想梛

名前は「そうな」と読みます。小説・ポエムを書いています。拙い文章ですが読んでいただけた…

想梛

名前は「そうな」と読みます。小説・ポエムを書いています。拙い文章ですが読んでいただけたら嬉しいです。スキを付けてくれる方、フォローしてくれる方、励みになります。ありがとうございます。プロフィール画像と背景画像は両方とも渡辺美優紀(みるきー)さんという芸能人の方です。

最近の記事

仕事をやめたときの話

仕事をやめた。 私にしては長く続いたほうだったが、いつも通り円満退社とはいかなかった。 一度くらい笑顔で見送られるやめ方をしたい。 寄せ書きとかほしい。 そんなわけで睨まれながら仕事をやめた日、ヤケになって、ケーキなんか買って帰って、家にあった瓶の梅酒(貰い物のちょっといいやつ)をラッパ飲みして、そのままストッキングも脱がずに倒れ込んで床で寝て、気付いたら朝。 それが今。 着ていたスーツはしわだらけ。 コンタクトレンズを付けたままだった目は乾いてしぱしぱ。 化粧もし

    • changes

      思い切って髪型を変えた。 私はとにかく地味で、クラスに居ても居なくても気付かれないくらい地味で、普段は同じように地味な友達としか話さないで過ごしている。 それでもこんな日には派手な子たちに話しかけられることもある。 「思い切ったね〜」 「ね〜!かわいい〜」 「イメチェン?」 悪気がないことはわかっているのに、笑われているような気がしてしまう。 半笑いの彼女らに、ヘラヘラ笑い返して「う、うん、そうなの」とか言って。 変えたかったのはこの性格のほうなのに。 髪型くらいじ

      • 宵、酔い

        そんなに飲めないのに、お酒が強いメンバーの楽しそうな輪にまじりたくて、気まぐれで来たサークルの飲み会。 乾杯のかけ声と共に後輩たちが乾杯回りを始めた。先輩全員と乾杯を交わすまで席を移動し続けるのだ。 私は最高学年だったので、同期との乾杯をしたあとはベルトコンベアみたいに回ってくるグラスにカチカチやって過ごした。 飲み会はとても楽しかった。 普段はビールは一杯だけで、あとはアルコールか定かでないジュースみたいなのしか飲まない私が、今日は日本酒やワイン、焼酎に口をつけるので周り

        • セフレの話

          私にはセフレがいる。 いや、実際はセフレですらないのかもしれない。 頻繁に泊まりにくるけれど、来るたび抱かれるわけではない。 ただ2人並んで寝るだけの日もある。 「こっちきて、はやく」 ベッドに腰掛けた彼が、私を見ながら照明のリモコンを振る。 長い腕だ。 そんな何でもない仕草にまで見とれそうになる。 が、それを堪えてベッドに近づく。 手をかけたところで部屋は真っ暗になった。 途端に腕を引かれ、少し乱暴に押し倒されて、首から胸に何度もキスを落とされる。 今日はするのか

        仕事をやめたときの話

          さくら

          平日はいつも5時に起きてる。 けどその日は8時にアラームをかけた。 8時半くらいに会社に電話をかけて、自分で首を締めながら体調不良を訴えた。 「大丈夫?具合悪そうだね」って先輩が言った。 ぶっちゃけ大丈夫だったけど「ちょっとキツいです、ごほっごほっ」って答えた。 休みをもらって電話を切って、おやすみモードにして二度寝した。 昼に起きたけど、会社からの着信履歴が山のようにあったからまた寝た。 実のところ、ここまではここ1週間同じことをしていて、今日もそのまま夜が来ると思ってた

          さくら

          夜寝られないときとかに思いたって書きに来るから、朝までに書ききれなくて、下書きに書きかけが溜まっていく…

          夜寝られないときとかに思いたって書きに来るから、朝までに書ききれなくて、下書きに書きかけが溜まっていく…

          7/7

          学校の授業が終わった。 一緒に授業を受けていた友達が一斉にテキストを片付け始める。 学科の友達の中でサークルに入っていないのは私だけらしい。 足早に去っていく皆を見送った私は1人、大学から1番近いハンバーガー屋に向かった。 ポテトとアイスコーヒーを注文し、お会計が終わると同時に商品の乗ったトレイが差し出される。 フロアを見渡し、空いていたテーブル席についた。 まずはアイスコーヒーを一口、それからポテト数本を口に放り込んで鞄からレポート用紙を取り出す。 毎週土曜日に提出

          足湯に行きたい

          ちゃぷ…ちゃぷ…。 ちゃぷ…ちゃぷ…。 「ねえー!そっち行ってないー?」 なにか失くしたらしい姉が遠くで叫んでいる。 「来てないよ〜…」 一応ぼそりと答えた。 聞こえてないだろうけど。 ちゃぷ…ちゃぷ…。 どんくさいのだ、姉は。 せっかく2人で旅行に来たのに、探し物で足湯すら堪能できない。 温泉に行きたいと言ったのは姉だ。 ストッキングを履いてきたくせに、足湯に寄っていこうと言い出したのは姉だ。 脱いでくるからと公衆トイレに行ってしまうから、私は仕方なく1人

          足湯に行きたい

          うわ、下書きにしてたつもりなのに公開しちゃってた

          うわ、下書きにしてたつもりなのに公開しちゃってた

          いいんちょ

          なんとなくそんな気はしていた。 「おはよ!」 「お、おはよう」 下駄箱にローファーを入れるところだったらしい高橋に遭遇。したものの挨拶だけして立ち去ろうとする高橋。 「行っちゃうの?!」 本当にそのまま行ってしまった。 ずっとこんな感じだった。3年間。 「いいんちょおはよー」 「おはよー」 私は学級委員長をしている。だからか、あまり仲良くないクラスメイトでも挨拶してくれる。 女子グループに埋もれながら教室に入る。 真ん中の列、前から2番目の席に高橋はもう座って本を

          いいんちょ

          置き手紙

          急に居なくなってごめんね。 自分でも、なんの前触れもなかったって思うから、君はなおさら突然に感じただろうな。 でも、私のなかでは急に思いついたわけではなくて、ずっとずっと前から考えてたことだったんだよ。 君は私をすごく愛してくれたなって思う。 愛されてるなってずっと思ってた。 私は幸せ者だなあと思ってた。 そう、幸せ者だなあと思ってたの。 あるとき気づいちゃったんだ。 実際に、幸せだなあって思ったことあったかなって。 付き合い始めた頃は私ばっかりが君のことを好きで、君はそ

          置き手紙

          3:40

          夜。 部屋の明かりを消したあと。 ぼんやり光る蛍光灯を見つめながら、妙に冴えた頭で真っ暗な空間に意識を飛ばして。 泳ぐように部屋の中を一周したあと、ちゃんと私の中に戻ってくるそれ。 だんだんと目が慣れてきた。すると、姿見がなんだか光っているように見えて、なんとなく目をそらした。 もう一度真上を見ると、ぼんやりな蛍光灯の手前で、さっきまではなかった紐がゆらゆら揺れている。 隣から寝息が聞こえてきた。 うらやましい。 この時間、せつないから。 早く、私も意識を失いたいのに。

          ペアリング

          あれは確かバイトの面接の帰りだったかな。 23才にもなって、就職先どころかバイト先を探していたんだ。3つ落ちて、4回目の面接。ショッピングモールの中の靴屋。 また落ちるんだろうな、と思っていた。 面接をしてくれた店長が終始作り笑顔だったのを思い出してため息をついた。 エスカレーターを降りて、すぐのところにあったアクセサリー屋に自然と目を奪われた。 初売りセールか…。 正直なところ買う気はなかったが、どれほど安くなっているのかに興味がわいて、店の中に足を踏み入れた。 目に飛

          ペアリング

          あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いいたします。

          あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いいたします。

          Perfect Blue

          もうすぐ夏がくる。 私がそう思ったのは、照りつける日差しでもなく、とっくに花が散って青々とした桜でもなく、いわゆる夏の匂いでもなくて、深夜3時の廊下の床がぬるかったから。 人生そんなもんだよね。と思いつつ正直がっかりした。部屋の窓を開けるとさすがに空気はひんやりとしていた。足を差し込んだベッドもまたぬるくて、あー夏がくる、と性懲りもなく思った。 ベッドに座ったままスマートフォンを開く。日付を見て思い出したのは初恋のあの人だった。今日はその人の誕生日。一度も祝ったことなどな

          Perfect Blue

          最後の日

          ジッポライターの音で目が覚めた。フーッと吐き出された煙をぼんやり見ていると、彼はベッドから身を乗り出してPCに手をかけた。寝ている私にお構いなしに流れ出すYouTubeの動画。彼がコピーしているバンドのライブ映像だ。寝起きの私には大きすぎる音量。身を乗り出したために近付いてきたタバコから、直に煙がふりかかる。嗅ぎ慣れたセブンスターのにおい。彼はタバコの灰を落としてからベッドに座り直した。振動で頭が揺れる。彼はプシュッとモンスターの缶を開けて、ごくごくと喉を鳴らしてそれを胃に流

          最後の日