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いいなぁ、アキ

アキ・カウリスマキの「ル・アーヴルの靴磨き」を見た。
他のアキ・カウリスマキ作品はもう割と見尽くしてしまっている。
本作は配信では公開していない作品で、舞台もフランスになっている。
しかし私にとってアキ・カウリスマキ作品が必要な映画だということが改めてわかった。

私が思う、アキ・カウリスマキの作品の魅力は「静」だ。
感情や抑揚をあえて俳優には演じさせない。
それは見る人に委ねている。
その作り方が第一に、とても良心的だと私は感じている。

セリフによっての強制もなく、物語全体に散りばめらた絶妙な「間」が私の見るスピードにとても心地が良い。追いつく脳みそにちょうどリズムが良い。そんな具合だ。

出演している俳優も、常連組を多く出す。
特に女優のカティ・オウティネンの薄幸さは、物語のトーンをうまく落ち着かせている。
大粒の涙を流すことは決してない。
大きく泣き喚くこともない。
ただそこにいるだけで、上質なアートのような雰囲気に仕上げる要素を含んでいる。

シーンワンカットだけ見ても、絵画のようなバランスだ。
ずっと静だけではない。
多くの作品において、効果的にその地域のロックバンドが出演している。
そこには多くの「動」があり、それに滑稽さが生まれている。

また今年、しばらく前に引退説が囁かれていたアキ・カウリスマキが、カンヌで最新作を披露したようだ。
まだ日本での公開がいつになるかは決まってない。
2017年ぶりの映画公開なので、俄然期待は高まっている。
そしてまたあの、アキ・カウリスマキの空気をぜひ感じてみたい。
その機会が来るまで、待ち遠しい。

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