「50円で絵を描く作家」の意味とは
先日、新大生の谷大輔くんに誘われて、新潟市北区はCROSS HARBORの中のKAMINOI BASEというギャラリーで開催中の個展に行ってきました。
主催者の谷くんのnoteはこちら↓
展示されている絵も良かったのですが、何よりもこれまでの谷くんの活動経緯も含めてとっても面白く、刺激も受けたし学びになったなぁと感じたので記事としてまとめてみたいと思います。
もしこれを読んで谷くんの個展に行って見たい方は、多分?またどこかで開催すると思いますので、是非行ってみて下さいませ。
それでは、どうぞ!
定価のない「絵を描く」という事
皆さんは絵を買ったことはありますか?
好きな方は日常的に買うことはあっても、一般的には「絵を買う」という事はそんなに経験がないのではないかと思います。
私自身も、40年生きてきて多分1、2回程度しかありません。
例えば服や食べ物や日用品は、実用的ですし、大体の相場は皆さん把握してますよね。
服屋に行けば一着大体いくらで、ラーメン食べに行けば大体いくら位だと行かなくても分かる。
つまり、一般的にその品物には共通する「定価のようなもの」がある、という事です。
それを踏まえて、絵の値段って、皆さん見当つきますでしょうか?
小さいものなら数百円というありふれた絵もあれば、有名な画家が描いた一点物で数億とか数十億とかいう名画と呼ばれる絵もあり、世界中の人が知っているあのモナリザに至っては、値段などつけられないほどの価値がありますよね。いくらお金が合っても、多分買えません。
例えば、画材と費やした時間を値段として換算するならば、いい材料で時間を掛ければ値段は上がるぞ、という事になりますが、全ての絵がそうならない事は容易に想像できますよね。
また、描かれている絵が誰が見ても分かりやすくめちゃくちゃ上手い絵が値段が高くて、パっと見良くわからないし下手な絵の値段が低いのかというとそうではないですよね。
他にも例えば自分の子供が一生懸命に描いた絵などは、親にとっては値段がつけられないほどの価値がありますが、他人にとっては価値はありません。
このように、絵というものには定価がなく、状況や対象によって価値が変化するもの、と捉えることができると思います。不思議ですね。
機能と価値
絵の機能としては
①飾る
②鑑賞する
③保有する
という感じでしょうか。その他日用品に比べれば必須でもないですよね。なくてもまぁ生きていける。
絵以外にも陶芸だったり、彫刻といった美術品と呼ばれるものは似たような機能がありますね。
①飾る②鑑賞する、という機能を満たすだけなら、そのものの価値はあまり関係しません。
自分が描いた絵でもいいし、知らない中学生が描いた絵でもいい。もちろん有名な方でも。
③の保有する、はどうでしょうか。
こちらは反対に、そのものの価値が重要になります。
我が子の描いた絵は他には代えがたい価値を持つものです。名のある画家の描いた絵は、この世に1点しかない「希少な絵」という事が世界中に広まれば広まるほど、その絵を保有する事に意味が生まれます。
一言でいうとドヤれる訳ですね。その瞬間、その絵の価値は跳ね上がる。
絵というものは「機能」をどれだけ満たしたところで上限はあるけど、そこに「意味」を付加した瞬間に上限がなくなる。
絵の機能と価値の関係性はこんな所でしょうか。面白いですよね~。
プレミアムとラグジュアリーの違い
似たような話で、以前キンコン西野さんが分かりやすく解説してくれていました。
この話しを絵に置き換えると
絵の価値を「機能」で量る場合=プレミアム
絵の価値を「意味」で量る場合=ラグジュアリー
となります。
具体例を挙げましょう。
飾るという機能の他に、例えば
「タッチパネルになっていて、TVやタブレットとしても使える機能を追加した絵」
は、元の絵の値段+10万円くらいにはなりそうですよね。
でも、100万円にはならない。だったら他のタブレット買いますもんね(笑)
つまり、その機能は他のものに代替されてしまう。
どうやっても値段の上限が存在します。
一方で、絵に意味を付加した場合。
世界的に有名なあの草間彌生さんが、亡くなったとして、生前最後に描かれた手描きのドット絵が見つかりました。
さぁ、この絵は一体いくらの値段になりますでしょうか?
「草間彌生の絵には価値がある」という事を世界的の人が知れば知るほど、もう二度と生み出されることのない最後の作品であるこの絵の価値が上がります。
このように、プレミアムなものというのは頑張れば誰にでも生み出せるものです。
最近の日本が得意なのは、機能をふんだんに盛り込んだ「より快適で便利なもの」つまりプレミアムなものだと感じています。
一方で、ラグジュアリーなものというのは頑張っても努力しても生み出せるかどうかは分かりません。
西野さんはラグジュアリーを生み出す方程式という事も書かれています。
とっても分かりやすいですよね。
ものの価値というのは、より多くの人が認知していて、かつ、数が非常に少ない事、と言えます。
前提として、そのもの自体に皆が欲しがるものだ、という事はあります。
だって私が描いた絵は世界に一つですが、誰でも欲しい訳ではありませんよね?
まぁ、そういうことです。
絵に意味が生まれた瞬間
ここで谷くんの絵に戻ります。
彼は今「50円作家」という活動をしています。
その名の通り50円で絵を書きますよ、というものです。
普通に考えて、おかしいですよね。だってちゃんとしたキャンバスに絵の具を入れて、材料費だけでも少なくとも数百円はかかります。
つまり、依頼を受けた時点で赤字確定です。
「何だ、ただの大学生の遊びか」と思ったそこのアナタ、まだまだトーシロですね!(何の?)
さて、私がお店作りをお手伝いしたnabaitaに、谷くんが50円で描いた絵が飾ってあります。
そこに至るエピソードは次の章で描きますが、誰かに依頼されて絵を描く、という事自体初めてだった谷くんが描いた絵がこちら。
ちなみに、nabaitaの食事は最高に美味しくて、オーナーである中山夫妻の人柄も含めて人気のお店です。(二人と苦労してDIYで作り上げました。ので、空間を褒めて貰えると私が喜びます)
絵を納品してからしばらくして、谷くんは久しぶりにnabaitaに行ったそうです。
(もうあの絵は飾られてないんだろうな…)
そう思いながらお店に着くと、なんとまだ谷くんの描いた絵が飾ってあるではありませんか。
そこで店主の中山くんから
「この絵を見て、お客さんから『この絵って何ですか』って大体聞かれるんだよね。それがちょっとした会話のキッカケになるから、良いんです」
と。
描かれているモチーフもそうなのだけど、このnabaitaに飾ってある絵は何ぞや?という疑問を生み出す装置に、谷くんの描いた絵がなっているんです。
これ、面白くないですか?
当然絵を依頼した中山くんも最初からそれを狙っていた訳ではなく、結果としてこの絵がそんな「意味」を持つとは思いもしていなかった。
しかも、nabaitaの店内の壁面には限りがあります。
例えば今後、他の誰かが「私の絵も飾って下さい!」と言ったとしても、既にそこには谷くんの絵があります。
壁面を土地として捉えるとイメージしやすいかもしれませんが、谷くんは図らずとも「nabaitaという人気店の壁面に自分の土地を持った」という感じになる訳です。
まぁ、何かの拍子で別の絵に変わる事もあるかもしれませんが(笑)
いやー、この話は本当に面白い流れだなぁと感じています。
きっかけは「50円で何でも屋」
谷くんが新潟に来て間もない頃は、たまに誘って二人でご飯に行っていました。
私みたいなおっさんと二人で食事しても楽しくないかもしれませんが、コロナ禍で単身寂しいだろうなと思い、お金なんてないけど先輩面して奢ったりして。
当時から谷くんは「起業したいんです」的な事は言っていまして、でも具体的に何でどう起業したいのかは全くありませんでした。
そこで「じゃあ【50円で何でも屋】でも初めてみたら?」と提案してみました。
これは私のアイデアでも何でもなく、我らがキンコン西野さんの後輩にあたるホームレス小谷さんという方がやっていた(る?)活動でして、この話を西野さんの講演会に行って聞いた時に、その面白すぎる展開に大変刺激を受けました。
そして提案をした翌日の谷くんの投稿↓
こうして新潟で何でも屋を始めた谷くん。同じキンコン西野さんのオンラインサロンのメンバーを主体に、色々な方の要請を受けてはあちらこちらへ。
子どもの家庭教師、イベントのお手伝い、石本商店でのガチバイト(笑)などなど、皆さん面白がって谷くんに色んな依頼をしていて、どんどん知り合いも増えていって凄いいいなぁと思っていました。
そんな中、一緒にnabaitaで食事に行った時に、50円何でも屋の話になり
「え、じゃあお店に飾る絵を描いてよ」
と無茶ぶりしたのが全ての始まりでした。
ここで絵を注文した中山くんもなかなか凄いのですが、これは今の谷くんが50円作家として活動を始めるキーポイントになったのではないでしょうか。
他にもNAMARAの江口さん
三条の麺屋はる(私もめっちゃ好きなラーメン屋!)
ハジマリヒロバ
と、どんどんと谷くんの絵が広まっております。
どうですか?谷くんの活動、そしてそんな谷くんが描く絵に、興味出ませんか?
是非私も描いて欲しい!という方は、谷くんに連絡してみて下さい。
あ、でも誰からの依頼も請けている感じではないみたいなので(生意気な!)いい感じに依頼してみて下さいね。
将来、谷くんがめっちゃ有名になったのを眺めながら
「谷くんはワイが育てたんや…」
とか言いながらワイン片手にドヤりたいので、皆さん宜しくお願いしますね!
それでは、また。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?