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Soft Rock Top 100位~91位

 初めまして。ゆいと申します。いきなりの初投稿でランキング形式の仰々しいタイトルにしてみましたが、読者の皆様に満足して頂けるかドキドキしています笑。
 元々音楽が大好きで、基本は雑食系で気に入った楽曲はジャンル問わず聴き込んじゃうタイプなのですが、特に洋楽においては60’s~70‘s辺りのサウンドがお気に入り。この特定の年代においても広く浅くのオールマイティ・タイプなので、一つのジャンルに特化して造詣が深いという訳では無いのですが、この度はレトロな産物に足を踏み入れている【Soft Rock】という曖昧な定義を持つ汎用性の高いジャンルに焦点を当てて記事を書いてみようと思います。何故【Soft Rock】なのかと申しますと、他ジャンルにおいてはその筋に精通しているマニアックなレコード番長殿がSNSやブログ・Web Siteを通じて深い情報を発信しているのですが、【Soft Rock】に関しては「Web Vanda」以外ではほとんど特化した情報ネット・ツールが存在してない様に感じましたので、全くのド素人の私ごときで大変僭越ではありますが、ランキング形式で世にあまりに知られていない【Soft Rock】の魅力をお伝え出来ればと思った次第で御座います。
 主観・恣意的な偏りを極力無くす為、下記の独自ルールを設け、それに則った形で数ある派生楽曲の選出をさせて頂きました。

ルールその①各アーティスト1曲のみ。
ルールその②Soft Rock系専門書で紹介され、一般的に知名度が高いメジャー盤は関しては除外(一部例外有)。
ルールその③多彩な派生ジャンルを扱いつつも均等性にも配慮
ルールその④虚栄心を満足させる為だけのマニアック系は徹底的に排除
ルールその⑤希少性より内容重視
ルールその⑥順位はその時の気分次第
ルールその⑦1960年代中旬から1980年代初頭まで

 文字数配慮や長文調整の観点で100位から50位までは1記事につき10曲、それ以降は1記事5曲ずつでの紹介になり、合計15記事で完結致します。誤った情報に留意し、可能な限り正確な情報の記載しているつもりですが、万が一明らかな間違いやフェイク等が御座いましたら、下記コメント欄から御指摘・御指南して頂けると助かります。また、随時フィードバック募集中で御座いますので、ポジティブな感想など頂けると今後の執筆の励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
 前置きが長くなりましたが、【Soft Rock Top 100】が皆様の参考になり、少しでも楽しんでお読み頂ければ幸いに思います。ではお楽しみくださいませ~!!


100位Chelsia Chan「Falling In Love Again」1977年

『Because Of You』インナー・スリーヴ写真

 70年代後半に主に中華圏で一世を風靡した香港出身の実力派SSW兼女優。繁体字での本名は陳秋霞。81年の婚姻により音楽業界から第一線を退いた為、(全盛期の)活動期間は約5年と短命。にも関わらず熱狂的なファンと爆発的な人気を博したのは、キュートで甘い歌声と亜モノ界隈では断トツと言えるそのルックスの良さが要因とされております。地元香港以外にも台湾・韓国・日本にも赴き精力的な歌手活動を行っていたので、各国にいる熱心なレコード・コレクターの発掘の的となり、英詩盤・中国語ヴァージョン共にレア度は現在も高め傾向。
 端正で甘いヴォーカルが最高レベルに発揮された英詩盤4枚のアルバムは、Soft Rock的な選曲も内容も総じて高いので、ファンならずともSoft Rock好きの方は全4作品の入手は必須です。
 今回100位に選曲させて頂いた楽曲「Falling In Love Again」は、1977年作英詩盤実質2nd Albumに当たる『Because Of You』に収められた冒頭曲で、日本の音楽界を支えた作編曲家・筒美京平による作曲。爽やかで弾けるポップ感覚とChelsia Chanの甘い歌声が絶妙にマッチした佳曲。
※同作に収録されたMJ「Ben」の名カバーも個人的に激レコメンド。

99位 The Children Of Prague「Dew Dew Dewy Day」1971年

ジャケアート・制作陣・内容面全てがバブルガム‼︎

 クラシカルなBaroque Rockと言えばSoft Rockファンにはお馴染みのこちらの名曲。この楽曲が収録されたアルバム『Old-Time Bubble Gum Music(1970 年米国リリース)』は、①The Sherman FamilyLor CraneRod McBrienという強力タッグにより制作された一過性の企画盤であります。

The Sherman Family。仲良く作曲作業中!!

 順を追って説明致しますと、まず①The Sherman Familyは元々高名な作編曲家であったAl Shermanと、その息子に当たるサラブレッド兄弟⇒The Sherman Brothersの作曲トリオのこと。父親AlのDNAを色濃く受け継いだ The Sherman Brothers(兄 Robert Bernard:弟 Richard Morton)は、米国カリフォルニア州出身の作編曲家で主にディズニー映画音楽の作詞作曲や映画音楽にミュージカルの手法を盛り込んだ作品を生み出したことで有名。ファンタジー系ミュージカル映画『Chitty Chitty Bang Bang』や『Mary Poppins』『The Jungle Book』『The Many Adventures of Winnie the Pooh』『It's A Small World (After All)』等、デ ィズニー映画を代表する作品の名曲を世に送り出し、アカデミー作曲賞~グラミー賞を受賞した偉大な音楽家として良く知られております。

Chad & Jeremyの作品でも手腕を振るったLor Crane氏

 そして②Lor Craneは、作編曲家兼プロデューサーで、王道Soft Rock系大名盤The Astral Projection『The Astral Scene(1969 年作)』の立案者ということで(Soft Rock 界隈では)有名な御方。この作品は、自らの肉体から精神が切り離され、宇宙へと旅立った後に再度地球に 降り立ち、自身の肉体に戻るまでを描いた【幽体離脱】というスピリチュアルなテーマが基となっていて、Lor 御本人が作詞・作曲・アレンジ・指揮・パーカッション担当等、プロジ ェクターとしてだけでなく、自身が全面的にマルチバックアップしておられます。

Salt Water Taffy期のRod McBrien(一番右側)

 その『The Astral Scene』をSoft Rock系大名盤にたらしめたのがサブ的役割(プロデュースのみ)で参加した③Rod McBrien。彼はSoft Rockファンであれば誰もが知る超有能なSSW兼プロデューサーで、Salt Water TaffyやGoggles のメンバーであり、The InnocenceやThe TradewindsといったAnders & Poncia 系作品や、The Eastern Scene・The Spurrlows・The Skyliners等々のSoft Rock 系作品にエンジニアとしても参加したり、正にSoft Rock界の重鎮と呼ばれるレベルで活動してきたスーパースター。
 つまり端的に言うと、①の有能なライター・チームが全曲作曲し、その楽曲を極甘ヴォイスの③が唄い、『The Astral Scene』で名を馳せた②がアレンジ・指揮・プロデュース。とい う最高で最強な布陣によって、疑う余地の無い傑作Soft Rock盤が完成された訳です。レコ ードに針を落とせば一目(耳?)瞭然。Salt Water Taffyを彷彿させる美麗で小粋なメロディライン、モロ Gogglesな甘くSoftなサウンド、そして爽やかなコーラス等々…Rod McBrien 節が随所で炸裂しております。
 今回99位に選出させて頂いた「Dew Dew Dewy Day」は、この名盤の冒頭に収録された楽曲で、バロック・サウンドから始まり、優雅なストリングス~小鳥のさえずり、そしてキャッチーで爽やかなメロディとRod McBrienの甘い歌声で全身がリラクゼーションに浸れる癒しのSoft Rockサウンドを展開。エンディングに魅せるチルドレン系のラララ・コーラスで完全ノックアウト!!
※鬼殺し的な極甘ソフロ「Save Your Sorrow(B面1曲目)」も激推し!!

98位 The Cimmeron Show Review「I Love You」1976年

EP盤ピクチャー・スリーヴ

 全米の中でも圧倒的な治安の良さと長閑で自然豊かなのんびりとした雰囲気が魅力なウィスコンシン州オシュコシュ。州内でも古い歴史と上質な教育方針で定評のあるウィスコンシン大学オシュコシュ校に通う4人の学生(R.B.Smith/Bob Way/Phil Barry /Jeff James)によって結成されたのがThe Cimmeron Show Review。グループ名の【Show】から推測される様に、主にステージでの演奏をメインに活動していたショーバンドで、市内全域のコンテ ストで優勝した実績を持つ実力派。地元での絶大な人気を誇っていた彼らは徐々に活動の場を広げ、「リージョン2」と称される米国中西部の5つの州でコンサートやフェス、クラブサーキット、ライブハウス等で転々とステージ・ツアーを行い、早い段階でHeadlinerの地位を獲得する程の大成功を収めたそうです。プロモーションが良くなかったのか・業界人との縁がなかったのか、ショーバンドという性質上の気質も相俟って、1972年から1979年までの8年間の活動期間で、正式なレコード・リリースはEPシングル2枚のみ(オシュコシュ地域で2枚共Top10ヒットを記録)に留まっています。

1975年作EP盤ピクチャー・スリーヴ
  • 1975 年『A:We Can Fly (Pass An Apple)/ B:Changing-Rearranging』

  • 1976 年『A:See Me Through / B:I Love You』

 全4曲のプロデュース・作詞作曲からVocal・Guitar・Keyboardを担当しているリーダー格のR. B. Smithは、幼少期に母親の影響でクラシック音楽(ショパン・リスト・チャイコフ スキー)を好んで聴き、その後ジャズにも興味を持ち独学でピアノを学ぶと同時に曲作りにも着手するようになりましたが、当時のティーンエイジャー宜しく、ラジオでThe Beatlesを初めて聴くと、ピアノからギターに持ち替え、Rockの道へと邁進することになったそうです(Eric Carmenと全く同じ)。
 今回98位にランク付けさせて頂いた「I Love You」は、美しくもクラシカルなピアノの音色とAcid Jazz前夜な雰囲気が見事に融合された楽曲で、彼の幼少期における音楽経験が大きく反映された1曲に仕上がっています。全体的なサウンドはpreネオアコ的な良質ギター・ポップという趣で、良くも悪しくもローカルぽい《いなたさ》が全快。で、青春系のちょっぴり甘酸っぱいメロディが胸を付くという、ややThe Flipper's Guitarの雰囲気を漂わせたSunny Soft Rock的な感じが何とも素敵。

※(余談)…R. B. Smithはグループ解散後の80年代以降はL.A.に拠点を移し、Elektra/Asylumレコードでプロモーション・マネージャーとして務めます。その後は自身で芸能事務所【Silver Lining Entertainment】を立ち上げ、90年代に音楽業界から引退・・・と御本人のWeb Siteに記載されてますが、その後も曲作りは継続し、定期的にSolo Albumを発表しています。2007年6月1日にリリースされた1st Solo AlbumにはThe Cimmeron Show Reviewの全4曲をセルフカバーしており、渋みの掛かったハスキー・ヴォイスに円熟味を増したサウンドに生まれ変わっており、ファンの方は要チェックです。

97位 Sonlight「Day Of Salvation」1973年

サイケ風アートからは想像も付かない極甘ポップ目白押し。

 同時代に同名グループが幾つも存在しているSonlight。今回選出させて頂いたSonlightは、菊池桃子のバック・バンドを務め、Fusion~AOR界隈で人気を博したKoinoniaの前身グループ。名前から推測されるようにCCM系のグループで、4人メンバーの内3人(Koinonia)が在籍していた白人・黒人混合のファンク・ソウルグループThird Avenue Blues Band がその母体(Third Avenue Blues Band⇒Sonlight⇒Koinonia という順に発展)。

1980年にKoinoniaへと改名!!

 70年にリリースされた唯一作『Fantastic』がFree Soulファンの人気盤として知られておりますが、こちらのSonlightが発表した恐らく唯一作と思われる『S.T.(1973 年作)』では 美メロと濃厚ハーモニーが秀逸なCCM系Soft Rockサウンドが満載なアルバムで、前身バンドとはガラリと印象の異なるサウンドを披露しております。全曲の作詞作曲からアレンジ、ホーン・セクションを含めた全ての演奏をメンバーが担当しており、前身バンド同様に制作に対する意欲の高さが感じられます。作編曲からリードヴォーカルを務める実質リーダー格のHadley HockensmithHarlan Rogersがバンド内の実権を握っており、1曲のみ例外はあるものの、それぞれ自身が書いた曲でリード・ヴォーカルを取っています。優しく温かいSteve Eaton風ヴォーカルのHarlan Rogersはロック~カントリー・ソングを、甘口でハイトーン・ヴォイスのHadley Hockensmithは軽快でメロディアスなポップ・ソン グをと、サウンドは大きく分けて2分化されています。Soft Rockファンにとって聴き所と なるのは勿論甘口サウンド担当のHadley Hockensmithによる楽曲です。

メロディ・メイカー兼甘口ヴォイスのHadley Hockensmith

 97位にチョイスさせて頂いたのはアルバム冒頭に収録された「The Day Of Salvation」。正にアルバム最大のハイライトと言っていい極上のSoft Rockナンバーで、ソフト&キャッチーなメロディ、甘いヴォーカル、爽やかなコーラスなどSoft Rockにおける重要なアイコンがギュウギュウに詰め込まれています。さらに適格なスピード感と絶妙なタイミン グでのリズム・チェンジ、そしてそれに付随するコーラス・アレンジの上手さなど、正に模範的な正統派Soft Rockナンバーと呼べる大名曲に仕上がっています。終始美しく鳴り響くフルートやオルガンの音色がソフトな雰囲気作りに一役を買っていて、間奏でのソロ・パートも聴き所となっています。(この曲が気に入った方は、Hadleyによる甘く切ない必殺Mellow Ballad「In Remembrance」もお薦め。)

※(余談) …本盤がリリースされた同年に、メンバー全員でレーベル・メイトでもあるCCM系のゴスペル・バンドAndraé Crouch & The Disciplesのライブでバック・ミュージシャンとして演奏を務めます。それ以降Fletch Wileyを除く3名は、Koinonia結成するまでKelly Willard、Amy Holland、David Gates、Bruce Hibbard等の大物ミュージシャンのバック・ バンドをメインに活動し、後に名うてのセッション・ミュージシャンと言われる程までに成長します。

96位 The Charade「Love So Fine」1969年

陰鬱を孕むFolk Trio然としたジャケ写が最高にクール‼︎

 豪州出身の若い男女Siobhan Sheppard、David Cooper、Brian O'Tooleの3名から成るグル ープThe Charade。彼らの唯一作『S.T.』は、ロジャニコの名曲を3曲もカバーしているこ とでSoft Rockファンの間で絶大な人気を得ている1枚です。今作でアレンジ・プロデュー スを担当したGus McNeilは、自身がヴォーカルを務める即席バンドWhite Wineの唯一作『Overflow』でも数曲ロジャニコのカバーをしており、さらにSergio MendesやPhil Spector等のA&M系の楽曲も取り扱っています。

White Wine唯一作『Overflow』

 The Charadeの唯一作は、そのWhite Wineと同年にリリースされていることから、White Wine『Overflow』の姉妹盤とも言われており、 Soft RockファンやRoger Nicholsファンにとって両者Gus McNeilプロジェクト2連盤は入手必須アイテムとなっております。 The Charadeの唯一作『S.T.』は、Roger Nichols & Paul Williamsによる黄金コンビで初期に当たるThe Holy Mackerel の「Bitter Honey」・「To Put Up With You」と、Roger Nichols & The Small Circle Of Friends「Love So Fine」の計3曲のカバーが最大の聴き所となっておりますが、それ以外の楽曲はFolk・Blues・Country・Classical Guitar Inst等々、多様なサウンドが雑然としながらも、基本的にはママパパ・フォロワー的なFolk Rockサウンドを意識したようなアルバム内容となっております。

本盤の影武者Gus McNeil氏!!

 96位に選出した「Love So Fine」は、女性ヴォーカルSiobhanがリードを取っており、コー ラスがない上に、演奏も極めて簡素な音作りになっております。このシンプルさが逆にメロディの良さを浮き彫りにさせ、いかにRoger Nicholsの作曲センスが非凡なものかが見て取 れます。突出した個性が無いThe Charadeにとって、彼らのウィーク・ポイントが逆に楽曲の魅力を際立たせるという皮肉的な形で名カバーが生まれましたが、それがGus McNeilの 狙いだったのかは謎に包まれております。しかしながら個人的にはこのThe Charadeヴァージョンの「Love So Fine」は特に気に入っており、しっとり聴かせる暖かみのあるサウンドと控えめなヴォーカルがいかにもSoft Rock的で素敵だなと感じております。

95位 Brian Chapman「It's Magic」1977年

1stジャケはブルー仕様で2ndはレッドカラーヴァイナル。

 スウェーデンが誇る極上のポップ職人Brian Chapman。彼の光り輝く才能はデヴューか ら間もない1st Albumから2nd Albumに掛けて最盛期を迎え、流れ星の如くすぐさま陰りを見せることになります。ただ一時的ではあったものの、その抜群の作曲センスは一流作曲家にも匹敵する程で、今でも根強いファンが後を絶たないとか…。
 衰退期の自覚と同時にカバー・ソングをリリースすると、見事にスマッシュ・ヒットを記録。それがLobo「I'd Love You To Want Me」のカバーで、名声の獲得と共にメディア露出のチャンスにも恵まれ、ドイツのTV番組での出演も果たすことになります。正しくアイロ ニック的な成功を収めた訳ですが、後退期における一発屋的ヒットが長続きするはずもな く、その後の活動は徐々に尻すぼみに。

 Soft Rockファンが押さえておきたい作品は言わずもがな1977年作の1st Album『It's A Long Long Story』と1978年作の2nd Album『Turn It Up!』。特に前者は同胞スウェーデ ンの人気グループABBAやGimmicksのメンバー、後期The HolliesのメンバーにもなるMikael Rickforsも参加する等、錚々たる顔ぶれのもとで制作された渾身のアルバム。
 そんな記念すべき初作品で、彼の最大のアイデンティティーとなっているメロディー・メ イカーぶりが大爆発!PilotやThe Holliesにも通じる胸キュンポップなメロディ・センスは、初見では度肝を抜かれること間違いなく、Gilbert O'SullivanとCurt Boettcherに似通 った美しいハイトーン・ヴォイスがとにかく爽快。中でも、彼の魅力が最大限に凝縮した「Landslide Of Love」が広く聴衆に受け入れられ、Soft Rockファンの間でも大人気の1曲でもあります。
 ですが、今回私が95位に選出させて頂いたのは同アルバムB面2曲目に収録された「It's Magic」。Vanda系統のSoft Rock的観点で言えば、こちらの方が一枚も二枚も上手を行く名曲に仕上がっているからです。佐野邦彦氏が大事にしていたSoft Rockの重要アイコンであ る「高揚感」が尋常じゃないレベルで炸裂しているというのが最大の理由。Aメロ~Bメロに掛けての「高揚感」・サビで爆発する「解放感」・全体を覆う「ポップ感覚」…どれをとっ ても一級品。マジカル・ポップな世界観が癖になります。

※(余談) …2nd Album『Turn It Up!』に収録されたモロPilotな「Ok, It's Alright Tonight」と「Elusive Butterfly」。極甘Mellow Ballad「Something Must Be Wrong Inside Your Life」もお薦め。

94位 Candlewick Green「Sunday Kinda Monday」1973年

EP盤ピクチャー・スリーヴ

 英国が誇るModern PopグループCandlewick Green。彼らは素人参加型発掘番組で見事合格し、Deccaとのレコード契約を結んだLondon出身の5人組グループ。当時の売れっ子ライターコンビScott & Dyer(Jigsaw) の楽曲提供という強力サポートにより、素晴らしいSoft Rock系佳曲を世に残したJigsawの弟分的な存在として広くSoft Rockファンに親しまれています(多分…)。
 彼らは2nd Album以降にツアーがメインのライブ・バンドとして活動していくことになる為、我々Soft Rockファンが注目すべきなのは、それ以前のスタジオ・レコーディングに注力していた1970年代前半頃ということになります。この時期のサウンドは濃厚なHarmonyと極甘でカラフル・ポップな楽曲が多いので、英国産Harmony Popやティンパンアレー (特にTony Macaulay)が好きな方々なら唸ること間違いなしかと思います。

兄者的存在のJigsaw!!

 今回94位に選ばせて頂いたのは彼らの2nd Single(1973年5月11日発表)のA面に収録された「Sunday Kinda Monday」という楽曲(LP未収)。勿論Scott & DyerのJigsaw最 強コンビによる共作ナンバーで、イントロの濃厚「ドゥッワァ」コーラスから始まり、Edison LighthouseやButterscothを彷彿させるティンパンアレー系のメロディ・ラインが特徴的な1曲。リード・ヴォーカル担当のTerry Webbも明らかにTony Burrowsを意識しており、もしかしたらJohn Carterが影武者として指揮を執っていたのでは?と疑いたくなるレベル。

93位 Friends「Glamour Girl」1973年

Friends(友達)と銘打ってる割にはすぐに分裂する有能トリオ

 実力も実績も併せ持つ本格派ミュージシャンが一挙に集結したスーパー・トリオ・グループFriends。3人共Soft Rock界の重要人物ですので説明不要かと存じますが、復習も兼ねておさらいしておきましょう。

Bassも弾けちゃうMichael Lloyd

①【Michael Lloyd】 米国NY出身の作編曲家・アレンジャー・プロデューサー。10代から本格的に音楽活動を始め、Hot Rod系ガレージバンドThe New Dimensions ⇒級友Harris兄弟と組んだThe Rogues⇒The Laughing Wind⇒The West Coast Pop Art Experimental Band⇒Country⇒Friends⇒Cotton, Lloyd & Christian…等々、数多くのバンドを結成して意欲的にミュージシャンとしてのキャリアを積みつつ、The OsmondsやShaun Cassidy等のアイドル系ポップ・スターのプロデュースも行うようになり、Mike CurbがMGM Recordsの社長に就任した際に若干 20 歳にしてA&R担当副社長に。

Guitar Playに集中するDarryl Cotton

②【Darryl Cotton】 豪州アデレード出身のSSW兼テレビ俳優。後にLittle River BandのメンバーになるBeeb BirtlesとZootというポップバンドを結成。 Zoot⇒Birtles & Cotton "Frieze"⇒Friends⇒Cotton, Lloyd & Christian⇒テレビ業界に進出して俳優に。

陽気な笑顔が可愛いSteven Kipner(左側)

③【Steven Kipner】米国生まれ豪州育ち。Michael Lloydと同様若くして多数のグループでミュージシャンとして活動しながら、SSWとしてのキャリアを確立。Steve & The Board⇒Steve & Stevie⇒Tin Tin⇒The Fut⇒Friends⇒Skyband⇒Think Out Loud⇒1979年に待望のSolo Album『Knock The Walls Down』をリリース⇒Olivia Newton-John 「Physical」を筆頭に、 Alan Sorrenti・Dan Peek・Chicago・Player・Airplay等に楽曲提供。

完全にアイドル扱いされてる実力派スタートリオ(裏ジャケ)

 Friendsは1973年にアルバム1枚をリリースした後に即解散。残りのメンバー①②はChris Christianを加えて《Cotton, Lloyd & Christian》を結成。③は Lane CaudellとPeter Beckettを招集して《Skyband》を結成します。      
 《Friends》《Cotton, Lloyd & Christian》《Skyband》。どのグループも王道Soft Rockに通じる素晴らしいサウンド・楽曲を残しているので、ファンの方は入手必須。そして細い川も大海に繋がっている様に、彼らの人脈を深堀りして辿り着くのはやはりRock Giants(谷川の浅瀬へ迷い込むことも有)。つまりは業界で成功を掴んだ源流的サウンドが詰まっているということで大変貴重な音源でもあるのかなと感じます。

最強Soft RockトリオCotton, Lloyd & Christian
Tin Tinで特徴的だった初期Bee Geesサウンドが色濃く感じるSkyband

 サウンド自体は年代の割にはかなり古臭く、60’Beatの延線上といった趣で、感じとしては《Alan Clark不在のThe Hollies》と言ったところ。程良く効いたビートに、甘くキャッチーなメロディを奏で、そこに可愛いらしいコーラスが乗っかていくというSoft Rock王道スタイルが基本。ですが、他のB級グループと圧倒的な差を生んでいるがメロディの胸キュン度合い。アルバム全体にそういった胸キュン・ポップな楽曲が粒揃いに散りばめられている為、1曲を選ぶのが非常に難しいところです。
 初見の方に、というのであればやはりオープニングを飾る「Glamour Girl」でしょうか。三声の美しいHarmony、開放感のある甘いメロディ、程良いビート感、2章節目からのパッ セージ・コーラス、ブンブン跳ねるベース、後半のハンドクラッピンetc…と、モロThe Holliesサウンド直系なのですが、正統派ポップスのド真ん中を行く模範的な大名曲。 3人共脂の乗り切った時期ということもあり、楽曲自体はどれもハイクオリティでSoft Rockファンのハートを鷲掴みにするには十分過ぎる程の内容です。
 「Glamour Girl」以外にも「Would You Laugh」「(Won't You) Reach Out」「Deep River Blues」「I've Known You So Long」「Moonshine」の5曲も同様に聴いて頂きたい素晴らしいナンバー。

92位 The Young & Free「I Can't Live That Way」1971年

青空の下で羽ばたく青年達。一体何処へ行くのやら…

 ベトナム反戦運動や公民権運動を中心とする反体制派により発起したカウンター・カルチャー《Summer of Love》。ヒッピー・ムーブメントの最中、ニクソン大統領は過激な反戦運動に倦厭を俄かに露わにしている《Silent Majority》こそ「法と秩序の回復」に必要不可欠と掲げ、その秩序たるはキリスト教的な価値観に基づいた道徳観だと明言。その影響からか60年代後半から敬虔な信者ファミリー達による音楽的福音活動が活発化を増します。布教活動の一環として声楽隊信者達により立ち上げられた自主制作による無数の宗教レ ーベルから、夥しい数のゴスペル・宗教・教会モノのCCM系レコードがリリースされます。 キリストの生涯や賛美を言葉と音楽で綴っていくCCMのスタイルは、ゴスペルを基調とする為、基本的にはコーラスを主体としております。大所帯系は論外として、少数編成によるグループ且つ《キャッチーなPopサウンド》と《上質な高揚感・グルーヴ感》が伴うことでCCM系のSoft Rockサウンドが爆誕。
 あまりのハズレの多さに絶望を感じる採掘作業。そこで、当たり的作品を掘り当てる確率を効率良く挙げる為に開発されたのが《人脈パイプ作戦》。宗教Soft Rockの最強四天王である「Ralph Carmichael」「Paul Johnson」「Kurt Kaiser」「Otis Skillings」を中心に関連作品・ 人脈で当たり作品を探っていくという方法論。この戦略で堀彫りしていくと高確率で良質盤に出会えるので初心者の方は是非お試し頂きたい。

CCM四天王Kurt Kaiser!!

 四天王の中でも優れたアレンジ・作曲能力を有するKurt Kaiser。彼が手掛けたSoft Rock系作品で内容・充実度で最高峰に位置するのが1971年に発表された傑作盤The Young & Free『Goin' Somewhere』。1951年に米国テキサス州で設立された教会系マイナー・レーベ ル「Word Records」からのリリースで、メンバーはThe Campus Life(Youth For Christ International)の学生男女合わせて7人。Nat King ColeやDean Martin絡みでも知られるLee Gilletteがプロデュースを務めており、楽曲は全てオリジナルでKurt Kaiserが助け舟的に3曲提供しています。全曲総じて及第点以上の品質を維持しており、男女混成によるChorus & Harmonyの配置・楽曲構成からアレンジまで緻密に計算された高い音楽性が伺え、Kurt Kaiserの手腕が冴え渡っております。

裏ジャケに写るThe Young & Free

 幽玄なサイケ・サウンドを狙ったそのコンセプト自体があまりにSoft Rock 的ですが、中でもThe Love GenerationやInner Dialogue、Eternity's Children を彷彿させる濃厚なHarmonyは特に素晴らしく、明るくキャッチーなパパパ・コーラスと浮遊感ある幽玄コー ラスを楽曲により上手く使いこなし、Soft Rockマナーを完璧にモノにしています。粒揃いな佳曲がズラリと並び、宗教的な気高さやゴスペル臭さもあまり強く感じず、抵抗感無く聴けるのが好感触。転調が最高にカッコ良い圧巻ドライヴィン・ソフロ「Goin' Somewhere」・ モロSunshine Popな「Wooden Cross」・マイナー調の洒落たアレンジがゾクゾクするメラ ンコリック・バラード「Love's The Answer」辺りはSoft Rockファンに受けが良く必聴の楽曲。私的ハイライトはSoft & Psycheに徹底した幽玄&哀愁系Mellow Ballad「I Can't Live That Way」。深淵なる奥深いメロディが堪らなく聴き込み深いです。

91位 Der Botho Lucas Chor & The Soundmasters「Ring Ding Ding」

露出度高めのファッションも時代を感じる…

 独・ベルリンを根城にして活動するBotho Lucas率いるコーラス・グループ Der Botho Lucas Chor。1963年~74年までの膨大な作品群の中から選りすぐりの良作をコンパクトにして発表したのが『Come On, Clap Hands, Dance!...』。鈴木雅尭氏監修『Record Hour』にも取り上げられたり、フロアを沸かしているかの様なDJ向けの表ジャケットが話題を呼び、本国でも人気の高い1枚でもあります。
 コーラス物と言うよりは、むしろEasy Listening系と言った方がしっくりくる楽曲が粒揃いに収録されており、独ライブラリー系最強名門レーベル「Golden Ring Records」を彷彿させる耳心地の良い名曲群に思わず目眩がしてしまいます。個人的に壺ったのがB面3曲目に収録された「Ring Ding Ding」。終始控えめで主張し過ぎない男女混成スキャットが最高に爽快。 それでいて西欧特有のお洒落で可憐さも持ち合わせた一級品の楽曲に仕上がっています。聴く程に癖になるキラー・チューンとして是非皆様の名曲リストにも加えて頂きたい。

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