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(世田谷区編)小中学生向けタブレットで、できること・できないこと

世田谷区議会議員 そのべです

世田谷区でも、国の施策に基づき、児童・生徒に1人1台のタブレットが貸与されましたが、
春休み真っ最中、このタブレットで何ができるか/できないかをまとめました
(先日、教育委員会に実機を借りて動作を試しました)

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【できること(プリインストール編)】

そもそも貸与されたタブレットには、児童・生徒がアプリケーションをインストールすることができません。

そのため、できること=プリインストールされているアプリでできること
となり、以下が主な一覧となります

・iOSプリインストール:カメラ・写真・メモ・カレンダー等
・ブラウザ:Google Chrome・Safari
・Google系:YouTube・Google Map
・Windows系:Word・Excel・PowerPoint・OneNoteTeamsOneDrive
・Apple系iMovieGarageBandClipsファイル
・プログラミングソフトWeDo2.0ScratchJrViscuit
・その他:Zoomロイロノート スクール

詳細:世田谷区立小・中学校 探究的な学びを推進する1人1台の情報端末の活用
https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kodomo/005/005/007/d00188984_d/fil/tablet_manual.pdf(PDF注意)

プログラミングアプリ等も、プリインストールされていますが、
対象年齢はそれぞれ、WeDo2.0:5歳-小学生ScratchJr :5-7歳Viscuit 4歳-低学年 となっており、15歳までの知的好奇心を満たすには明らかに不十分です。

※アプリのインストール権限については、タブレット購入以前から個人に移管するよう交渉はしていますが、今のところリスク排除が優先され自由なインストールはだいぶ先になりそうです

【できること(ブラウザ編)】

アプリをインストールせずとも、Webブラウザを用いれば様々な利用ができますが、今回はweb上でどのようなことができるのかについて調べていきました

前提として、貸与されるタブレット端末には、クラウドセキュリティーサービス「Cisco Umbrella」がインストールされています
そのためGoogle等の検索エンジンにおいては、不適切と思われるキーワードの検索は弾かれるようになっていました


②コミュニケーションツールとして
SNSはアクセス制限の対象となり、出会い系サイトも同様でした
その一方で各種掲示板については閲覧と同時に、投稿が可能なものもありました

コミュニケーション機能は、一義的にはプリインストールされているMS Teamsとロイロノート・スクールが担うことになると思われます

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①学習用端末として
教材として配付しているため、民間のe-learning/通信教育サイトについては調べた限り全て利用可能でした
NHK for Schoolのショートカットがホーム画面に設定されているなど、授業以外の場面でも学習用端末としての期待がかかります

一方で、翻訳サイトも自由に利用可能な点は、語学学習において適切な使用が求められそうです

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③エンターテインメントとして
人気のブラウザゲームは制限対象となるも、動画配信サービス、ライブ配信、一部のマンガサイトの閲覧は可能であり、授業中や休み時間の利用も実質的には可能です

一律の規制には反対の立場です(既にアプリをインストールできない時点で大きな規制はあります)が、どのようにエンターテインメントと向き合うかの議論は本来必要だったと考えています


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※マンガは、表には記載できておりませんが、ドメインが出版社のものは基本的に閲覧可能でした(記憶が正しければ、pixivは制限対象でした)

また、下記のような記事を見ると、今やタレント等の特別な活動をする子どもだけでなく、一般の子どもにもコンテンツを消費する側だけでなく、生み出す側についての教育の必要性も感じま


出典:https://citrus-net.jp/article/94220


④ショッピング・グルメ
Amazon等のショッピングサイトは、ほぼアクセスできませんでした
一方で、デリバリーサービスの利用は可能で、
保護者のID/passwordでログインさえできれば、学校へのデリバリーも(やろうと思えば)可能です

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【検索キーワードの可否】

先述のとおり「Cisco Umbrella」がインストールされており、
Google/Bingの検索エンジンにおいて、不適切とキーワードの検索は弾かれます
(弾かれると検索結果が0件の表示になります)

以下が代表的な検索キーワードの可否です

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筆者のスキルでは、いわゆるアダルトサイトへは到達できませんでした

【その他できること・できないこと】

AirDropについては使用が可能でした
便利な反面、数年前に「AirDrop痴漢」でも話題となったように、いたずら等にも利用される懸念があります

産経新聞:「エアドロップ痴漢」相次ぐ スマホにわいせつ画像送りつけ
https://www.sankei.com/affairs/news/181123/afr1811230027-n1.html

インターンの学生に伺ったところ、高校時代 授業中にオモシロ画像を送りつけられた、ということもあったそうです

【YouTube専用端末化 問題】

YouTubeは、世田谷区・東京都が教育に制作した動画をアップロードするプラットフォームとして採用しているため、アプリがプリインストールされており、比較的多くのことができる印象です

世田谷区YouTube:せたがた まなびチャンネル
東京都YouTube:とうきょうの情報教育【東京都教育委員会YouTube】


授業外の学習用動画の閲覧ができる一方で、不適切なキーワードの除外、年齢制限のある動画の閲覧制限、コメント機能、スーパーチャットの制限のみであり、その他の制限はありません
Googleアカウントさえ取得していれば動画の公開も可能です

善意的に解釈すると、宿題・e-learningでの活用が望まれる一方で、
今回貸与されたタブレットではアプリのインストールができず、自分の選んだ教材やゲームで能動的に学ぶこともできないため、
区の用意した課題や動画 or 世界中のクリエーターが作ったYouTube上の無限のコンテンツのほぼ2択となり、
選択肢がないからこそYouTube漬けになることを懸念しています

そうなるのであれば、むしろ自由に自分が使うアプリの選択をさせた方が、コンテンツの消費以外の利用が促進されると考えます

【どこまでの制限が必要か】

このまま何の指針もなく、児童生徒の手元にタブレットがあるだけだと、YouTube閲覧機になる危機感もあり、
そのべも 3/9の世田谷区議会 予算委員会 初日に、春休み前に区として 学びに資する一定の指針を出して欲しいと提案したこともあり、
春休み中の使い方についてプリントが配布されました

(タブレットを全自動生徒に配備したにもかかわらず、情報を配信するシステムが2021年4月運用開始のため、3月時点では紙を手配りしているのが現状です)

3月19日世田谷区教育委員会 発行の、「学習用タブレット端末に関するFAQ 教えてタブレット先生vol.3」においては、

1.「学びや生活をよりよくするために使う」
自分の娯楽のために使うものではありません。

と記載があります

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世田谷区教育委員会:学習用タブレット端末に関するFAQ 教えてタブレット先生vol.3(PDF注意)

確かに制限をかけることは管理が楽ですが、一方 今や娯楽と学びの線引もはっきりする時代でもなく、本当に自由な学びを促進するのであれば、一律の制限をかけるべきではありません

自由にタブレット端末を使用する中で、児童・生徒自身がデジタルリテラシーを身につけることも必要で、
また、入学したばかりの小学1年生から、義務教育修了間近の中学3年生まで、全ての児童生徒が一律の制限が加えられることには改善の余地があります

今後はシステムを一元化しないことの管理コストとの兼ね合いにもなりますが、小・中、若しくは小1-3・小4-6・中1-3程度には切り分けて、それぞれの発達に応じた活用が促進される環境が必要です

ちなみに、先ほど挙げた「学習用タブレット端末に関するFAQ 教えてタブレット先生vol.3」においては、タブレット端末を用いた学習例が他にもまとめられていますが、小学1年生から中学3年生まで一様な内容が提示されていることも一律による弊害の表れであると感じています
※三平方の定理の証明 といった記載もありますが、学習指導要領では中学3年生の範囲です

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世田谷区教育委員会:学習用タブレット端末に関するFAQ 教えてタブレット先生vol.3(PDF注意)

【そもそもiPadだと思わない方がよい】

教育をはじめ、日本の文化は下に合わせる(今回のケースはデジタルリテラシーの低い家庭・子どもが、トラブルに巻き込まれないことを最優先する)ことを良しとしますが、
個別最適化が可能で、できる分野はどんどん先に進める、できない分野はフォローが丁寧にできるはずのICT教育に関しても、リスクの排除を優先するためにアプリのインストールを制限し、タブレットの活用により育ったはずの可能性の芽は詰まれているように感じています

確かにゲーム用端末、マンガ用端末になってしまってはタブレットを貸与した意味はありませんが、YouTube用端末になり得る以上、問題は長時間の利用や依存的な状態の防止というよりも、
教育委員会や区役所として、どう言い訳が付くかどうか(YouTubeだけは言い訳が付く)であると感じています

今の小中学生の保護者世代(60年代-80年代生)は、デジタルネイティブ・非ネイティブの過渡期ではあるため、
デジタル端末全般の子どもの利用について慎重派もいれば、むしろ使いこなすことを推奨する家庭まで様々いる中、旧い価値観に寄り添い、
現代的な価値観に基づき 自由な活用を望む場合は 各家庭の責任(=各家庭の端末)で、という方針が区の現時点の見解です

確かに一見するとどう見てもiPad(スペックももちろんiPad)のため、様々な活用を期待してしまいますが、
当面 保護者としては、
・授業で使う 約1.1kgのカメラ付きノート
・Google検索機
・YouTube閲覧機
⇒(内容の薄い)
官製チャレンジタッチ(オリジナル端末)
程度の認識でいた方がよいかもしれません

また、そもそもイマドキの中学2・3年生と50代の教員を比較したら、どちらがデジタル端末に慣れているかはここで論じるまでもなく、学校に期待すること自体が過度な期待なのかもしれません
※授業中の活用推進に向けては、ICT支援員が配置されます

残念ながら世田谷区は、現時点でICT教育についても、各家庭の教育方針から抜け出すことはできてはおりませんが、
区議会議員としては、家庭環境を問わず全ての児童生徒の可能性を伸ばすべく、貸与したタブレットが最大限活用される方向へ、引き続き区の挙げる問題点を一点ずつ潰していきます

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