見出し画像

きれいな終わりなんか無理かも

全部が間に合わせみたいに粗雑に体裁を整えただけのチェーンの喫茶店で面倒そうな顔の若い男の子が淹れてくれた400円ちょっとの紅茶に手をつけず冷めていくままにして目を閉じて好きなバンドのアルバムをループ再生にして自分で自分の身体を抱きながらどこか世界に溶けていくような気持ちになる。周りの煩いざわめきを音で搔き消しながら混ざっていくのはどこか通勤電車の中で居眠りをすることに似ていて、わたしはときどき目を開いては自分の体が横に移動していないことを思い出して安心する。なんだかいつでも乗る電車を間違えて、降りる駅を間違えているような気がするのだ、いつまでたっても確証が持てない。自分が選んできたことすべてが間違いだというような気さえする。わたしをかろうじてわたしでいさせてくれるのはただわたしの愛するすてきな人たち。彼/彼女らに恥じないようにイケてるわたしでのらりくらりと楽しげにしていたいだけなんだけどな。好きな映画をぼーっと羅列していたらわたしやっと気がついたことは、世界に馴染めない人たちが痛くてつらくてきらきらしい幻みたいな、無理やり積み上げた積み木みたいな危なっかしい二時間の後で結局世界を全部裏切るような映画や本やなんやかやが好き。「二時間観て結局この二時間に意味がなかったような映画が好き」ってずっと言ってきたんだけれど、もしかして結局最後になっても迎合しない、できない、世界を捨てて逃げてしまう、世界そのものを殺してしまう、そういう身もふたもないものが好きなのだな……わたしの人生もそうであるような気がするよ。「あなたがいてくれたからわたしの人生これでいいや」って最上級の呪いでしょう。わたしはこの世界の誰にもそんな呪いをかけたくはなくて、わたし自身の生を全うして死にたい。遺伝子引き継いで自分の分身に託して終わりなんかずるいじゃんそんなの。結局いつもぐるぐる同じところに戻ってくる。はやく欲望全部充して贅沢な退屈持て余してえな。こんなに素敵なあたしがこの世界のここにいることはやく気がついて迎えに来てよ。世界で二番目に幸せにしてあげるから世界一幸せにして。

本を買います。たまにおいしいものも食べます。