少子高齢化を斬る

令和の時代に現れた、風変わりなSAMURAIがいる。
彼の腰には刀が1本。
たが、彼の刀は人間はおろか物さえ斬る事ができない。
この刀は、本当に斬るべきものを見つけることが出来た時に力を発揮するのだ。

この街を歩いていてSAMURAIは不思議な気持ちを抱いていた。
「何故こんなに子どもが少ないのだろう?」
気になって、すれ違った夫婦と思われる若い2人に思い切って声をかけてみた。
「あのっ!」
「……どなたですか?」
若い夫婦は怪しいと言わんばかりの目でSAMURAIを見ている。
時代に合わない着物。腰に着けた刀。
警戒されて当然だ。
しかしSAMURAIは臆することなく続けた。
「少子高齢化についてどう感じていますか?」
「……え……」
唐突すぎる質問に戸惑う2人。
どのくらい経ったか分からないが、長い沈黙の後、女性がぽつりと言った。
「私、今不妊治療中なんです」

SAMURAIと若い夫婦は、近くのカフェで話をしていた。
彼女は子どもを望んでいながらも一向に子宝に恵まれず、不妊治療を続けているという。SAMURAIとすれ違ったのは、不妊治療のため病院を受診した帰りだったのだ。
病院の待合室には、子どもが欲しくてもできずに悩んでいる女性や、望まない妊娠をして悩んでいる女性が沢山居たことを彼女は教えてくれた。

そして、2人の話を聞いていると…
カタカタ、カタカタ。
SAMURAIの刀が震え出した。
斬るべきものが分かったのだ。

SAMURAIは刀はをぎゅっと握りしめて夫婦に提案した。
「少子高齢化の原因がわかりました。その原因を私に斬らせて貰えませんか?」

SAMURAIには少子高齢化の根本問題が見えていた。
それは、人類が700万年ものあいだ使い続けてきた言語にあった。

SAMURAIが原因を語り終えると、2人は戸惑いながらも頷いてくれた。
SAMURAIに仲間ができた瞬間だった。

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