置き手紙

急に居なくなってごめんね。
自分でも、なんの前触れもなかったって思うから、君はなおさら突然に感じただろうな。
でも、私のなかでは急に思いついたわけではなくて、ずっとずっと前から考えてたことだったんだよ。

君は私をすごく愛してくれたなって思う。
愛されてるなってずっと思ってた。
私は幸せ者だなあと思ってた。
そう、幸せ者だなあと思ってたの。
あるとき気づいちゃったんだ。
実際に、幸せだなあって思ったことあったかなって。

付き合い始めた頃は私ばっかりが君のことを好きで、君はそうでもなくて、けっこうひどいことをされたよね。
「俺は君を幸せにできないよ」なんて言われたこともあったな。
でもそれでよかったの。
幸せにしてほしいなんて微塵も思ってなかった。
一緒にいられるだけで幸せだったから。

この話をすると君は嫌な顔をすると思うけど、これが最後だから少し我慢してね。
君が他の人を好きになって、二股をかけていたことがあったよね。
その頃からかな、私は君をじわじわと愛せなくなっていったんだ。
もう一度好きになる努力はしたんだけど。
好きだったから許したのにね。
今まで好きなふりしててごめんね。

君は「好きだから一緒にいたい」ってよく言ってたよね。
私に予定があっても、1人になりたい気分だったときも、離してくれなかった。
君が手をつなぎたいときは、暑くても握りしめたし、寒くてもポケットから私の手をひっぱり出した。
君が私を抱きしめたまま寝てしまったときは、力が強くて私は身動きがとれず寝返りを打つのを我慢したりもした。
愛してくれてるからだって理解はしてた。
でもよく考えたら、こんなことをしていて好きになれるわけなかったんだ。

君は私が嫌がっていても、私にしたいことをしてきたよね。
好きだからこそそうしてるんだって理解していても嫌なものは嫌だったよ。
私は誰かを好きになったら、相手のしたいことを叶えてあげたい。
相手の嫌なことはしない。
そのなかで「一緒にいたいって思われたい」「手をつなぎたいって思われたい」「抱きしめたいって思われたい」と考えるんだと思う。
根本的に考え方がちがうと思った。
君とは合わないなって。
5年も付き合っておいて合わないなんて冗談みたいだけど本気でそう思ってるの。
私は同じ考えの人と一緒になりたい。

よくばりな私をゆるしてね。

さよなら。