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職業、女。

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女性という性にフォーカスしたコラム。100本書きます。
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記事一覧

職業、女。#24 年をとるということ

 クエンティン・タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』(1994年)を観た。タイトルを訳すと「くだらない話」となり、基本的にはマフィアの男ふたりを軸に、彼らと直接的・間接的に関わる人々の短編が、時系列を問わず展開される。絶えず「fucking◯◯!」と飛び交い、言葉づかいがなかなか刺激的な作品だけれど、私はけっこう好きかも。  忘れられないシーンがいくつかある。落ち目になったボクサーが深夜に帰宅後、ベッドに寝転んで恋人を背後から抱き、太ももからおしりのラインをなで

職業、女。#23 忘れえぬ男〜手をつなぐ編

 忘れえぬ男というものがいる。  だから私も、関わってきた男性方にとっての、忘れえぬ女になりたい。もちろん「あの女、絶対に許さんぞ」的な意味ではなく、「なぜか記憶に残ってるんだよね」的なプラスの意味で。  さて、手をつなぐ、という行為である。以前きちんと付き合った男性と初めて手をつないだとき、体の奥底からジワジワと疼くものがあった。同時に体中の血の巡りが勢いを増した。「幸せすぎてどうしよう。熱い。カッカしてる……」。そんな不思議な感覚は1年くらい持続し、熱っぽさは徐々

職業、女。#22 「誘う女」は生きやすい

 自分から男性を誘うのは「負け」な気がする。自分から男性を誘うなんてプライドが許さない――そう考える女性も一定数いるようだ。たしかに私の周りにも存在する。  彼女たちの思想を変えてあげたい、といった使命感はない。そんな義理もないし、好きなようにすればいいと思う。それでも「誘う女になること(自分から男性を誘うこと)」の良さを簡単に説明することにしている。その行為にはメリットしかないから、せっかくなので伝えておきたい、と思う老婆心からだ。  ふたりで会いたい男性がいたら、

職業、女。#21 再婚しない、と答えた理由

 「再婚、しないの?」  元彼から訊かれて「しない」と即答した。「いろいろ見て、聞いて、体験してきた今は、結婚に意味を感じないのよ。だから当面、独身のままでいる予定」と付け加える。  彼は今の彼女と結婚に至ってもいないのに、私の地味な離婚話に多大な興味を持ってくれている。3〜4ヶ月に一度「ごはん食べよう!」と元気にメールをくれるけれど、数年実現していない。ごはん行こ行こ詐欺男子、と密かに呼んでいる。  ひとり暮らしに戻って半年以上経ち、自由を謳歌している。最高に楽し

職業、女。#20 離婚して形成された「ひとりベース思考」

 離婚して変わったことはたいしてないけれど、ひとつ挙げるならば「ひとりで生きる」を前提として物事を考え、決断するようになったことだと思う。しかも、無意識のうちにやっている。  週末、友人と東銀座で食事する予定があり、店までぷらぷら歩いていると、築地警察署の裏手あたりで、不動産販売会社の若い女子に呼び止められた。「あのぉ、モデルルームを見に来ていただきたいんです」。新卒でノルマ達成に苦労していると聞いて同情した私は、道中だし、5分だけならOKですよ、とついていった。  

職業、女。#19 女友達と旅行したくない理由

 友人・知人関係にある女性に自分の裸を見られたくない。  そんな考えもあって、最後に女友達と一緒に風呂に入ったのは、大学時代に参加が義務づけられていた部活の合宿だったと記憶している。不参加という選択肢はないから、皆と時間をずらして風呂に行くか、それが叶わないときはタオルで前を覆い隠し、湯に浸かる瞬間にパッと取る、といった方法で乗り切った。服の着脱時には皆に背を向け、そそくさと済ませるのである。  社会人になってしばらくの間は、仕事と合コンを含む飲み会に明け暮れて、旅行

職業、女。#18 「比べない」は幸せをつくるもと

 「女がたくさん集まるといろいろあるのよ」  つまり、大変ってことよ。大人の女性がそう言うのをぼんやりと聞く。はぁ、いろいろあるんですねぇ。  そのとき、心から共感できなかったのは、私が「同性で群れること」を避けてきたせいかもしれない。  「女友達ZERO時代」で、大人になってからは同性と楽しく関われるようになったと書いたものの、大勢で集まるのは今も得意ではない。1〜3人くらいの少人数で親睦を深めたい派である。  加えて、誰にどう思われるかといった考えはとうの昔に

職業、女。#17 忘れえぬ男〜キス編

 キスに上手下手なんてないだろう、と思っていた。  (キスの下手さを説明するメジャーな例に「歯があたる」があるけれど、幸運なことに未経験である)    原則、キスをする相手は、自分にとってときめく人。そのため、気持ちは自然と高揚しており、要は相手のキスに点数をつける暇もなく、次の行動へのスイッチをONにするきっかけにしかならない。  ところがあるとき、男性からキスの仕方をレクチャーされ、自らの過去のふるまいを恥じ、穴があったら入りたい気持ちになった。彼の主張を以下にま

職業、女。#16 強くなりたくて、今日も走る。

 「走ること」を再開して3週間ほど経つ。中央区に移り住んだ今、水辺のランコースが充実していて楽しい。  勝鬨橋を渡り勝どき〜月島を抜け、佃大橋を通って帰るコースは「梅」。新川を抜けて永代橋を渡り、門前仲町〜月島を回り、佃大橋経由で帰るコースは「竹」。新大橋通りを北上し、茅場町〜人形町〜水天宮前を抜け、清澄白河まで足を伸ばすロングコースは「松」としている。  隅田川テラスに降りて築地市場の背後に佇む東京タワーに見とれたり、タワーマンション群の灯りを見上げてそれぞれの生活

職業、女。#15 孤独と欲望と男は幸せの構成要素。

 『旅情』(1955年公開、デヴィット・リーン監督)を観た。  キャサリン・ヘップバーン演じるアメリカ人女性ジェーンは38歳。ヨーロッパをひとりで巡ってきたジェーンは、最終目的地ベネツィアに着いて、ロッサノ・ブラッツィ演じるイタリア人男性レナードと出会う。  レナードは「自称・妻とは別居中」の既婚者。その事実もジェーンから問い質されるまで、告白しようとはしない。ジェーンは真実を知って怒り狂う。  それでもレナードは「既婚とか独身とか関係なく、僕たちは男と女だ。もっと

職業、女。#14 「母を手放す」企画をつくるまで

 「DRESS Web」で「母を手放す」企画がスタートした。寄稿してもらう形式で、初回の「距離が関係を守ること」はジャーナリストの小川たまかさんに書いていただいた。  企画のタイトルは悩みに悩んだ。母を許して自由になる/母からの解放/母から自由になる/母を許す技術/母娘関係を楽にする/母娘関係は楽になる/もう母に悩まない/母娘の呪いから自由になるなど、10個以上書き出した。今見直すと、恐ろしいフレーズも混じっている。  地元に住む母親と2月、ひどい衝突があった。ある出

職業、女。#13 婚活界における書類選考落ちとは

 「……考え方が根本的に違う私とE子さんだと良い結果にはならないため、残念ではありますが、今回はご縁がなかったのだと思います。申し訳ありません。お互いに良い出会いがあることを願っています……」  就活の「お祈りメール」(不採用通知)テンプレを婚活向けに加工したような文面。女友達E子が婚活アプリで、50代前半の男性とメッセージを2〜3往復やりとりした後、受け取った返信だ。  年上好きのE子は相手と20歳以上離れていようと、気にせずいいね!する守備範囲の広い、ハンター気質

職業、女。#12 生まれ変わっても女になりたい

 見た目もセンスもよくて、穏やかで、面白くて、才能があって……あぁ、書き尽くせない。雑に言ってしまえば「素敵の塊」のような男友達がいる。  飲んでいるとき、彼は「生まれ変わったら女性になりたい」「自分の男性性を嫌悪している」「男なんて哀しい性だよ」「生まれ変わったら男になりたい、なんて女性はいないはず」と打ち明けた(私も酔いが回っていたので、100%正確に記憶しているとは限らないと断っておく)。  彼の整った顔がわずかに歪むのを見つめながら、この人みたいに「何でも持っ

職業、女。#11 ブスな輪郭と付き合う1週間

 輪郭が「クレヨンしんちゃん」に近づいた。  まさか、三十路を前に自分の顔がしんちゃん化するなんて、リアルタイムでしんちゃんを見ていた小学生時代に想像するわけがない。  映像の中のしんちゃん(の見た目)はかわいらしい。しかし、鏡に映るしんちゃん化した私は、あまりにも不格好だ。ショック。  横向きの親不知を骨を削って抜いているため、抜歯から2〜3日は腫れのピークでしょうね。1週間後の抜糸時には腫れはひいていると思いますよ。  医師からはそう伝えられた。このちんちくり