見出し画像

「あいだラジオ」『SNSの哲学』編:書店員さんからのお便り

シリーズ「あいだで考える」(創元社) の関連企画「あいだラジオ」に、戸谷洋志さん著『SNSの哲学――リアルとオンラインのあいだ』の感想文をお寄せくださった3人の本屋さん。本記事では、その全文をご紹介いたします。これら3つのご感想文は、あいだラジオ『SNSの哲学』編の第3回で紹介されています。

感想文をお寄せくださったのは
古賀詩穂子さん(TOUTEN BOOKSTORE/愛知)
小谷輝之さん(葉々社/東京)
嶋田翔伍さん(烽火書房hoka books/京都)
です。

それぞれに独自の視点から『SNSの哲学』を読んでくださっています。ご自身の読みを広げるガイドとして、どうぞお楽しみください。

「あいだラジオ」再生リストはこちらから↓
https://youtube.com/playlist?list=PLCWmaCrQbukb6JfLRSMvSbBHUsvT4f0cZ

***

古賀詩穂子さん(TOUTEN BOOKSTORE/愛知)

多聞さん、モノ・ホーミーさん、こんにちは!
TOUTEN BOOKSTOREの古賀です。
あいだで考えるシリーズ『SNSの哲学』を読ませていただきました。

戸谷さんの話しかけてくれるような明るい文章と、モノ・ホーミーさんの挿絵がたくさんあって楽しい本でした。
とても読みやすいのに、自然に哲学的なお話に展開されていて、さらに次の世界への入り口になるような仕掛けがしてあってこのシリーズ全部読みたい!と思いました。(本当に!!!)

SNSは仕事でもプライベートでも手放せないものになっていて、自分自身にもSNSでの人格があるような気がしています。なので、”SNSを使っているあなた自身が何者なのか”という問いはとても興味深いものでした。

タイムラインには時間が流れておらず、インスタのストーリーはSNSに時間を作り出している、というSNSと時間をめぐる話が特に面白かったです。SNSが単発性のものが得意で、本は連続性のものが得意、というようなイメージが私自身にあったのもそういうことなのかなと思ったり、自分にとってSNSは「時間をすごす」というよりは「時間を消費する」感覚に近いので、そこも連続性に関係しているのかな、と考えたりしました。

だからこそ隙間時間にSNSをチェックしがちで、時間を忘れることもしばしばなのですが、お二人はどういったときにSNSを見ていますか? また、Twitterとインスタグラムでそれぞれ関わり方を変えたりしていますか?
私は仕事上、情報が一覧で見やすいインスタグラムに投稿することが多いのですが、情報収集はTwitterを使うことが多いので、お二人の場合はどうかな、と思いました。

あとあと、モノ・ホーミーさんが描く挿絵がたくさん見れてうれしかったです。
SNSの匿名性の高さが、モノ・ホーミーさんのイラストの雰囲気にすごくマッチしているなと思いました。毛糸、傘、鏡、雲……たくさんのモチーフがあったと思いますが、気になるのはやっぱりネコ。とてもかわいかったです。たくさんのネコが描かれているのはなにかリクエストがあったのでしょうか?表紙にもいっぱいいて、110ページの雲(=クラウド?)にもネコがいっぱい乗っていて、気になりました。他者の目かな。。。

長くなってしまって恐縮ですが、ぜひお聞かせください!
では、本が出来上がったら売るのはお店の番なので、プッシュしていきます!

どうぞよろしくお願いします!


小谷輝之さん(葉々社/東京)

10代以上のすべての人たちを読者対象にしているだけあって、とても丁寧に優しい言葉で文章が綴られている。まるで戸谷さんの授業を教室で聞いているような、そんな気分に浸れる。

本書のテーマはSNSである。いまや私たちの日常生活に欠かせないツールだろう。戸谷さんはツイッターやインスタグラムを例にしながら、「承認」「時間」「言葉」「偶然」「連帯」とSNSの関係性について、ウィトゲンシュタインやハンナ・アレントら、哲学者たちの考え方を披露しつつ、読者を思考の沼へと誘導していく。

即座に正解が求められる世の中において、友人同士、または家族や同僚と、SNSについて話をし、互いの理解を深め合うきっかけになる1冊。
正解なんて簡単に出さなくてもいいから、まずは考えることを私も習慣にしたい。


嶋田翔伍さん(烽火書房、hoka books/京都)

「知的好奇心のトビラは、思いがけずすぐそばにある」。そんなことを強く感じる一冊でした。普段何気なく使っていて、日常のなかで当たり前になっているSNS。それを糸口に、自分の在り方を見つめ直せるのは、「自分ごと」にしやすくて読んでいて納得感が強かったです。実体験も混ぜながら優しく語りかけてくれる戸谷さんの文章がとても素敵で、楽しく読めました(「僕はSNSに踊らされてませんけどね」、みたいなスタンスじゃないのが、味方になってくれているようでホッとした)。SNSだけを語るのではなく、SNSを通して自分を考える。自分を通してSNSを考える。そうして行ったり来たりして、あいだで考えることで、ストンと腑に落ちる瞬間がありました。

この一冊は「あいだで考える」というシリーズということですが、それはあらかじめ用意された何かと何かの隙間にはさまるというではなくて、あちらとこちらがつながっているということを明らかにする知的好奇心のトビラを開くということなのだと感じました。
もしかしたら、ふといま目をやった外にいる野良猫も、なにかとなにかをつなぐトビラなのかもしれない。そう考えてみるとすべてのものは、何かとつながっていて、そこには「あいだ」があって、知的好奇心を呼び起こしてくれるのかもしれません。このシリーズのこれからの本も、手に取ってひらけば、さまざまな「あいだ」へのトビラを開いてくれそうな期待がありました。

また、普段から大好きなおふたりのデザインとイラストがばっちり効いていて、丁寧に作られた一冊なのだろうと愛おしくなりました。

***

創元社note「あいだで考える」マガジンはこちら
シリーズ「あいだで考える」特設サイトはこちら