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卒業原稿「デジタル時代におけるコミュニティラジオの未来」(後編)

https://note.com/sociojournal/n/nb30df50414e3

<前編の目次>
はじめに
第1章 コミュニティラジオの現況
 1-1 ラジオの分類
 1-2 日本におけるラジオの歴史
 1-3 コミュニティラジオとは
 1-4 コミュニティラジオが抱える課題

第2章 インタビュー調査

 コミュニティラジオにはどのような魅力があるのか。そして今、どのような課題に直面しているのか。第2章では3つのコミュニティラジオ局に行ったインタビュー調査からその現況を見ていきたい。

2-1 元・エフエムひらかた(大阪府枚方市)

語り手:元プロデューサー 石元 彩(いしもと・あや)さん(48) 

 「エフエムひらかた」は、阪神淡路大震災をきっかけに災害時の市民への情報伝達を目的として1997年1月15日に開局したコミュニティラジオ局だ。枚方市や市内の企業・団体の出資で設立した。地域に密着した情報を伝えるため番組は完全自主制作にこだわり、毎日24時間放送してきた。しかし、2020年、情報伝達手段の多様化を理由に市が放送業務委託料(年間約5,000万円)の廃止を決定したことで、番組の質を維持しながら放送を続けていくことが困難に。2022年2月末に閉局し、25年の歴史に幕を下ろした。閉局から1年8カ月。元プロデューサーに思いを聞いた。

◇地域密着25年
 立ち上げから運営に携わってきたのが、元プロデューサーの石元彩さん(48)だ。大学卒業後は一般企業に務めていたが、地元の枚方に新しいラジオ局ができると知り応募を決意。幼い頃からものづくりやエンタメが好きだったことから興味が湧いた。開局が3ヶ月後に迫る1996年10月に入社。スタッフ4人しかいない中で準備に追われ翌年1月15日に無事開局。少ない人数で放送局を運営するため、制作だけでなく、営業や事務など数多くの役割をそれぞれが兼任しながら25年間、パーソナリティたちと地域密着の番組を作り続けてきた。

かつて京阪枚方市駅中央改札そばにあったサテライトスタジオ(石元さん提供)

◇コミュニティラジオだからこそできること
 石元さんが番組づくりを通して目指してきたのが、リスナーにとっての「心の実家」になることだ。ラジオには日々さまざまなメッセージが届く。嬉しかったこと、悲しかったこと、ふとした気づき、悩み事。番組ではそうした誰かの思いを丁寧に紹介していく。「安全フィルターがかかったSNS」。石元さんはラジオをこう表現する。どのメッセージにも必ずディレクターが目を通す。言葉足らずなときは補足を加えて紹介することもあった。SNSにはどんな反応が返ってくるかわからず書けないような悩みも、ラジオにだったら吐きだせる。そうした安心感を作りたかった。「ラジオって基本一人で聴くものでしょ。でも一人ぼっちとは違うんです。いつものチームがここにいる。自分もそこに一緒にいるような感覚にさせてくれる。それがコミュニティラジオの魅力だと思います」。

◇コミュニティラジオと災害
 もう一つ石元さんが大切にしてきたのが、設立のきっかけである「災害」に向き合うことだ。特に東日本大震災以降は、被災地・東北にできること、ラジオだからこそできることを真剣に考えてきた。震災発生直後に立ち上げた『Smile Again Project』では、リスナーから寄せられた被災地へのメッセージをパーソナリティがCDに吹き込み、毎月11日に届くように東北各地のコミュニティラジオ局に送り届けた。この企画は7年間続き、届けたメッセージは約2千件にのぼる。また、2013年からは被災地に住むさまざまな人と生放送で電話をつなぐ『週刊東北だより』をスタート。1人として同じ体験や想いではない「被災者の声(本音)」を届けることで、遠く離れていても身近な出来事としてリスナーに捉えてもらいたいと思った。

◇道半ばでの閉局
 2020年6月、市から2021年度末で放送業務委託料を廃止するという知らせが入った。「私らの二十数年なんやったんや」。すべて否定された気持ちになり、怒りがこみあげた。市の検証により理由として挙げられたのが、災害時の情報伝達環境の変化、聴取率の低下、災害時における活用実態などだ。災害時の情報伝達手段としては、設立時は防災行政無線とラジオのみだったが、現在ではそれらに加え、ホームページやSNS、エリアメール、Jアラートがあるとしている。しかし、それらの情報を受け取るために必要なスマートフォンを利用するには充電が不可欠なことや、一度通信障害が起これば一切使用できなくなることを考えれば決して十分とは言えない。災害時における活用実態では、市が実施したアンケート(枚方市,2018)で、2018年6月の大阪北部地震の際にエフエムひらかたで情報を聴いたと答えた人が3.9%(1,126人中44人)と少なかったことが根拠とされた。一方、同じアンケートで「災害時に『エフエムひらかた』による地域の詳細な災害情報の発信は必要だと思いますか」という質問に対して、67.4%(1,126人中759人)の人が「必要と思う」に回答している。石元さんは、大阪北部地震では枚方市の被害が少なく停電もほとんど起きなかったため、多くの人がテレビやインターネットで事足りたのではないかと推測する。「やっぱり災害時に一番強いのは電波で情報を届けられるラジオ。両方あるから安心できるのに」と語気を強めた。

◇閉局が決まってからも
 閉局が決まっても世の中はコロナ禍。ラジオだからこそできることがあると、番組制作にもより力を込めた。中でも、コロナ禍の教育現場について生徒や教師、保護者らが思いを討論したラジオドキュメンタリー『笑顔で学ぶ!withコロナ』は、全国の優れた放送番組などに送られるギャラクシー賞ラジオ部門に入選した。コミュニティラジオが入賞することは極めて稀だが、エフエムひらかたでは閉局までにこの番組を含む2番組、閉局後にも1番組が入賞している。「決して目指してきた訳じゃなかったけど認めてもらえるレベルにまで上がってたんや。この路線で間違ってなかったんやと思えたきっかけでした」。

閉局の日、サテライトスタジオの前に集まったリスナーさんたちと(石元さん提供)

◇閉局後に気づいたラジオの力
 2022年2月28日、多くの市民に惜しまれながら閉局。「毎日ラジオをつけてしまいます。ザーって言ってます」。元リスナーからは閉局を悲しむ声が予想以上に届いた。ラジオが、ずっと目指してきた「心の実家」になれていたと実感できた。翌3月、石元さんは3.11に合わせて東北を訪れた。これまでお世話になったコミュニティラジオ局をまわり生放送にゲスト出演していると、スタジオのガラスの外に見慣れた顔が――。それは、枚方から駆けつけてくれた元リスナーだった。ラジオをきっかけに関心を高め、行動に移してくれたことが嬉しかった。石元さんはエフエムひらかたのX(旧Twitter)を引き継ぎ、今も日々発信を続けている。不定期にYouTubeでラジオ番組も配信。元リスナーたちからの応援が原動力となっている。幻でも「そこにある」という安心感をこれからも守り続けていきたい。

2-2 FMちゃお(大阪府八尾市)

語り手:局長 鈴木 昌宏(すずき・まさひろ)さん(57)

 「FMちゃお」は、阪神淡路大震災をきっかけに八尾市の市制施行50周年に合わせて1998年4月29日に開局したコミュニティラジオ局。八尾市と市内の企業・団体・個人からの出資によって第三セクターとして設立した。事務所とスタジオは「アリオ八尾」の一角に構えている。「届けます、元気と安心・繋げます、地域の絆」をコンセプトに、地域密着の情報発信に力を入れてきた。しかし、2023年9月、情報発信手段の多様化による経営環境の厳しさを理由に2024年3月末で閉局すると発表。26年でピリオドを打つことに決めた。一方で、局長によれば、この閉局には前向きな意味も含まれているという。一体どういうことなのか。

◇FMちゃおと鈴木さん
 FMちゃおの局長を2022年から務めているのが鈴木昌宏さん(57)だ。生まれは大阪府東大阪市。フリーランスのラジオ制作マンとして全国のラジオ局を渡り歩き、2002年八尾市内にある高校の母校OBからたまたま声がかかり、当時経営難に苦しんでいたFMちゃおに移籍。局運営3年目で恒常的な単年度黒字化に成功するなど、経営の改善、安定化に取り組んできた。

「アリオ八尾」内にあるスタジオ (撮影:中島秀太)

◇ラジオは生活を支えるセーフティーネット
 アリオ八尾の店内にあるメインスタジオはガラス張りになっており、買い物途中の人が気軽に外から観覧できるようになっている。正面にある看板には「地域情報発信ラジオ局」という文字。その名の通り、年間の取材件数は2,000件を超えるなど、市民生活に必要な行政情報、地域での身近な生活情報、市内のイベント情報のほか、福祉・医療、経済、観光、文化など地域に密着した様々な話題の発信に努めてきた。
 FMちゃおが地道に地域情報の発信に取り組んできた理由には、忘れられない一つの悲しい出来事がある。十数年前、八尾市内で独居老人が誰にも気づかれず息を引き取った。数日後、見つかったときに部屋に置いてあったラジオからずっと流れていたのがFMちゃおだった。体が弱り外に出られなくても、ラジオを聴いて地元でどんなことが起きているのか知ろうとしていたのかもしれない。鈴木さんは、コミュニティラジオを「生活を支える最後のセーフティーネット」だと語る。受信機さえあれば無料で耳から簡単に情報を受け取れるラジオ。たとえ費用対効果が低くても必要としている人がいる。

◇前向きな閉局
 前述の通り、FMちゃおは2024年3月末での閉局を発表しているが、本稿で取り上げる他のラジオ局と異なるのは、運営母体である自治体からの放送業務委託料が現段階では止められていないにも関わらず自主的に閉局に踏み切ろうとしている点だ。ではなぜ閉局を決めたのか。鈴木さんによれば、今後も放送を継続していくためには、コンパクトで本来の目的に特化した事業体制に再構築する必要があるという。
 現在、FMちゃおではラジオ放送のほかにイベント事業などの運営業務も請け負っている。アリオ八尾で開催されるステージイベントを年間約100本以上請け負い、「守口市民まつり」など市外で開かれる企画にも積極的に携わってきた。これは長年の累積赤字を埋めるために鈴木さんほかスタッフが営業収益の幅を広げるために動いた結果だが、地元のために情報を発信する番組を作る「コミュニティFM本来の目的」から外れた仕事に追われることにいつしか違和感を持つようになった。事業を広げることは人材の確保や機材購入などの投資も増える。人材育成が難しい時代に加えて、情報発信手段の多様化でコミュニティラジオの存在意義が問われるようになった今、行政からの大きな委託料に頼らず運営できるコンパクトな放送局に衣替えすべきだと考えた。

◇ラジオを守るために
 30回以上の社内議論を重ね、現在の経営陣はFMちゃおの閉局を決断。そしてすぐに新しい芽吹きがある。閉局予定日からおよそ2カ月後の2024年6月に、「純民間」の新たなコミュニティラジオ局を八尾市内に開局させようと、今関係者の間で準備が進んでいるそうだ。未来を見据えたFMちゃおの閉局は、「なんとしても地域にラジオを残したい」という思いが導き出した答えだった。鈴木さんは閉局まで指揮を執ったのち、新たなラジオ局では身を引きサポート側にまわるつもりだ。ラジオの未来は次の世代に託す。

2-3 みんなのあま咲き放送局/旧・エフエムあまがさき(兵庫県尼崎市)

語り手:理事 原田 明(はらだ・あきら)さん(71)
    理事 三宅 奈緒子(みやけ・なおこ)さん(44)

 「みんなのあま咲き放送局」は2023年10月2日、旧・エフエムあまがさきに出演していたパーソナリティらが中心となって新たに開局したコミュニティラジオ局だ。運営形態は一般社団法人。コープ塚口の店内にあるスタジオから24時間放送している。前身の「エフエムあまがさき」は、阪神淡路大震災をきっかけに1996年10月に開局。当初は市が出資した株式会社が運営していたが事業運営が厳しくなったことから、2009年からは経営の安定化と文化事業との連携を目指し、尼崎市総合文化センター(現・公益財団法人尼崎市文化振興財団)に移管された。しかし、情報伝達手段の多様化を理由に2022年、市が放送業務委託料(年間約4,000万円)の廃止を決定。事業継続が困難となったことから2023年3月末をもって閉局することとなった。閉局から半年、自治体の資金に頼らない形で再び立ち上がった放送局。コミュニティラジオの未来へのヒントを求めて、開局から2カ月が経とうとする11月下旬、話を聞きに行った。

◇ボブさんとみんなのあま咲き放送局
 みんなのあま咲き放送局で経理など事務作業全般を担っているのが、理事の原田明さん(71)だ。ニックネームはボブ。元広告代理店勤務というキャリアを活かし、開局の準備を始めた2022年5月から運営をサポートしてきた。ラジオ全盛期に高校生だった原田さんは根っからの「ラジオっ子」。いつかは自分もラジオをやってみたいと思っていた。機会が巡ってきたのは定年後61歳のとき。友人からの勧めでエフエムあまがさきの市民パーソナリティオーディションに応募し合格。半年間の研修を経て2013年から2年間、毎週月曜日に3時間の生放送を担当した。その後は再び一リスナーとしてラジオを楽しむ立場だったが、エフエムあまがさきの閉局が決まりパーソナリティらが新たな放送局の立ち上げへ動き出したとき、助っ人として名乗りを上げたのがボブさんだった。

「コープ塚口」内にあるスタジオ (撮影:中島秀太)

◇エフエムあまがさきの閉局
 エフエムあまがさきの閉局がパーソナリティらに伝えられたのは2022年4月末のこと。運営元である財団と市による協議は既に3月に終了しており、閉局は決定事項として告げられた。長年エフエムあまがさきでパーソナリティを務めてきた三宅奈緒子さん(44)も、その決定に驚かされた一人だ。「もっと早く言ってよ」と怒りがこみあげた。三宅さんは長崎県五島列島の出身。エフエムあまがさきでは2002年、23歳のときから番組に出演してきた。カメラを片手に街を歩きながら出会った人にインタビューする看板コーナー「みやけなおこと尼人達(あまびとたち)」では1,000人を超える市民と交流を深めてきた。取材を通して、ラジオこそ地域のつながりを強くできると知ってきただけに、「なんでそれをなくす必要があると?」と疑問を感じた。また、災害時の情報伝達手段としても、市はテレビのdボタンや緊急速報メール、広報車などを活用することで対応できるとしたが、ひと度停電すればテレビやメールは見られなくなることや、亀裂やがれきが広がる道に広報車を走らせられるとは限らない。「乾電池で動かせるラジオが一番有効的なのに……。やっぱりやめたくないよね」。ラジオの必要性についてほかのパーソナリティらとも意見が一致した。「なら自分たちで作るしかない」。開局に向けて、準備に動き出した。

◇開局に向けての苦労
 パーソナリティらを中心にボブさんも加わり7人で動き出した準備。中でも最も苦労したのが資金集めだ。ランニングコストとして最低でも2,000万円は必要になる。資金が集まらない限り運営できないどころか総務省から開局の許可も下りない。人件費なども考慮して3,000万円を目標に、手分けして市内の商店や企業を周って協力を呼びかけた。本当に開局できるか見込めない状態でのお願いに、断られることも多々あったが、一個人から多額の寄付があったり、市内の企業がクラウドファンディングを企画・運営してくれたりするなどし、合わせて1,500万円は確保。総務省から許可をもらうことができた。開局準備にあたっては、本来は多額の費用がかかる引っ越し作業を元リスナーらが手伝ってくれたり、放送機材の設置やシステムの構築を同じく兵庫県内でコミュニティラジオ局を運営するスタッフがサポートしてくれたりし、大幅に費用を抑えることができた。こうしてさまざまな奇跡が起きなんとか開局にまでこぎつけたが、資金の確保は依然厳しく、理事らも含め全員が無報酬で活動しているのが現状だ。今後どう収益化を図り安定させていくか、模索は続いている。

みんなのあま咲き放送局のみなさん (撮影:中島秀太)

◇みんなのあま咲き放送局がめざすこと
 みんなのあま咲き放送局のコンセプトは「住民総“参画”メディア」だ。長年広告業界に携わってきたボブさんによると、デジタル時代を迎えた今、コミュニティラジオは広報・広告メディアとして向いていないのだと言う。そこで、みんなのあま咲き放送局では「情報の出口」としての役割に期待するのではなく、才能(タレント)を発掘し、育て、開花させる「入口」としての人材開発機能を重視することにした。住民ら自らが企画段階から番組制作に携わり、パーソナリティとして地域の情報を発信していく形を目指している。
 先駆けとして現在は、下は17歳から上は78歳まで、総勢35名の住民パーソナリティらが活動中。平日お昼に生放送している1時間のトーク番組『あつまれ!あまびとたち!』を日替わりペアで担当している。開局から2カ月が経ち、住民パーソナリティの中には、今は三宅さんら運営スタッフがしている放送機器の操作を自分でやってみたいという人や、「こんなゲスト呼びたいんやけど!」と、企画について相談してくれる人も増えてきた。今後について三宅さんは、「もっと住民パーソナリティを増やして、今はできていない土日の生放送なども始めていきたい」と意気込む。「聴く」ラジオから「出る」ラジオへ。これからも住民みんなで作りあげていく。

第3章 コミュニティラジオのこれから

3-1 インタビュー調査からわかったこと

 課題としていずれのコミュニティラジオ局も抱えていたのが運営資金確保の難しさだ。これまで頼りにしてきた自治体からの放送業務委託料が廃止されるケースが相次いでいる。スポンサーについても、みんなのあま咲き放送局のボブさんが言うように、デジタル時代においてコミュニティラジオは費用対効果が低く、広報・広告メディアとして向かない。行政には改めてコミュニティラジオの価値を再認識し、減額は仕方なくとも廃止は避けるよう考えてほしい。また一方で放送局側でも、FMちゃおのように事業体制を見直すなど、委託料に頼らず運営できる方法を模索していく必要がある。
 コミュニティラジオの魅力については次のようなことがわかった。元・エフエムひらかたの石元さんからは、ラジオはリスナーが抱えるさまざまな思いを素性を隠して共有できるからこそ、誰もが安心して思いを吐きだせる場所だと教えてもらった。FMちゃおの鈴木さんからは、無料で簡単に地域の情報を耳から得られるコミュニティラジオは「最後のセーフティーネット」として守るべきものだと知らされた。みんなのあま咲き放送局のみなさんからは、住民が主体となった番組づくりが人と人との輪を広げ、地域の繋がりをより強くしてくれると学んだ。
 災害時におけるラジオという観点では、情報伝達手段が多様化したとはいえラジオの必要性を訴える声が多く聞かれた。携帯端末を使うには充電が必要なうえ、通信障害が起きればたちまち情報が手に入らなくなる。ラジオは乾電池があれば動かせるほか、手回し発電機やソーラーパネルが付いたものを使用すれば電源がない場所でも聴くことができる。放送地域が限定されていることからエリアを絞った重点情報を伝えられる点も利点だ。また聞きなじみのあるパーソナリティの声は不安を抱える地域住民に安心感を与える。
 以上より、コミュニティラジオは平時・有事を問わず現在も地域コミュニティにとって欠かせないものであり、今後も官民連携のもと守っていくべき文化だと結論付ける。

3-2 コミュニティラジオの未来~まとめにかえて~

 近年、都市化が進み地域コミュニティの希薄化が課題となっている。その解決策の一つとして、コミュニティラジオが活用できるのではないだろうか。みんなのあま咲き放送局の事例からは、住民が運営に関わることでこれまで以上に地域の繋がりが深まっている様子がうかがえた。住民ら自らがチームとなって番組を制作することで、その制作過程で交流が深まることはもちろん、リスナーらの新たな出会いを生むことにも期待できる。身近な知り合いが出演するとなれば、普段は聴かない人もラジオを聴くきっかけに繋がる。口コミが広がりファンが増えれば発信力も増大しスポンサーになってくれる企業も現れるかもしれない。自治体と協力しながら「地域活性化の起爆剤」としてコミュニティラジオを捉え直し、時代に合わせた新たな価値を見出していきたい。
【4年・中島秀太】

謝辞

 卒業原稿の作成にあたり、インタビューにご協力いただきました以下の皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

元・株式会社エフエムひらかた 元プロデューサー 石元 彩 さま
やおコミュニティ放送株式会社 局長 鈴木 昌宏 さま
一般社団法人みんなのあま咲き放送局 理事 原田 明 さま
                  理事 三宅 奈緒子 さま

出典

【表1-1-1】
総務省「ワイドFM」
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/housou_suishin/fm-seibi.html(2023年12月9日閲覧)
【表1-3-1】
総務省「ワイドFM」
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/housou_suishin/fm-seibi.html(2023年12月9日閲覧)
【図1-3-1】
総務省「コミュニティ放送局開設の手引き」
https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/system/bc/commu/tebiki.pdf
(2023年12月9日閲覧)
【図1-3-2】
一般社団法人 日本コミュニティ放送協会
「コミュニティ放送の現況について 令和5年12月6日版」
https://www.jcba.jp/dcms_media/other/%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%8B%E3%83%86%E3%82%A3%E6%94%BE%E9%80%81%E3%81%AE%E7%8F%BE%E6%B3%812023.12.6(HP%E6%8E%B2%E8%BC%89).pdf
(2023年12月9日 閲覧)

参考資料/参考文献

 紺野望(2010)『コミュニティFM進化論~地域活力・地域防災の新たな担い手~』株式会社ショパン
 北郷裕美(2015)『コミュニティFMの可能性~公共性・地域・コミュニケーション~』青弓社
枚方市(2022年)「株式会社エフエムひらかたの解散に伴う経過について」
https://www.city.hirakata.osaka.jp/0000037017.html
(2023年12月9日閲覧)
FMちゃお「やおコミュニティ放送株式会社(FMちゃお)の閉局について」
http://792.jp/company/info/230921.pdf
(2023年12月9日閲覧)
尼崎市(2022)「コミュニティFM放送局『エフエムあまがさき』の閉局について」
https://www.city.amagasaki.hyogo.jp/shisei/1001823/1002092/1030926.html
(2023年12月9日閲覧)
総務省 電波利用ホームページ 「コミュニティ放送の現状」
https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/system/bc/now/
(2023年12月9日閲覧)
一般社団法人 日本コミュニティ放送協会「コミュニティ放送とは」
https://www.jcba.jp/community.html
(2023年12月9日 閲覧)
メディアポ ホームメイト・リサーチ「ラジオ局の成り立ちと歴史」
https://www.homemate-research-radio-station.com/useful/16560_facil_001/
(2023年12月9日閲覧)

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