職業、女。#21 再婚しない、と答えた理由

 「再婚、しないの?」

 元彼から訊かれて「しない」と即答した。「いろいろ見て、聞いて、体験してきた今は、結婚に意味を感じないのよ。だから当面、独身のままでいる予定」と付け加える。

 彼は今の彼女と結婚に至ってもいないのに、私の地味な離婚話に多大な興味を持ってくれている。3〜4ヶ月に一度「ごはん食べよう!」と元気にメールをくれるけれど、数年実現していない。ごはん行こ行こ詐欺男子、と密かに呼んでいる。

 ひとり暮らしに戻って半年以上経ち、自由を謳歌している。最高に楽しい。住みたいエリアに住み、出かけたいときに出かけ、食べたいものを食べ、買いたいものを買い、好きな相手と交流し、好きな時間に帰ってくる。すべての消費行動に躊躇はない。

 自宅では好きな部屋着でくつろぎ、誰にも一切邪魔されることなく、DVDや海外ドラマ鑑賞にどっぷり浸かる。寝る前は保湿目的で、顔面にオーガニックオイルをテカテカに塗って床につく(人には到底見せられない)。ときに誰かと過ごしたいと思えば、気の合う友達を招く。

 自由すぎるくらいの自由。それは孤独を選択したからこそ、得られるものだと思う。それと引き換えに、一からつくった家庭や安心感は損なわれた。一度結婚に失敗したことで、結婚は永続するものではないし、家族をつくったからといって、真の意味で孤独と無縁になるわけではないと知った。

 誰と一緒にいようと、どのような形態で暮らしていようと、人は本質的には孤独ないきもの。生まれるときも、死ぬときもひとりである、とよく言われるように、人生は孤独で始まり、孤独で終わる。だから、その中間も孤独という要素で埋めたって、構わないのではないか、と思うようになった。

 孤独がベースにあると意識して生きるからこそ、手に入る楽しみや喜び、充実感、満足感。それらは再婚した途端、失われるとわかっている。だから、このままがいい。自分で自分ひとりくらいは養えるから、わずかでも窮屈さや煩わしさを感じたり、我慢を強いられたりする共同生活を送る選択はしないだろうと思う。私は短く、太く、濃く生きていたい。

 「自由を散々味わい尽くした」「自由でもうお腹いっぱい」となったときに、果たして思想は変わるのだろうか。あるいは、もう一度、誰かのことを心から本気で好きになったときに。自分の内面の変化・進化を観察していきたい。

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