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バックオフィス業務(情報システム部・労務部・総務部など)の未来

0.はじめに

コロナ禍によって、時間軸が数年間手前に手繰り寄せられた企業のデジタル・トランスフォーメーション。これによって、企業を取り巻く環境は大きな変化を求められていますが、事業のネタ帳#33では、その変化の中でも情報システム部・労務部・総務部などのバックオフィス業務の未来について考えてみたいと思います。

「事業のネタ帳」のバックナンバー(#1から#32)はこちら

ではなぜバックオフィス業務の未来に注目しているのか? それは、
・リモートワークの浸透
・雇用形態の多様化(業務委託、副業、BPOなど)
・利活用するSaaSの増加
・相次ぐ法改正
・コーポレートガバナンス強化の要請の高まり
などによって、企業のバックオフィス業務は従来以上に高い業務レベルが求められるようになる一方で、労働者人口が大きく減少する中、優秀な人材の採用が難しいバックオフィス業務は、需給ギャップが拡大する方向にあり、このギャップを解決するスタートアップに大きな事業機会が存在していると考えているからです。

1.情報システム部の未来

情報システム部は、大手や中堅企業を除いて、従来は総務部が兼務する形で対応していることが多かったと思います。また、これまではキッティング(PCやスマートフォンなどのデバイスに各種設定やソフトウェアのインストールなどを行う作業全般のこと)やトラブルシューティング(トラブルを解消して正常な状態にするための方法のこと)などが情報システム部の主な役割だったと思いますが、利活用するSaaSの増加や働き方の多様化に応じて、

・各SaaSにおいて、誰にどのような権限を付与しているのか?
・誰をどんな雇用形態で契約しているのか?

などを一元管理し、プロモーションや部署移動、入退社の度に権限を付与し直したり、従業員マスターを更新したりといったこれまで必要なかった業務が従来の業務にアドオンされます。それと同時に、これらの設定ミスによる個人情報漏洩などのトラブルを防止するためには、新たなシステムを構築する必要がありますが、このような"これからの情報システム部"に求められる業務は、総務部の兼務によって対応できる業務レベルを超えています。

よりマクロな視点でICT人材の在籍状況を見てみましょう。以下の図は現状のICT人材(エンジニア)の分布図ですが、日本におけるICT人材は約7割がSIerなどのベンダー企業に在籍しており、ユーザー企業への在籍は全体の約3割に留まっています。その一方で、アメリカを見てみると、ベンダー企業が約3割、ユーザー企業が約7割と正反対の分布を示していることが分かります。

情報処理推進機構「IT人材白書2017」を基に作成した総務省の資料を引用

これらの統計からも、日本においては、社内にDXを実現できるICT人材の絶対数が少なく、且つ光が当たりやすいフロント業務に希望が偏りがちであり、前述した ”これからの情報システム部" を担う人材の採用は難しくなると考えています。

この需給ギャップの拡大に、スタートアップの大きな事業機会が存在していると考えており、”これからの情報システム部"をSaaSとBPOの力で外部から支える「シスクル」を提供しているDXERや、クラウドサービスのセキュリティチェック支援ソリューション「Conoris」を提供しているConoris Technologiesに投資をしています。

2.労務部の未来

労務部は、主には給与計算や雇用保険・社会保険手続きといった定型業務と、法改正対応や労務相談、トラブル対応などの非定型業務の大きく2つに分けられます。そのような中で、前者の定型業務は「SmartHR」や「Jinger」といった労務系ソリューションを提供するスタートアップによってDXが進んでいますが、後者の非定型業務に関しては依然としてDXが進んでおらず、
・リモートワークの浸透
・雇用形態の多様化(業務委託、副業、BPOなど)
・パートタイム・有期雇用労働法(令和3年4月施行)や育児・介護休業法(令和4年4月施行)などの度重なる法律改正の流れ
・コーポレートガバナンス強化の要請の高まり
などによって、労務部もやはりよりハイレベルな業務が求められる方向に変化していると捉えています。しかし、労務領域においても、前述した情報システム部と同様に優秀人材が不足しており、社労士と顧問契約をする以外に最適なソリューションが存在しないのが現状です。

この需給ギャップの拡大に、スタートアップの大きな事業機会が存在していると考えており、労務×テクノロジーで、会社のルール構築とリスク軽減をサポートする「HRbase」を提供しているFlucleに投資をしています。

3.総務部の未来

最後に、総務部についてです。総務部は、会社で使用しているあらゆる備品の管理や、社内行事の企画・運営、契約管理、来客・電話やメールの応対など多岐に渡りますが、その中でも大きな事業機会として注目しているのが、郵便物・郵送物の管理や備品の管理についてです。これらの業務は、まだ多くの企業で紙ベースで行われており、郵送物の紛失が多発し、オペレーションの煩雑さなどのペインが大きかったことに加えて、
・リモートワークが広がる一方で、総務部メンバーだけ出社が必要になる
・EC率の向上による郵送物の増加
・障害者雇用促進ニーズの高まり
などによって、SaaSを含めた外部へのアウトソースニーズが高まると考えており、スタートアップの大きな事業機会が存在していると考えています。この領域においては、郵便物・配達物のクラウド管理ツール・遠隔管理ミニBPOサービスを提供しているトドケールに投資しています。

4.最後に

前回の私の記事(事業のネタ帳#27)では、SMB向けHorizontal SaaSが持つ可能性について書きましたが、今回はその続編ともいえるものです。

国に企業は367万4,000社(2021年6月末時点、経済センサス活動調査)存在し、このうちの99.7%を占めると言われているSMB(Small and Medium Business)。SMBは社数が多いだけではなく、デジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)の余地が大きく、SMB向けビジネス、特にHorizontal SaaSの可能性は極めて大きいと考えています。また、コロナ禍が大きく推し進めたビジネスのデジタル化や、電子帳簿保存法やインボイス制度、育児・介護休業法や改正個人情報保護法などの相次ぐ法律の制定や改正などによって、企業はビジネスの変革を迫られていますが、リソースが豊富な大企業とは異なり、SMBは個社毎に対応するのが難しいことも、SMB向けHorizontal SaaSがこれから大きく伸びると考えている理由です。

事業のネタ帳#27「SMB向けHorizontal SaaSが持つ可能性」より一部抜粋

上記は事業のネタ帳#27「SMB向けHorizontal SaaSが持つ可能性」からの抜粋ですが、時代の要請によって企業に変化が求められるにも関わらず、人材不足によって需給ギャップが拡大するTAMの大きな事業領域を、SaaSとBPOによって解決するBPaaS(Business Process as a Service)に大きなポテンシャルを感じていますし、経済活動を持続的な形に変えていくという観点でも、大きな社会的意義があると考えています。この領域に挑戦しているスタートアップの皆さん、よろしければ是非ディスカッションさせて下さい。

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