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絣ティッシュケースのこと

家具デザイナーの稲垣巌さん(Inagaki design works)がデザインを、松藤良子さん(ぬいものやリアン)が縫製を担当した、久留米絣のティッシュケースが完成しました。(冨永はコーディネーターを担当)
表地に柄を、裏地に無地を使用した2枚仕立てで、家具を手がけてこられた稲垣さんらしさが光る、かっちりとシャープさのあるデザイン。縁の部分には着物の〈半襟〉をイメージしてちらりと細く覗く裏地が、表の生地とのコントラストを作っています。この特徴的なデザインを松藤さんの工夫と丁寧な縫製で実現したのが今回のティッシュケースです。

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はじまりは、簾と久留米絣

稲垣さんが久留米絣の商品開発プロジェクトに着手されたのは、2020年10月も終わり頃のこと。
広川町には伝統的な製法の〈八女すだれ〉から現代のインテリアに合わせた簾のブラインドまで幅広く手がけている会社、株式会社鹿田産業があります。その鹿田産業からの依頼でデザインした、簾を使ったティッシュケースの一部に久留米絣を取り入れたい。そう考えた稲垣さんから、地域おこし協力隊として広川町に移住していた私の元に連絡が入りました。

私自身もそれまでの活動の中で、久留米絣についてもっと様々な人に知ってもらいたい、と考えていたところでした。そのために、現在の主力商品である洋服以外にも、久留米絣を使ったインテリアや小物製品を開発して生活の中に絣を取り入れてもらうきっかけを作れたら、と思っていたのです。
しかし、これまでに経験のない商品開発にどうやって取り組んだらいいのか。途方に暮れていた私にとって、稲垣さんからの提案は願ってもないものだったのです。こうして、久留米絣の商品開発プロジェクトは動き始めました。

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家具職人としての経験があり、自ら木材を使ってものづくりができる稲垣さんですが、布を主要な素材としてデザインをするのは初めてのこと。木とは特性も剛性も全く違う布素材、しかも久留米絣は着物の反物幅の37センチを基準にした〈小幅〉の織物であるというサイズの制約もあります。
まずは絣について知りたいと考えた稲垣さんと、地域の織元さんを繋ぐのが私の最初の仕事になりました。
染色や織りといった製造の現場や、布の質感、厚み、柄などについていくつかの織元さんに足を運んで見学するうちに、稲垣さんの構想していたデザインが実現できそうだ、という手応えを掴むことができました。

欠かせない縫製の技術

次に必要になるのは、デザインを形にするための制作作業です。一度は地域の縫製会社に打診してみたものの、良い返事はいただけませんでした。
久留米絣を使う商品は、できれば製造までこの地域で行いたい。素材の輸送などの利便性はもちろんだが、布地から完成まで地域の中で作られる商品であることにこだわりたい、という稲垣さんの意向を受けて私の心に浮かんだのは、筑後市にアトリエを構えて活動されている松藤さん。Kibiruとも色々とご縁があり、何より大の絣好きで、オリジナルの久留米絣商品なども制作されています。
新しいお仕事を始められたばかり、とは聞いていたので恐る恐るご連絡してみると、快く縫製担当を引き受けていただけました。

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簾を使ったティッシュケースは、簾部分の取り付けなどに苦心したものの、松藤さんの丁寧で精巧な縫製によって2021年1月に無事完成。

絣ティッシュケースの制作へ

次なる商品として取り組んだのが、今回の絣ティッシュケースです。
コロナウイルスの感染拡大により対面で会えない時期もありましたが、チャットアプリやオンラインでも打ち合わせを行い、それをもとに松藤さんに試作を重ねてもらい、完成に至ることができました。

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下川織物の多彩な絣

今回使用したのは八女市の久留米絣織元、下川織物の生地です。下川織物の3代目・下川強臓さんは、「ローカルに作りグローバルに届ける」とのコンセプトを元に国内外のアーティストや企業とも積極的にものづくりを行っている織元さんです。(詳しくは下川織物のホームページをご覧下さい!)
下川織物には今回使用した七宝やアラレといった古典柄をはじめ、本当に多彩な色柄が揃っています。さらに、地域で最も早く無地生地の制作を始められただけあって、無地の色味や糸の種類といったバリエーションも驚くほど豊富なのです。
4月に下川織物を訪問し、3組の生地の組合せを時間をかけて選びました。たくさんの生地に囲まれつつ、ああでもないこうでもないと相談し合う、大変楽しい時間でした。そして、6月に松藤さんの縫製によって〈絣ティッシュケース〉が完成しました。

今後は、他の織元さんの生地を使用した同シリーズの制作を続けていく予定です。また、久留米絣を使った様々な小物やインテリアのデザインが稲垣さんの胸にはあるようで、一つ一つ形になっていくのが楽しみです!

絣ティッシュケースの販売について

〈絣ティッシュケース〉は稲垣さんのショップArun(福岡市中央区荒戸1-1-21)で、または同店のホームページから購入することができます。
気になる方はぜひリンクからご覧いただけたらと思います。

絣ティッシュケース:下川織物

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絣ティッシュケース:野村織物

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絣ティッシュケース:坂田織物

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絣ティッシュケース:久保かすり織物


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