セフレの話

私にはセフレがいる。

いや、実際はセフレですらないのかもしれない。
頻繁に泊まりにくるけれど、来るたび抱かれるわけではない。
ただ2人並んで寝るだけの日もある。


「こっちきて、はやく」

ベッドに腰掛けた彼が、私を見ながら照明のリモコンを振る。

長い腕だ。
そんな何でもない仕草にまで見とれそうになる。
が、それを堪えてベッドに近づく。
手をかけたところで部屋は真っ暗になった。

途端に腕を引かれ、少し乱暴に押し倒されて、首から胸に何度もキスを落とされる。
今日はするのか、と思って彼の首に腕を回そうとしたところで、彼の体が私の隣に沈みこんだ。


えっ…と。

困って彼のほうを見るも暗くて顔が見えない。
彼の気配が腕を広げて「おいで」と言うので、おそるおそる飛び込むとゆるく抱きしめられた。


……もうお気づきかもしれないが、
私は彼のことが好きだ。

もともと、こうなる前から好きだった。
それが叶わないことも知っていた。

だからせめて、という気持ちで体の関係を持ったのだ。


だから、こういうのは困る。
意味や意図を考えてしまう。
体を求められるほうが簡単でわかりやすい。

これはなに?
優しさ?人肌恋しいだけ?
誰にでもするの?
僅かでも好きになってくれたの?

聞けないくせに。
そんなことぐるぐる考えて。
胸が痛くて。
指先まで痛くて。


だからといってその腕を跳ねのけることもできない。
できるだけ身動きを制限して、彼を起こさないように朝を迎えるのだ。