗中傷といえる表現なのかどうか判断することが難しい」というような状況をひたすら説明して回っていたわけですね。

弁護士つけずにやっていた訴訟ですし、めちゃめちゃ大変ですよ、これ。

ちなみにひろゆきさん曰く、彼の議論の強さは、この時期に「弁護士や裁判官に対してひたすら自分の立場を説明する」中で鍛えられれたものだそうです。それはもう強くもなりますよね。裁判なんて半端なプレッシャーじゃない「プロの現場」ですし。

そして、議論自体も、2ちゃんみたいなアンダーグラウンドな場に法律が入り込んで、誰にどんな責任があるか白黒つけようとするわけですからそもそも相当むずかしい議論だったんです。そんなことを、2ちゃんの創設者&運営者であったひろゆきさんは「当時のインターネットの世界のやりとりの先端感覚」を持って、これに対応しつづけていたわけです。

3:裁判ルールの不条理に絡め取られて

ただ途中でひろゆきさんは、日本の司法システムのダメさに絡め取られてしまいます。訴訟の数が増えるにつれて、「裁判の不条理なルール」に振り回される様になるんですよね。

こういう損害賠償事件って「被害の現場があった場所の近くの裁判所」で裁判ができます。交通事故だったら「事故が起こった場所」に「目撃者も証拠もあるから」効率的って考え方ですね。

じゃぁ「ネット上の誹謗中傷」は? 

普通に考えると「2ちゃん」のデータの入ったコンピューター(サーバー)が置いてある場所かなって気もするんですけど「被害者がそれを見て傷ついたところ、評判を落とした場所」ってことで、法律上は、なんと「被害者の住所地」で裁判を起こせちゃうんです。

また裁判官が、基本的にネットオンチなので主張/立証が大変で、その分野に詳しい弁護士も多くない、というか、依頼したとしても、手数がかかるのでお金がめちゃかかるっていう事情があるので、事実上、弁護士なしでひろゆきさん自身が対応するしかない。

しかもこの裁判、勝っても「ひろゆきさんに責任はありません」となるだけなので、彼は何ももらえない(賠償金を払わなくていいということが決まるだけ)タイプの訴訟ですからね。こうなると完全に被害者有利です。

つまり、各地でそれぞれに訴訟を起こせば、コスト的に弁護士を使えないひろゆきさんは、全国を飛び回らなければいけなくなるわけです。ピーク時は、裁判が1日3件とかいう状態だったそうで、それが札幌・東京・福岡とか全国に散ってるから、そもそも対応不可能なんですよね。

物理的な事件現場のがある、一般的な不法行為とは違うんだから、管理人のひろゆきさんの所在地で、かつ、最も専門人材が豊富な東京地裁に事件を集めて、特定の部署で処理してしまえば、事件の性質に精通した裁判官が生まれてきて効率的だったんですけどねぇ。。。

そういう申し立てがひろゆきさん側からされても、ネットを舞台にした事件の性質が理解できていない裁判所は「前例がないから」ということで、蹴っちゃったんですよね。それでひろゆきさんがマトモに対応するのをやめちゃった。

まぁ、物理的にできないのですから無理もないですよね。法律にだって「法は不可能を命じない」という格言があるくらいなのに、裁判所が自ら「無理ゲー」をひろゆきさんに対して設定しちゃったんですから。

4:「らしい」対応で司法に対抗!

そっからは、ひろゆきさん流のやり方が始まります。

良く考えると、全国飛び回って、日々訴訟対応にいそしむなんてのは、そもそもひろゆきさんらしくないわけじゃないですか。苦手な早起きもしないといけないだろうし(笑)

で、この頃、ひろゆきさんは、自分を振り回していた、日本の司法システムについて別の欠陥に気がつくわけです。それは、別に裁判に負けたからといっても、必ずしもお金を払わなければいけない仕組みになってない、という衝撃の事実。

なので、もう「裁判に出るのを一切やめちゃった」わけです。当然「欠席裁判で敗訴になる」んですけど、判決書が出ても「判決書に基づく差し押さえ」は、実際には簡単にできないんですね。

いや、被害者の犠牲を下敷きにして対応コストを払わずに、事業から利益を得て財産を溜め込んでいる・・・みたいな状況だと、逃げ切れないんですよ。個人や会社の財産を差し押さえられてしまいますから。道理的にも逃げ切っちゃマズイだろうし。

ただ、ひろゆきさんは、別に金儲けのために2ちゃんをやってるわけじゃないので、差し押さえの対象になる様な、生活必需品とか仕事に使う財産以上の余剰財産って持ってなかったんですよね。結果、判決があっても差押えができないことになっていたわけです。

ちなみにインターネットの住人って、元々こういう人が多いんですよねー。

純粋に技術やコミュニケーションが好きで、みんなが面白がるものを作っては共有していくシェアカルチャーで満たされていくから、自分が利益を得たり所有したりする欲はあまりなくて。

ひろゆきさんの原点も、そういうところにあるですよね。その気になれば稼げる様になってからも、この辺は、あんまりスタンスを変えてないと思います。

「2ちゃんねる」をダメな日本の司法システムに邪魔されたくないひろゆきさんは、さらにその設計不良を突くように動きます。

2ちゃんねるは、プロバイダーに削除責任のない、アメリカのサーバーにうつされ、アメリカのサービスという位置付けに。現地アメリカの社会規範には沿って行動しているわけですから、日本の常識やルールで責任を問うのは、相当にやりにくくなります。

財産ができてきたひろゆきさんもパリに拠点を移し、こ裁判で勝っても、フランスにおける財産の所在を調査したり、フランスの司法機関や法律事務所と連携しない限り、差し押さえはできません。(さらにヨーロッパには、秘匿性の高い銀行もありますからねぇ。。。)

これらは、各国の司法権が及ぶのはその国の領土だけ、そこから先は国際協力が必要という国家主権に法的なルールを踏まえた「鉄壁の防御システム」と言わざるを得ません。

ひろゆきさんって、元々「プログラマー」ですからね。

ルールをトコトン理解した上で、そのルールの枠内で、どうやって不合理/不都合な状況を回避していくかについて、新たなコードを書くかのように、行動したわけですね。

5:「トリックスター」としての役割

また、そもそも論を言うとですね、ひろゆきさん「おとなしく法律守れ!」って主張をぶつけること自体、個人的には「あんまりイケてないなぁ」と思っちゃうんですよね。

2ちゃんねるは、アンダーグラウンドな表現の場として、世の中のおかしさを炙り出して「あの王様は裸だ!」って突きつけている部分もあるわけで、その世界のパイオニア(2ちゃん管理人)である彼に向かって、「みんなと同じように法律を守りましょう」って正論をぶつけるってどこかズレてると思うんですよね。

ひろゆきさんの思想って「2ちゃんねるは、元々あった人間の心の闇を吐き出す場になっているだけ。2ちゃんがなくても、そういうものは社会の中で自然な形になっていくんだから、ある程度、外部から見える形の2ちゃんのような受け皿があることは、決して悪いことじゃない」って考え方なんですよね。

だから、法に触れるようなことについては、積極的に警察への協力もするスタンスできたわけです。

つまり、人の心の闇の受け皿/居場所になっている2ちゃんについて、誹謗中傷をなんとかしろっていうのは、人に心の闇があることをどうにかしろというような「根本的な無理ゲー」なわけで。。。。そこに加えて、裁判も無理ゲーになっちゃったんですよね。

ひろゆきさんは、
・裁判は出席できなければ負けてしまう
・負けると裁判所からの取り立てが来る
・生活必需品以上のものは差し押さえられてしまう 
というルールには従ってきたんですよね。

「日本の領域内では、どんなにイケてないルールでも、法律は法律ということで日本の司法ルールが適用される」のは仕方ないですから。ただ「事業を国外に移してはいけない」とか「国外に住居を移してはいけない」と言うルールおないわけで。

であれば、彼のやっていることに、法的に咎められる理由はない。これ以上の対応を期待するのは無理じゃないですかねぇ。そもそも道理としても、引き受ける理由がないと思うんですよねぇ。。。

普通の人なら「なんでオイラがそこまでしなきゃいけないわけ?」ってキレて事業を放り出しそうなところ、社会やユーザーのことも意識して、冷静で現実的な対応を続けた結果行き着いたのが「2ちゃん事業や自分自身の海外移転」と言う結論だったわけですから

そして、この事件を通してもやはり「なんだ司法システムって、別に正義の味方でも弱者の味方じゃないじゃん。ネット掲示板作って運用してきた人に、無理ゲーを設定したりするんじゃん。結局、裁判で形式的に白黒つけても、実質的に解決できないんだよー」と、2ちゃん的な立場で、現実を暴いてしまっているわけですよね。

ちなみに、こういう役割のことを、神話や物語の世界では「トリックスター」と言ったりします。

社会を騒がせるトラブルを起こすなどして、民衆の目を覚まさせる、必要な力や知識を行き渡らせる、そんな役割を持ったキャラクターのことです。

あの「2ちゃんねる」を生み出したこと、自らの行動を持って司法の矛盾や弱点を次々に暴いていること、そして、今の社会構造に関する真実をズバッと語る最近の発信もそうですが、彼は、まさに現代のトリックスターであることを続けていますよね。

しかも、ひろゆきさんの行動は、全体としてみると「どれも弱者サイドに寄って強者を叩く」ようなところがあって、一種の義賊みたいな気質もあるんですよね。そのあたりが、他の方達と一線を画していて、ファンが増える理由でもあるのかなと言う気がします。

私も思想もバックグラウンドも共鳴するところも多くて、同世代でもあるので彼のことを応援しています。

それでは今日はこの辺で。ありがとうございましたー。

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