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FDガイドライン2021の解説 〜処方薬③ 漢方薬

こんにちは。
いちょトレのそうちゃんです。

FDガイドライン2021処方薬の解説も、今回が最後になりました。
最後は漢方薬です。

漢方薬は、酸分泌抑制薬や運動機能改善薬のような西洋薬と比べて、
「効かない」「胡散臭い」と思われているかもしれません。
しかし、漢方薬は上手く使えば西洋薬と同じくらいに効果が期待できます。
さらに少し目線を変えることで、難治性のFD患者さんにとって漢方薬が希望の光となることすらあります。
それでは、一緒に見ていきましょう!

漢方薬
・ 六君子湯...推奨度高い
・ その他の漢方薬...推奨度弱い

ガイドラインに書いてあるのはこれだけです。
FDでは六君子湯が、漢方薬治療のファーストチョイスになることは異論ありません。
「漢方薬は、身体の強さ弱さで種類を使い分けなければならない」
という考え方がありますが、FDの人はたいてい虚弱体質ですので、初めにこの六君子湯を使えば間違いはないでしょう。

その他の漢方薬とありますが、随分と大雑把な括りだなぁという印象です。

例えば胸焼けを合併するならば半夏瀉心湯、胃の痛みが強ければ安中散、という選択肢もあるのですが、特にガイドラインにはありません。

実は漢方薬って、エビデンスが非常に少ないのです。
はるか昔の中国から伝わった学問・薬であるので、経験がものを言います。
「効くものは効く」と。
その意味では、FD領域において「人よりたくさん処方してきた医師が、良い漢方薬を知っている」と言えます。

ガイドラインを作っている先生たちは、漢方薬をたくさん処方してきたのだろう、と思われるかもしれません。
しかし、実際はそんなことはありません。
ガイドラインを作成している大学の偉い先生は(つい最近こそFD専門外来が作られている所もありますが)、これまでFD患者さんを見たことがほとんどないのです。

なぜなら偉い先生たちは、これまでがんや潰瘍の治療に奔走してきたからです。

だから、漢方薬のガイドラインは1番有名な六君子湯に限り推奨度は高めで、他については推奨度が低いというより「知らない、分からない」と言った方が良さそうです。

私はこれまでずっと市中病院にいて、毎日FD患者さんと症状を良くする方法を練ってきました。
漢方薬については、もちろん六君子湯をファーストに使います。
ただ患者さんの症状は全く同じでないので、先程の半夏瀉心湯であったり安中散であったり、場合によっては半夏厚朴湯のこともあります。

今1番注目しているのが、以前にも書きましたが難治性FDの患者さんに対する「補中益気湯」です。

「難治性」とは、通常のFD薬が効かないことを言います。
なぜ効かないのか、効かない理由があるはずなのです。

私はここ数年は、「薬が効かない体質、精神状態になっている」から薬が効かないんじゃないか、と思っています。

この体質を改善するのには胃下垂にも効くという補中益気湯、精神状態を改善するのには不眠に良いと言われる加味帰脾湯、の効果が高いと感じます。

どちらの漢方薬にも人参と黄耆が入っていて、元気が出る参耆剤なのです。

よく考えてみると、「元気のあるFD患者さん」って見たことなくないですか?!

つまり難治性のFDを治すのには、胃を良くするのではなく心身の元気を取り戻すとが最優先である。

が、これまでいろいろ考えた上で現在の私の結論です。

長くなりました。
漢方薬は、決して効果が少ない胡散臭いものではなく、もっと理解を深めていけば難治性のFD治療薬にもなりうる、夢のあるお薬です。

今日はこの辺で締めたいと思います。

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