たわごと

つまりね、あたしはいつもいつもあたしってものがわからないの。あたしは死ぬまで、最期まで、焼かれてちっぽけな骨になってしまうまで自分のこの顔を正面から見ることすらできない。あたしが自分について知っている(と思っている)瑣末なことのどれにどれだけの意味があるだろう?人から見たあたしはたぶんその人それぞれ違うはずで、そしてそのどれもが本当で本当じゃない。あたしが思っているあたしだってきっともっと不確かで、あたしはぶよぶよと不定形でどんどん気が変わるしなにもわかってなんかいない、ねえこの先何十年こんな得体の知れない肉体引きずってどこまでいけるっていうの、あたしが考えることの全ては無意味、あたしは、「あたし」とあたしが思ってるこれは、結局のところ何かの間違いでこの醜い馬鹿みたいな地球に生み出されてしまった滑稽な猿にすぎなくて、あたしのたかだか何十年の生涯になんの意味もないの、きっといまからエジソンにもジャンヌダルクにもなれない、あたしは……

ちっとも馴染みのない知らない土地を這って走っていくみじめな各駅停車で長時間移動しているとだんだん肉体と魂が乖離していくのを感じる、あたしがどこにいるかになんの意味もない、あたしは、結局この意識そのものがあたしだ、古い古いSFみたいにね、脳みそだけ培養してそれでも思考が存在するならそれはきっと「あたし」なんだろうな……

とにかくどうにもこうにも動かない人生のギアを入れたいの、別のところに行きたいの、後悔しないでいたいの、あたしが怖いことは結局ただの人間になってしまうことでいつも絶望しているのもそのことであたしはただの凡庸な人間でしにたいしにたいそれすらできないつまらない人間。どうしてなにがそんなにこわいっていうんだろう?だけどこわいの、足がすくむの、どこにいけばいいかわからない、なにをしたらいいかわからない、踊り方なんて知らなかった、みじめにただ誤魔化してきただけのあたしの二十年ぽっちの人生。傷つけた沢山の人たち。



本を買います。たまにおいしいものも食べます。