見出し画像

数学の先生

めっちゃわかってんけど!!!って言い回って帰ってったあの子は元気かな。もう高校も卒業して、大学生になっているのかも。

数学が苦手な私が、数学の先生になった。
授業はいつもはらはらしていて、生徒が解いている間に必死で問題集の解説を読んでいた。
あ、目を離してたら消しゴムで遊んでるな。椅子でぐるぐる回らないよー。

3平方の定理は、斜辺の2乗=底辺の2乗+高さの2乗。まず公式をチェック。じゃあこの問題やったら… も〜言わんといて!自分でやるから!あ、じゃあやってみて。…手が止まってる。斜辺はどこ?そう斜めになってるところ。そう合ってるよ。すごいできてるやん!

言わんといて!の気持ちがすごくわかる。人の説明を聞くのはしんどい。それがわからんって言ってるやん。
解説を自分で読んで理解できれば苦労しない。

家から近くて、シフトが自由で、選んだバイト先は2対1の個別指導塾。勉強が苦手な子が集まる場所。

もう片方は、まず座ってない。体勢めっちゃ斜めやけど、まあやろっかー。ああ、塾長に注意された。ほら、問題集開いて!宿題やってきた?
…うん、部活大変やったのはわかったわかった。え、なんかすごい怪我してるやん(笑)

一息喋り終えて、ちょっと落ち着いたところで始めようか。聞いてもらおうと、つい躍起になってしまうのはこっちも向こうも同じだな。いや私は数学やるために焦ってるのよ。

すらすら話せる得意な人が、先生になると思っていた。
自分が苦手だったから一緒につまづきながら、説明ができると気づいたときにはびっくりした。

答えちがうな〜だいたいそういう計算は途中まちがってるんやろうな〜。あ、ここミスじゃない?テスト明日やけど、これ解けたら点数取れるやん!
数学は意外にシンプルだと思った。わかったら解ける。喜んでくれる。

得意科目は英語だったはずが、気づけば数学の授業ばかり当てられるようになっていた。
シフトが自由なバイト先は、どの生徒を担当するのか当日までわからない。そして今日の単元もわからない。小中学生の範囲とはいえ、私は数学が苦手なのに!

着いてから急いで前回の引継ぎを読む。問題集忘れたと言われコピーを取りに行く。明日テストと言われる。解説と見比べて、なんとか間違えない方向に持っていく。計算ミスを発見する。直してもらう。寝てたら起こす。
一コマでくたくたになる。

そんなアドリブの日々(?)の中で、気づけば数学の復習が終わっていた。
ちょっと落ち着いてできるようになった。

あ、受験問題持ってくるのね、こんな図形わからんな…
またはらはらしながら解説を読む。繰り返し。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?