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立教高校

10年に1度位、立教高校を訪れることがある。自由な、いい学校だった。
アントニン・レイモンド設計のチャペルの造形が好きなこともある。
在学中は週に一度、朝、礼拝のような時間があった。
聖堂の内部、正面の不思議な幾何学図形の装飾を見ながら、聖歌をきいた。
入堂聖歌303番が好きだった。ハイドンのカイザー・カルテットから採られた旋律。現在のドイツ国歌。コンクリートのチャペルに響く、やや甲高い
パイプオルガンの音を覚えている。

自分が本当に好きなものに重きをおく人達が多いのも特徴。
音楽では、グレン・グールドやブライアン・イーノの輸入盤が人気だった。
図書館で、たまたまあったショルティ/シカゴ響によるマーラー5番をきいていたら、バルビローリをきくべきだというコメントが、すかさずあった。
15歳にして、そんな意見を言う同級生は、その後、ワイン評論家になったときく。

そんな記憶を思い返しながら、久し振りに立教高校を訪れたら、全く別の学校になっていた。近年、独自の中学校を併設したり、大学の一部の学部が移転してきた関係で、文化が変わったのだろうか。
旧本館が取り壊されたことは知っていたが、東寮から体育館へ向かう道にあった、ポプラ並木も伐採されて、もうない。白色に再塗装されたチャペルと400mトラックと、その周辺の樹木だけが往時のままで残っていた。

1977年。当時の東武東上線はクリーム色で、古い車輛の床は木張りで、
雨の日、傘から水が垂れると、堆積した塵と鉄が錆びたような匂いがしたことを思い出した。

2022年10月30日

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