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❄️おっさんずラブリターンズ 5話感想

    劇場版での牧の「でも、今が一番、生きてる感じがするんですよね」という言葉。

     2018年の連ドラから牧は自分をないがしろにしているところがあり、自分を大切にできていないような所があると思っていました。自分の生き方、考え方、思い、気持ちというものを最優先せず、ずっと誰かのそれを優先して来たからです。それは牧の美徳であり愛情だと思います。

   5年をかけて自己肯定感が低かった彼が、春田によって自己肯定され、自分に存在価値があると思えるようになった。自分の力で立ち上がり、自分の力で何かを勝ち取り、自分の力で夢を掴む喜びがやっとわかって来て、生きている喜びを実感した劇場版でのラスト。リターンズでは仕事でもプライベートでも充実し、自信に満ち溢れた表情が全面に出るようになっていました。

    『俺って変ですよね』という牧の投げかけにも、「全然、変じゃないよ」と打ち返してくれる春田。そうやって牧は春田の愛によって変えられ、春田の存在に支えられて来たのでしょう。自分は確かに春田に愛されていると、それを確かめるためでもある結婚指輪をとても大切にして来たのだと思います。

    ですが自分の心の拠り所にしていた大切な指輪を失くし、部長から自分の弱い部分を攻められることで、ないまぜになった感情が爆発してしまった。劇場版でもそうでしたが、牧は自己防衛のために自分の硬い殻に閉じ籠りがちです。外部からの刺激によってやっと本音を吐き出すことが出来る。

    醜態を晒した恥かしさと、指輪を失くしてしまった罪悪感と、旅行は二人きりで行きたかった不満と、春田を心配させてしまった申し訳なさと。ずっとプライドで蓋をしていた胸の裡のモヤモヤが一気に吹き出してしまった。そしてそれを揺るぎない大きな愛で受け止めてくれるのが春田の存在です。

    個人的に劇場版の喧嘩のシーンは、炎の告白のシーンの次くらいに好きです。それは春田の牧への深い愛が感じられるからです。普段から何でもひとりで抱え込もうとする牧に対して「じゃあもう一生、ずっとひとりで抱えてろよ!」と真正面からぶつかり、逃げ場を失った工場跡地で『いいです、春田さん先に行って下さい!』と自分をないがしろにする牧に対しても無理やり前を向かせ、「そんなんより、牧の方が何万倍も大事に決まってんだろ!」と叱責する姿にも、真っ直ぐな彼らしい愛情が感じられます。特に劇場版の喧嘩のシーンは春田の傷みが剥き出しになっていて観ていて本当に辛いです。

    お互いに隠し事はやめようね、と約束した二人。自分に心を開いてくれない牧に対する苛立ちや悲しみ、自分を頼ってくれない牧に対する焦りや寂しさ。牧が自分をないがしろにすることは春田にとってとても辛いことなのだということをわかって欲しい。春田に甘えて頼ることは恥かしいことでもカッコ悪いことでもないということを分かって欲しい。愛するがゆえにひとりで抱え込んでしまう牧に対し、春田は愛する人と楽しい時も大変な時も分かち合いたい、そう願う人なのだと思います。だからこそ牧の身勝手な行動に腹が立ったのだと思います。

    劇場版では意地を張ってしまった牧がリターンズでは素直に『ごめんなさい』と謝っていて、それがとても愛おしかった。「ごめん、バカは言い過ぎた」「ほら、風邪引くから…バカ!また言っちゃった。ごめん」と律儀に謝る春田も愛らしかったです。

    自分はドラマを見ている時から、春田を見ていると泣けて来る時がありました。彼は一人っ子で寂しい思いをたくさんしたのだろうな、暗闇が怖いのも物理的なものだけではなく、精神的な闇を抱えているのかな、と思っていました。

 ジャスにお兄ちゃんみたいと言われ、まんざらでもない顔をしていた春田。兄弟や家族というものに強い憧れを抱き、小さい頃には家族のような鉄平兄やちずと一緒にご飯を食べたりしたのかな、と想像したり(それは夏祭りの言及でも暗示している)、ドラマで食事のシーンが出るたび、牧と美味しいご飯をモリモリ食べて、笑いあったり、喧嘩したり、他愛のないことを話しているだけで泣きそうになっていました。人の食というものは幸せの象徴だからです。

 春田の味覚が子どものままなのは、春田ママが忙しくて春田の好きなものを与えて続けていたからかもしれないし、春田もまた自分の寂しさを紛らわすために自分の好きなものだけを食べて育ったからだろうか、などと思いを馳せていました。

   だから春田は〝孤独〟に対してとても敏感なのだと思います。劇場版でもジャスの中の〝孤独〟にいち早く気付いた春田。ひとりで食べる食事の虚しさや寂しさも人一倍分かっているのだと思います。だから部長にも声をかけた。彼にとってはただ、当たり前のことをしただけなんだろうと思います。牧が不満に感じているのを全く分かっていないわけではないのだけれど、それでも放っておけないのだと思います。そんなおせっかいで世話好きな春田を好きになり、愛した牧。

    5話の中で一番好きだったのはこのシーンです。劇場版での夏祭りも熱海の新婚旅行も春田が思うよりずっと、牧は楽しみにしていたのだと思います。そもそもホームパーティーが好きではない牧と、みんなと一緒に楽しく!がモットーの春田、その微妙な価値観のズレと温度差がマリッジブルーに繋がるのだと思うと、6話は少し切ない回になるのだろうなと思っています。

   でも、そうやって二人は深い部分で〝家族〟になって行く。田中さんと林さんはそれを巧みに演じ分けていて、確かに春田と牧はこの4年間、私たちと共に生きて来たと思わせてくれる。それだけで本当に胸が熱くなります。6話は涙なしには見られないですね。今からとても楽しみにしています。




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