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Unite Tokyo 2019【2010年代のUnityイベントマネージャー回顧録 vol.1】

こんにちは染谷翔です。ゲーム開発用ソフトウェア「Unity」の日本国内の販売、サポートを行っているユニティ・テクノロジーズ・ジャパンで2013年から2023年まで、足掛け10年ちょいイベントマネージャーをしていました。

僕のしていた仕事というのはゲームやコンテンツ開発と違ってその多くが形に残らず、人々の記憶の中にしか残らない仕事だったので、ここでは当時の活動や実績を記録しておこうかなと思います。

また、国内で1日2000名を集客する技術カンファレンスを取り仕切る立場の方はそう多くはいませんよね。一応僕はそういう仕事をこなしていて、直接的な(地味な)仕事のノウハウや経験談はあまり記事にできないと思いますが、今後同じような立場になる方がいれば知見のかけらにでもなれば幸いです。

2010年代のUnityは、スマートフォンアプリの台頭やそれに伴うゲームエンジン流行の大きなうねりの中で、他社ではあまりやらないようなとんがった施策や奇策・珍策を打ち出していた時代でした。

注)私は2023年に同社を退職していますが、知られてはまずいような話を暴露したり、同社を貶める意図は全くありません。イベントやPR活動として公になっていた活動や事象を改めて説明したり、秘匿する必要のない楽屋裏話や個人的な感想、思い出語りをしていきます。もし記事や表現に不都合や不快に感じられるものがあればただちに修正、あるいは公開停止を検討いたしますのでご一報ください。


Unite Tokyo 2019

UniteというのはUnityが年に1回開催していたUnityユーザーのための技術カンファレンスイベントです。日本のみならずUnite Los AngelsとかUnite Shanghaiとか、Unite+都市名というブランドで各国で開催されていて、Unite Tokyo(旧Unite Japan)は2013から2019まで通算7回開催されました。

来場者数は年々増加しましたが、ざっくり言えば1日約1200~2000人で、2019年の関係者を含めた総参加者数は2日間でのべ5000人という国内屈指の規模ともいえる技術イベントでした。そんなUniteのイベント運営責任者として僕はユニティ・テクノロジーズ・ジャパン(以下UTJ)で働いていました。

Unite Tokyo 2019は、幸運なことに内外からすこぶる評判が良かったです。Uniteのみならず、国内の技術カンファレンス系イベントで最高に素晴らしいイベントにできたと胸を張れるものになった――とか言うのは正直気が引けるのですが、数字の上でも証明されているので一応言わせてくださいw

瓶ビール片手にパシャリ。技術カンファレンスかくあるべし(?)

この年に限らず、Unite Tokyoではお祭り感を出す、参加者の熱量を上げることを重視していました。技術カンファレンスの目玉は「講演(セッション)」であり、ゲーム開発で使われるテクニックや開発事例の紹介など、要するに仕事のためのお勉強です。しかしお勉強だけの技術カンファレンスは熱を生まないのです。

お勉強タイムである技術講演

講演する方も参加者として来る方も、多くはゲームの開発者であると同時にゲーム好きな方々であり、その中心にいるのはUnityが好きなファンやインフルエンサーです。立場や状況は違えどゲームやゲーム開発が好きでクリエイターになったのだ、という方が多かった。

クリエイターが集まるお祭りに参加したら知り合いの開発者仲間と挨拶できて、難しいけどタメになる勉強にもなって、夢を見させてくれる発表やトークを聞いて、ついでにお土産でも貰って帰れるような体験をプレゼントできたら、これからもUnity使って良いものつくっていこう!という気持ちになれるんじゃないかなと。そんな思いで僕はイベントの設計や運営をしていました。

UnityファンのためのグッズショップはGDCを参考にしました

日本担当部長を務めていた大前広樹さんは「Uniteはお客さんにUnityの少し先の未来を見せる」ことを口癖のようにいつもテーマにしていました。単にお勉強だけでは会場のUnityファンや参加者の皆さんの熱量を上げることはできないのです。ワクワクしてもらう、楽しんでもらう、Uniteではそういう要素を講演でもイベントコンテンツでも常に意識していました。

雲丹亭神社に並ぶ方々。何の行列なのかはまた別の機会に

講演のラインナップからイベント内の出し物まで、お楽しみ要素のようなものがたくさん散りばめていました。2019は(2018の反省から)時間をかけて準備することができ、多くの方のご協力と過去のノウハウを十分に活かすことができたから成功――参加者、講演者、出展社、UTJや運営スタッフまで会場の皆さんを熱狂させることにつながったのだと思います。

前置きが長くなりましたが、まずは評判の良かったというUnite Tokyo 2019の要素のひとつひとつを、裏話とともに書き残していこうと思います。まずは1つ目のトピックから――。

無料のフード

基本的に、多くの人は多少辛いことやナーバスなことがあっても、美味しいものを食べたり楽しくお酒を飲めると気分が晴れやかになります。さらに無料の飲食で、見た目も味もまあまあイケてるとなれば相当の満足度を与えることができます。食は大事というわけです。(まあチケット代を頂いているので厳密には無料ではないのですが)

Unite Tokyo 2019では開催の半年以上前から会場のホテルと交渉して、Unityロゴの焼印を入れたメニューや、ロゴの入った紙皿やカップを活用できるフードを惜しみなく企画して投入しました。あれだけの特製フードを無料でぶち込んだ国内の技術カンファレンスは「他にない」と思います。

まあお金もかかるしねー。メシ食わせたらライセンスが売れんのかよ、と冷静なツッコミが飛んできそうですが、要するにライセンスを売るためのイベントじゃないんですよね。Unityファンを熱狂させるためのイベントなんだっ!

要するにコアなUnityファンと、それを取り巻く普通のUnityユーザーやゲーム開発者の皆さんが「Unityってええな、これからも頑張ってUnityでゲームつくって人生サクセスストーリーにしてこ!」と感じてもらうことを大事にしていました。Unityライセンスを使い続けてもらうにはクリエイターの皆さんに「毎日毎日仕事や会議でつらいなぁ、しんどいなぁ」とかクヨクヨされてるわけにはいかないんですわな。

それは主催側のUTJのメンバーの皆さんも同じなんだよね。うおおおぉぉぉなんかすげぇ盛り上がってる!?こんな集まりを我々つくっちゃってる!?お客さんがたくさんいて楽しんでる!?自分も楽しんどくか!とか、参加者も主催者もそういう気持ちになってもらえるならタダメシぶち込むぞっていう、そういう意図がありました(よ、予算が……ゲホッ)

スタッフにまじってエプロンと帽子を着用して満足げなUTJのKさん

ORTO ICHIHARA

フードの企画や飾りつけにはORTO ICHIHARAさんに全面的にプロデュースいただきました。市原さんはまじですごいです。

マルシェ風カーゴにロゴ、花束にライトやガーランドを散りばめて。すごいこと考えるなー
バナナが低コストで腹持ちもいいので数を出そうと思うんですけど綺麗に並べられないですかね?ということでこんな映える形に

本当にね、フードやケータリングを通して「お客さんにどういう気持ちになってもらうか」という根っこの部分からすごく考えて企画してくれます。ただのケータリング屋さんじゃないんだ。コンサルなんだ。

毎回用意してくれる素敵な提案書。ワクワクするよねー
僕の希望で(当時)大ブームだったタピオカミルクティーをロゴ入りカップに入れて出してもらえました。ちゃんとウケてた
ロゴ入りの厚焼き玉子串を用意するアイデアも市原さん

メニューや飾りつけの多くは市原さんとそのスタッフの方の貢献によるものです。他のイベントでもたびたびお世話になりました。コツとしてはカップや串、フードの容器やケースなど小物にロゴを入れて綺麗に並べることですね。低コストで大量に量産ができ、調理を工夫する必要もほぼありません。

これはUnityユースクリエイターカップの本選出場者をお招きしての前夜祭。SYNC 2022で余ったラムネを放出しました。照明の使い方がうまい
華やかなクリスマスパーティーイベント
紙皿やナプキン、おしぼり。余った在庫は別イベントで流用していました

ちょっと予算をかけた懇親会とかパーティーやるなら、素晴らしい仕事をしてくれるので依頼してください!!(これインスタから申し込むのかな~、間違ってたらスミマセン)

とりあえずフードについて総括しようと思っていたらORTO ICHIHARAさんの神対応の話だけで長くなってしまった……次回に続きます。

(記事協力:谷川 敬章)


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