大阪のおばちゃんが教えてくれたこと
大阪に来ています。
日差しをもろに浴びてしまい、頭がクラクラ。これが熱中症なのかしらんと、なんとか仕事を終え、向かった先はリーガロイヤルホテル。
お目当は一階にあるバー。その名も「リーチバー」。
日本民藝運動に大きく貢献したバーナード・リーチをモチーフにしたバーで、ここには、河井寛次郎や濱田庄司の作品が展示されている。
そこはBGMが全くない無音の場所。バーテンの身のこなしはあくまで静かで、僕は店内の奥、棟方志功の版画をじいっと見つめていた。
少しすると、店内が少しずつ騒がしくなってきた。こちらでは大阪のおばちゃん三人組、タバコを吸いながら楽しそうに話している。あちらでは姉さんと子分、ビジネスの話をあっけらかんと。
さっきまでの静寂はどこへ。まったく、彼らはこの民藝品の素晴らしさを知らないんだな、静かに空間を楽しめないものかね、と思っていたが、はたと気付いた。
元々民藝運動とは、鑑賞品としての「作品」ではなく、普段使いの「道具」の中に美がある。という思想じゃないか。
だから、このバーの使い方も、うんちくや能書きに縛られるのでなく、その場の会話とお酒を楽しむことが本来的。作品ではなく、あくまで道具、ということなのかもしれない。
大胆に釉薬をかけたスリップウェアに、これぞ民藝!なんてわけ知り顔をしていたけれど、その場所やものが自然と愛されている状況こそ民藝なんだと、ひとり納得した。
それにしても大阪のおばちゃん三人組、ねえあの二人、絶対不倫だわよ、なんて大きな声で話すのはちょっとやめてくださいね。
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