安里長従

司法書士・「辺野古」県民投票の会元副代表・主な著書・論文『福祉再考:実践・政策・運動の…

安里長従

司法書士・「辺野古」県民投票の会元副代表・主な著書・論文『福祉再考:実践・政策・運動の現状と可能性』(共著、2020年、旬報社)、『沖縄発 新しい提案~辺野古新基地を止める民主主義の実践~』(共著、2018年、ボーダーインク)

最近の記事

復帰前の沖縄の社会保障制度(暫定版)

1 はじめに 社会保障制度は、国民の「安心」や生活の「安定」を支えるセーフティネットである。「社会保険」、「社会福祉」、「公的扶助」、「保健医療・公衆衛生」からなり、子どもから子育て世代、お年寄りまで、全ての人々の生活を生涯にわたって支えるものである。社会保障制度は多岐にわたり、国のみならず都道府県や市町村など、様々な主体がそれぞれに役割を担い、連携しながら実施している。 復帰前の沖縄をさまざまな側面から捉えた書籍は多く存在するが、沖縄の社会保障制度の実態を記述したものは

    • 「沖縄県差別のない人権尊重社会づくり条例(仮称)骨子(案)」に対するパブコメ意見

      「沖縄県差別のない人権尊重社会づくり条例(仮称)骨子(案)」に対するパブコメ意見を作成しました。ひとつの意見として参考になれば幸いです。

      • 沖縄県議会及び那覇市議会、県知事及び那覇市長に対する「沖縄県人種差別撤廃条例」・「那覇市人種差別撤廃条例」の制定を求める陳情書(条例案付)・要請書(条例案付)の提出について

         県議会及び那覇市議会の2月定例会における陳情の提出期限である2月7日に、標記のとおりの陳情書(条例案付)を賛同者と連名で提出いたしました。また同時に、県知事、那覇市長に同様の内容の要請書を提出いたしました。  各議会への陳情書(条例案付)、県知事及び那覇市長への要請書(条例案付)は以下からダウンロードしてご覧ください。

        • 「沖縄県人種差別撤廃条例案」

          目次 前文 第1章 総則(第1条~第11条) 第2章 基本的施策(第12条~第20条) 第3章 差別的行為の解消に関する措置(第21条~第28条) 第4章 差別的行為を目的とする集会のための本県の公の施設の利用の制限(第29条・第30条) 第5章 人種等差別撤廃審議会(第31条~第35条) 前文  沖縄県は、日本国憲法及び日本国が締結した人権に関する諸条約等の理念を踏まえ、あらゆる不当な差別の解消に向けて、一人ひとりの人間の尊厳を最優先する人権施策を、平等と多様性を尊重し、

        復帰前の沖縄の社会保障制度(暫定版)

        • 「沖縄県差別のない人権尊重社会づくり条例(仮称)骨子(案)」に対するパブコメ意見

        • 沖縄県議会及び那覇市議会、県知事及び那覇市長に対する「沖縄県人種差別撤廃条例」・「那覇市人種差別撤廃条例」の制定を求める陳情書(条例案付)・要請書(条例案付)の提出について

        • 「沖縄県人種差別撤廃条例案」

          沖縄戦の教訓とは

          1 はじめに  本日6月23日は、20万人を超える人が亡くなった沖縄戦から76年となる「慰霊の日」である。凄惨な地上戦の爪痕や記憶と今なお向き合う沖縄は平和を願う静かな祈りに包まれる。  新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が出ているなか、平和祈念公園で毎年行われる戦没者追悼式は、参列者を30人ほどにとどめるなど、規模が縮小されている。県内各地では、慰霊祭が相次いで中止になったほか、休校で平和学習を行うことができなくなるなどこれまでに増して戦争体験の継承が難しい状況となってい

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          石垣市自治基本条例審議会答申の酷さについて

          1 はじめに  3月18日、石垣市の自治基本条例審議会が答申を出した。これは石垣市自治基本条例43条が「市は、5年を超えない期間ごとの見直し」を定めていることより、同条に基づき審議会が設置され、諮問がされ、審議会が答申をしたものである(前回は2015年度)。この審議会の構成員に石垣の住民投票を求める裁判の市側の弁護士がいる一方で、審議員公募に立候補した住民投票を求めている市民が落選するなど審議会の客観性・公正性が問われていた。当初懸念されていた自治基本条例の廃止については、多

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          石垣島の住民投票を求める裁判、ここだけは押さえてほしい点、ここだけは理解してほしい点

           未だ多くの方が良くわかっていなかったり、誤解していたりする石垣島への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票の裁判。その裁判の控訴審が1月20日から福岡高等裁判所那覇支部ではじまる。住民投票の義務付けを求める裁判は全国でもはじめてであるが、県紙も含め報道が少なく、また誤った理解を前提とした報道もあったためか、この問題について正確に理解されていないと感じることが多くある。  そこで、これまでの経緯を簡単に説明するとともに控訴審を前にここだけは押さえてほしい点、ここだけは理解して

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          シティズンシップを求めるアイデンティティ・ポリティクスへ(暫定版)

          1.問題意識  辺野古新基地建設反対を訴えた故翁長雄志前知事(以下「故翁長知事」という)は「沖縄の置かれている状況に保守も革新もない、イデオロギーよりアイデンティティで結集すべき」と主張した。これが直感的には沖縄の人たちを結集させる意味を持たせたが、その後、アイデンティティの負の側面だけが強調されたり、各々が持つアイデンティティ、特に宮古や八重山、そして移住者、混淆的アイデンティティの視点からそのスローガンに自分が含まれているのかをめぐる疑問が呈されたりネガティヴな議論を招い

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          志賀信夫「貧困理論の再検討―相対的貧困から社会的排除へ」(法律文化社)読書感想

           本書は、現代の貧困理論である「社会的排除理論」について体系的に述べられた唯一の本といっても過言ではないように思う。しかし、日本においても「社会的排除」という言葉を使用する人は増えたが、それは日本語として単に社会から排除されている状態を示すに過ぎないものが圧倒的である。  「貧困の存在を認識すること」と「貧困を知ること」は同義ではない。同様に「社会的に排除されている人がいることを認識すること」と「現代の貧困理論である社会的排除理論を知ること」も同義ではない。貧困問題が深刻な社

          志賀信夫「貧困理論の再検討―相対的貧困から社会的排除へ」(法律文化社)読書感想