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鈴木大拙「日本的霊性」Keyword で見る

更新 2024年5月5日

 今回は、1944年(昭和19年)、大拙73才のときに、大東出版社から発行された『日本的霊性』(以下、同書)について、下表で、他の書籍と比較しながら、目立つ Keywordを拾っていきたい。書籍毎に文章量が大きく異なるので、総ヒット数も参考にして眺めてみてほしい。

 「霊性」の文字から始めよう。「霊性」は同書には754回、また、3年ほど後に発行された『仏教の大意』には172回出てくる。そして、タイトルにもなっている「日本的霊性」の文字については、同書に235回、『仏教の大意』に9回出てくる。しかし、これらを除くと、意外なことに、「日本的霊性」という言葉は、下表の作品中には全然出てこない。

 この書は真宗しんしゅうを中心に書かれており、浄土じょうど系仏教の Keyword は多く使われている。まず、「浄土」の文字は234回出てくる。他書では、「浄土」の文字は『浄土系思想論』に1000回以上出てくる。それから「親鸞しんらん」の文字は、同書に148回、『浄土系思想論』には54回出てくる。また、「一人いちにん」の文字も138回と多い。「妙好人みょうこうにん」も25回で他書になく多い。「大悲だいひ」も重要な Keyword だが45回で、『浄土系思想論』の79回、『仏教の大意』の71回よりも少ない。

 それから、他書にはあまり見られない特徴的な keywordとして「直覚」がある。「直覚」は同書に232回、『仏教の大意』に54回出てくる。後者の54回は同書より大分少ないようだが、総ヒット数比で見て、同書の総ヒット数5487回当たりに換算すると183回になり、同書に近い出現頻度になる。話は変わるが、『日本的霊性』という書の概要を一言でいうと、これは「霊性的直覚」の解説書と言ってよい。

 もう一つの特徴的な Keyword として「大地」が挙げられる。「大地」は同書に174回出てくる。総ヒット数を考慮しても、「大地」の使用頻度は下表の著作中では同書が群を抜いている。筆者はこれまで「大地」は霊性の性格を譬えたものと思っていたが、どうも違うようだ。「大地」は譬えではなくて、精神性も物質性も包含する、霊性の実働の場として語られているように思う。

 また、「超個」の文字も76回と頻出し、これも同書の特徴の一つと言える。「超個」は『禅の思想』にも78回と多いが、その他の書にはあまり見られない。更に、これが「超個己」になると、同書に42回出現しているが、下表中の他の書籍中には見えず、同書の独壇場どくだんじょうになっている。

 大拙は同書の中で日本的霊性の論理として「即非そくひの論理」を提唱しているが、この「即非そくひ」の二字は同書中に18回出てくる。また、「即非」の文字はこの時期に、他書でもよく用いられている。あと、臨済りんざい禅師の無位むい真人しんにんを意味する「真人しんにん」は15回使われていて、これも他書にくらべて多い。

 同書には華厳けごん哲学の理事無礙りじむげ事事じじ無礙の解説もあるが、華厳は30回、理事は5回、事事(事々)は8回登場する。ただし、事事は『仏教の大意』の方が多く、40回登場する。

 大拙は日本的霊性の特徴として直接性を挙げている。その「直接」の文字は同書には17回のみで、他の書籍に比べて特に多いということはない。それでも、直接性は日本的霊性の重要な性質の一つとして、同書の中で丁寧に解説されている。

 最後に、同書では「時間」の文字も多く142回と目立っている。また、大拙の時間観に「円環的時間」というのがある。これに関する Keyword の「円環」は25回と頻出している。自分の現前の意識というものは、円周のない無限大の円の中心を占めている。どこでもが中心だ。それは、時間的にも空間的にもそうなのだ。

 以上、日本的霊性の Keyword を整理した。この他、同書の要点については、別投稿の「日本的霊性 抄」にまとめてあるので、よろしければご参照ください。

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