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売上責任を持ちコストセンターから進化を遂げる!カスタマーサクセスの設計方法

今回はカスタマーサクセスについてnoteにまとめていきたいと思います。

私がカスタマーサクセスに携わった経験は、10年近く前に遡ります。

当時勤めていた会社のビジネスモデルが大きく変わり、主力商品が単発契約から年間契約を前提とした月額課金モデルに移行することになりました。

このビジネスモデルの進化により、営業組織も大きく変化を強いられる事となり、その過程の取り組みの一つとしてカスタマーサクセスがありました。

当時は「SaaS」という言葉はあまり耳馴染みがなく、「クラウド」はやや聞く程度。

今でこそTHE MODEL型の分業を前提とした組織は珍しくありませんが、当時は事例が少ない中、手探りでカスタマーサクセスを立ち上げたのです。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサクセスとカスタマーサポート、両方CSと略すこともあり混同されがちなので、改めて違いを確認しましょう。

出典:BOXIL(カスタマーサクセスとは?カスタマーサポートとの違いや定義を解説)

図を見るとわかりますが、カスタマーサクセスは能動的なアクションが軸となり、売上を創出する役割を担います。
一方でカスタマーサポートは受け身の仕事が多く、トラブル対応が主な仕事です。

ですので、カスタマーサポートには投資がされづらく、出来るだけ少ない人数でコストを抑えて活動することが求められます。

カスタマーサクセスは一人で担当できる顧客数のキャパシティが越えるようであれば積極的に増員されやすい傾向があります。
なぜなら、顧客満足度を上げることによるチャーン(解約)防止は売上に直結するからです。

10年前、CSを立ち上げた時のベンチマーク企業

冒頭のカスタマーサクセスを立ち上げた時の続きです。

これまでは単発契約なので受注すれば当月の売上に計上されていましたが、月額課金のサブスクリプションに移行したため12ヶ月に分割計上されることとなります。
これにより、ビジネスモデルを転換した期の売上は昨対比で減少する月が出始めました。(後に業績を安定させるストック収益となります)

また数年後にチャーンレートという重要KPIが業績を左右することに気づき、新規顧客開拓と既存顧客の離反防止を両立させることの難易度にぶち当たります

当時はサブスクリプションのビジネスモデルで業績を伸ばしていたB2B企業は少なく、いろいろ市場調査してベンチマークした企業はぐるなびでした。

出典:ぐるなび 2013年3月期決算説明会資料

なぜなら、ぐるなびは早いタイミングからストック型サービス(年間契約商品)を提供しており、営業プロセスも分業することにより急成長を遂げていたからです。

それに倣い、自社でも営業組織の変革を行います。

これまでは一人の営業が新規顧客開拓と既存顧客フォローを両方やっていましたが、営業組織を新規営業とカスタマーサクセスに二分割したのです。

その時、私はカスタマーサクセスの立ち上げに携わりました。

カスタマーサクセスは全営業が担当していた数千社の既存顧客を引き継ぎ、新規営業が毎月受注してくる顧客のオンボーディングから契約更新、UPセル対応まで行いました。

この時に議論した内容の一つが「カスタマーサクセスが売上責任を持つか否か?」です。

カスタマーサクセスは売上責任を持つか否か?

当然ながら、活用支援と契約更新(アップセル含む)では求められるスキルが異なります。

私は多くの組織に携わる中で、カスタマーサクセスが売上責任を持たない組織も見ましたし、カスタマーサクセスが売上責任をもつ組織も見てきました。

売上責任を持たない場合は、活用支援に徹することが出来るメリットがある一方でアップセルへの意識が弱くなる傾向があります。

売上責任を持つ場合は、意識が「売上>顧客の成功」となりがちで、目先の売上はあがるけどチャーンレートも高くなりがちです。

両方見た上での私見は「カスタマーサクセスも売上責任を持つ前提で設計した方が良い」ということです。

なぜかというと、生産性の指標となるパーヘッド(従業員一人当たり売上高)が、カスタマーサクセスが売上責任を持った組織の方が高い傾向があるからです。

過去、カスタマーサクセスの立ち上げ時には売上責任を持たないメンバーも一部いたのですが、評価指標に売上がないことによりチャーンに対するアンテナが弱かったり、アップセル出来るのに狙わないという弊害が発生したことがありました。

その後、評価指標に売上を組み込むことにより上記の課題がほぼ解決したのを目の当たりにしたので、基本的には売上貢献度はカスタマーサクセスの評価に組み込むべきだという結論に至っています。

CSによりチャーンレートを20%改善させた事例

これは多くのSaaS企業でも共通していると思いますが、初回の年間契約更新のタイミングが最もチャーンレートが高くなります。

参考までに、私の支援先のSaaS企業では2018年に契約した顧客のチャーンレートが以下のようになっていました。(更新は年に一回)

<2018年契約企業のチャーンレート>
・初回更新時:37%
・2回目更新時:14%
・3回目更新時:9%

この企業は初回更新時に4割も離反してしまうという課題を抱えているため、以下の取り組みを行うことにより初回更新時のチャーンレートを約13%改善することに成功しました。

初回のチャーンレートを改善した施策

1.最初の3ヶ月間、徹底的にオンボーディングする
契約開始して3ヶ月以内で顧客がサービスを十分活用できている状態をKPIとしました。

具体的には管理画面へのログイン回数や滞在時間など、活用できている状態を定義した上でレビューを実施します。

また、原則として活用できていない状態では追加提案はしないことを徹底し、定着を目指す上でCSも実務面で一定の支援も行いました。

2.活用セミナーに参加してもらう
サービスの利用率を上げることを目的として、毎週活用セミナーを開催。

ユーザー単位のサービス利用率とセミナー参加率を可視化すると、セミナー参加率が低い企業はサービス利用率も低い傾向が明確にデータに現れました。

そこで、セミナー参加していない企業の管理者を重点フォローすることにしたのです。

3.満足度調査の実施
満足度調査は、初年度は2回実施します。
①サービス利用開始してから半年後
②サービス利用開始してから11ヶ月後

①でチャーンレートの高い顧客は離反防止のためにあらゆる手を尽くします。契約更新まで残り半年ありますし、リカバリするには十分な時間があります。

その後、②で改善できているかレビューをします。
この時点では殆どの企業が改善出来ていました。


また、長い間CSを運営する中で、ホスピタリティが高い人がCSとなった方がチャーンレートを下げ、アップセルに繋がる傾向が判ったのでCSは女性を中心とした組織に、新規開拓営業は男性を中心とした組織に変革しました。

この体制 + 上記の施策を組み合わせることにより、初回更新時のチャーンレート20%改善を実現しました。

<初回更新時におけるチャーン改善の売上インパクト比較>
Before

1,000,000円×(300社×更新率63%)=189,000,000円

After
1,000,000円×(300社×更新率83%)=249,000,000円 

売上にして6,000万。
2年目以降は殆どチャーンしないことを考慮すると、相当な売上インパクトになることが判ります。

このように、カスタマーサクセスの設計を上手に行うことでチャーンを抑え、売上貢献するCS組織にすることも可能です。

今回のnoteがこれからカスタマーサクセスを立ち上げる方、既にあるカスタマーサクセスチームの改善をしようとされている方のお役に立てば幸いです。

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