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人口減少から読み解く空き家課題

空き家の問題が語られる時に、人口減少と空き家の相関関係は良く言われていますが、実際にどの様な関係性があるのか。
それを把握する為に、今回はこれまでの日本における人口政策の観点から記事をまとめてみました。


日本の人口減少はいつから?

早速、総務省の統計データから読み解きましょう。

統計局HP/人口推移より引用
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2022np/index.html

日本の人口は1970年〜75年にかけて年間150万人増加数をピークに、右肩下がりで増加数は下がり続け2008年頃からは増加から減少へと突入していきます。ここでのポイントは、総人口は2007年まで増えてはいたが、増加数は1975年頃から減ってきていた、という事です。

人口減少が望まれていた時代

実は、政府は1974年に人口抑制政策を推し進めていたんです。

詳しくはリンク先の記事を読んでいただきたいのですが、日本としては増え続ける人口と1973年に起こったオイルショックを契機に、このままでは資源が足りなくなるのではという危機感を持ち、増えすぎる人口への対策を打ち出しているのです。

日本では、1974年7月に「第1回日本人口会議」が厚生省や外務省の後援によって開催され、「子どもは二人まで」という宣言を出している。中国で「一人っ子政策」が実施されたが、日本においても「二人っ子政策」ともいうべき宣言が出ていたのだ。

「子どもは二人まで」国やメディアが「少子化を推進していた」という歴史的事実より引用
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/d076151b3fd2ffcaff2089edea3f71e1def1a3bd

政府だけでなく、メディアも「子どもは二人まで。年130万人増は危険」「危機感足りぬ日本。現状維持には一夫婦0.7人」などという煽る見出しで記事化したようです。

その政策が功を奏してか、それ以降は見事に人口増加数が減少していく事になります。

この事は40歳以下には意外と知られていないと思います。私自身、少子化といえば中国のひとりっ子政策しか知りませんでしたし、まさか自分が生まれる前にそんな政策が行われていたとは知らず驚きました。
つまり、現在の少子化は当時の政府に望まれていた状況である、と言う事です。

統計局HP/人口推移より引用
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2022np/index.html

起きなかった「第三次ベビーブーム」

学校でも、教育の一環として「人口爆発で資源が足りなくなる」と啓蒙されており、2020年の国勢調査において生涯未婚率最高記録更新の立役者になった45-54歳の人たちというのは、1974年に小学生~中学生としてこの教育に触れて育った世代。

国の政策、メディアによる情報、そして学校教育においても「少子化を目指しましょう」という方向性を明確に打ち出していたんですね。

その甲斐もあってか、生涯未婚率の上昇と共に当然出生数は下がり続けます。
本来なら規模を抑えつつも起こるはずだった第三次ベビーブームを見事なまでに抑えすぎた事により、そのまま減少傾向が今日まで続いている、という事になります。
政府も1990年になって「あれ、少子化ヤバいぞ」という事になり、1991年にようやく育児休業法が制定されました。
この政策転換の遅れが、致命的だったとも言えるでしょう。

急激な社会構造の変化に対応できていない

政策の他にも要因はあります。

1つは経済成長のスピードが速すぎたことです。経済成長によって社会構造が急激に変わってしまい、それに社会福祉などの諸制度が追いついていません。

 共働きが主流であるにもかかわらず、保育園が十分に整備されずに待機児童が増えてしまっているのはその典型です。日本と同じように経済成長が進んだ中国や韓国、台湾では少子化が進んでいる。少子化は先進国の共通の課題です。

実は、日本は少子化を目指していたより引用
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00059/062500061/

経済成長により、家族のライフスタイルも急激に変化しました。

独立行政法人労働政策研究・研修機構HPより引用
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html

1995年あたりから専業主婦世帯が共働き世帯を追い抜き、今では共働き世帯が倍以上。
出生率や子供の数が減っているのに、保育園が足りないというニュースを良く耳にすると思います。
未だに「親二人、子二人、専業主婦」という謎の家族像が、日本社会の政策の中心にあるのではないでしょうか。

権威主義的な家族制度を持つ国で少子化が進む

2つ目は家族制度です。フランスの人口学・社会人類学者のエマニュエル・トッドさんが指摘してますが、日本のような男性優位で権威主義的な家族制度を持つ国では少子化が進行しています。

 子育ては母親の役割と決められてしまうと、共働きしながら出産や子育てをするのは難しくなってしまう。ほかには、旧ソ連圏やドイツ語圏、儒教圏などが同じ分類になります。

 一方、権威主義的な家族制度がない地域では以前から核家族化が進んでいます。共働きも多く、夫婦や地域が子育てを協力し合う風土があります。欧州の北海沿岸にそうした地域が多く、これがフランスや北欧で出生率が高い要因とする分析もあります。

実は、日本は少子化を目指していたより引用https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00059/062500061/

その国の家族制度や倫理観といった要因も、人口減少に一役買っているのではないでしょうか。
日本では当たり前の「子供を産むのは結婚してから」という倫理観も、フランスでは婚外子を保護する手厚い制度があるため結婚にとらわれず出産、子育てをするカップルが増えているとの事。
どちらが良いという話ではありませんが、常識というのは時代や地域によって変わるものだと認識しておくのは大切です。

日本にとって適正な人口とは

ここまで記事を書いてきて、ふと思いました。
現代の日本において、適正な人口って何人なんだろう?と。

検索してみたら、面白い記事を発見しました。

ちょっと長いですが是非読んでみて下さい。
この記事の中で鬼頭さんは

「日本の人口は何人が最適か。そんな質問をよくされます。10億人でもいいかもしれないし、数千万人でいいかもしれない。私はそう答えています。たとえばこのまま人口が減っていくと、労働力が足りなくなると言われますが、それは人口問題ではなくて、経済問題。人口を経済の規模にあわせるか、経済を人口の規模に合わせるかで、人口の上限は変わってきます。つまり人口というのは、絶対的に最適という数字はない。日本の歴史を見てみても、大きく見るとそのときどきの食料とエネルギーの生産量が、人口規模を決めてきたと言えますね」

世界人口から考える、日本の未来より
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20110905/282950/

経済、食料、エネルギーといった要因でその時に合った人口規模を考えて、運営する。
当たり前のようですが、それがイマイチ上手く行ってないのだろうなぁと感じました。
また「このまま人口減少したら日本の未来はヤバい!」とマイナスなイメージしか報道されませんが、私はそうではないと思っています。

当然、これまで維持できていた社会保障やインフラは維持できなくなり、生活環境を変えざるをえなくなるのは明らかです。それを前向きに捉えるか、後ろ向きに捉えるか。

個人的には、単純に人口が減るという事は個人に割り当てられる面積(土地)が増える、という事では?と考えています。
例えば空き家。今まではひと家族で一つの家が当たりまえでしたが、これからは一人が二つ、三つの家を持つ、という生活が当たり前になる可能性だってあるわけです。
現実に余ってますからね。

後は、それが円滑に行くよう制度なり政策なりを微調整していけばいいだけです。

是非、国の舵取りをしている皆様方には、ワクワクするような日本の未来を描いて貰いたいですね。

という事で、今回は人口に関する私なりの見解をまとめてみました。
次回は住宅政策の観点から記事をまとめてみたいと思います。

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