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【ピアノ演奏】創 ハイドンを弾く ソナタ ト長調 Hob. XVI: 8

成立の背景

現在ではピアノソナタと呼ばれることの多いこの作品は、ハイドンがキャリアのごく初期に、鍵盤楽器、おそらくはチェンバロのために書いた楽曲の一つです。

成立年代ははっきりとは分かっていません。1766年、ハイドンがエステルハージ侯爵家の楽長に任じられた年に、ブライトコプフ社から発行された作品目録にこの曲が含まれることから、遅くともそれまでには成立していたと考えられるのみです。

作曲の動機や背景についても明らかではありませんが、音楽の教師として生計を立てていたこともあったハイドンが、生徒のための教材として書いたということは充分にありそうです。

ハイドンの魅力

仮に教材として書かれたとしても、そのことで作品としての価値が下がるわけではありません。実用的な目的でなされた仕事において、かえって作者の技量や個性がよく表れるということはしばしばあります。

ハイドンの音楽は、過激さを誇ることや奇抜さを競い合うことが芸術なのではないということを、いつも静かに教えてくれるように感じます。強く訴えたいことがあっても、いたずらに人を刺激するような極端な表現はしない。それでもきちんと人の心を動かすことができる。それはハイドンの音楽のすばらしい特徴です。

後年の多くの傑作、大作と比べたとき、本作はあらゆる意味で小さな作品ですが、他ならないハイドンの個性と魅力が備わった佳作であると思います。

楽曲の内容

曲は四つの楽章から成ります。すべてト長調で書かれており、テンポ、拍子、形式の違いによって、楽章ごとに異なる性格が形作られています。すべての楽章で前後半をそれぞれ繰り返して演奏するように指示されています。

第一楽章はアレグロ、4分の2拍子。小規模ながら、主調と属調の対比という、ソナタ形式の根本原理がはっきり確認できます。展開部は主調の属音の保続音で始まります(1分2秒付近および1分56秒付近)。その後一時的にハ長調を通ってト長調で半終止し、再現部に入ります(1分21秒付近および2分15秒付近)。

第二楽章(3分3秒から)はメヌエット、4分の3拍子。メヌエットは、トリオと呼ばれる中間部を挟んで主部が繰り返されることが多いですが、本曲の場合は、トリオを持たない主部のみのメヌエットということができます。

第三楽章(4分11秒から)はアンダンテ、4分の4拍子、二部形式。後半冒頭に現れる減七の和音が印象的です(4分45秒付近と5分5秒付近)。

第四楽章(5分35秒から)はアレグロ、8分の3拍子、三部形式。転調も借用もなく、ト長調のまま一気に駆け抜けるような快活な終楽章です。

三楽章から成る作品が多いハイドンの鍵盤ソナタにおいて、この曲が四楽章構成であることは注目に値します。ソナタ形式による堂々としたアレグロに始まり、緩徐楽章とメヌエットを経て、華やかでテンポの速いフィナーレで締めくくるという構成は、いささか考え過ぎかもしれないけれど、後年ハイドン自身が確立することになる古典派交響曲の様式に直結するものであるように感じます。

演奏について

私は、生まれたときから耐え続けねばならなかった苦しみを乗り越え、これからこそ自分本来の人生を生きるために、ピアノを弾いています。今回の演奏は、決して万全ではありませんが、私の人となりがよく表れていると思います。これは、どれほど悲惨な運命にも決して押し潰されることのなかった一人の男が、本来の自分を取戻すために、遂に踏み出すことのできた最初の一歩です。本当の私の姿を皆に知って欲しいという一心で全力を尽くしました。


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