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全部ウソ

久しぶりに朝寝坊をした
どうやら深酒が祟ったようだ
靴を履き、ガレージの単車に跨ると海へ向うことに
波はしけていて、沖の島をも飲み込むほどだった
父は船乗りだった
こう言っていたことを思い出す
波の高さはその日の運の高さと比例するようだ
高い時にこそ、波はサーフボード強く捉えてくれるものなのだ
小一時間揉まれた私は、ウェットスーツのままその場を後にする
こういう時に、丸めた頭の毛は良く乾く
時間はあまりかからない

しばらくすると集中豪雨があった
頭上にだけ雨雲ができている
目線の光の当たっている先は、全く濡れていない
でもそんなことには全くなってはいなかった
気のせいだった

帰宅すると朝食の芋虫がちょうど出来上がった匂いがした
旦那が出迎えてくれて、焼いたばかりの虫の足がその立派に蓄えた口髭にからまるようについていた
私はつまみ取り、味のついたその足粒を口に運んだ
カリカリして香ばしい、また同時にシンプルな味に思えた

(すべて嘘で塗り固めてしまいました)

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