「ノーマスク客は船外トイレ前席」投稿拡散の“その後”と反響から考えたこと
「ノーマスク客はフェリー船内に乗れない」投稿が拡散
10月1日午後、竹富島に向かうため、石垣島から八重山観光フェリーを利用した私はこんな投稿をしました。
2009年からTwitterを利用していますが、ここまで拡散されたのは初めてで、賛否さまざまな意見が届くこととなりました。
個人的に、自分が受けた対応に疑問を感じ、良くも悪くも社会に問題提起できる機会では? とも考えたため、同日夜にはお問い合わせ文書のベースを下書き。
10/2 八重山観光フェリー宛に意見を送付
10月2日には竹富島から石垣島に戻り、夕方に文書を加筆修正して整え、八重山観光フェリー宛に「【お問い合わせ】マスク非着用者への特殊対応の妥当性につきまして」との件名でメールを送りました。
10/4 八重山観光フェリーから回答
その後、丁寧なご回答をいただきました。
・関連省庁に即報告を入れるなど、大変迅速な対応をしていただいたこと
・社内で立場のある方から直々にお返事をいただけたこと
・繁忙期にもかかわらず素早く連絡をくださったこと
以上3点について、その後の返信でお礼を伝えました。
返信内容については、部長さんが「ご理解いただけない点もあるかと存じますが」と書かれているように、私に理解できない点はあります。互いの立場や触れている情報も違うでしょうから、理解できないところがあるのは当然です。
ただ、自社の考えを具体的に示してくださり、今後の対応方法について社内で考えたい旨明言してくださった点は、純粋に感謝に値するものでした。
そこで、記事を書くことによって「私の投稿拡散によって、貴社にネガティブなイメージを持たれた方々にも貴社のお考えや思いを伝えたい」「貴社が素早く誠意を持った対応をしてくださったことを伝えたい」とお伝えし、お返事の公開許可をいただいた次第でした。
補足
なお、屋外の席についてはこんな声も。
あの日スタッフさんから、↑のような理由やフォローの言葉を若干でも伝えられていれば、状況は変わったのかもしれません。私もツイートしなかった可能性があるでしょう。ただ、私自身初めて受けた対応に呆然として、↑のような配慮があったことを想像する余裕はありませんでした。
ここからは、最初に賛否のRTやリプライをいくつか見ていきます。
賛同する反応
「この対応はおかしい」「差別的」などの“賛”寄りの意見が多く届いたピークは投稿初日〜2日目でした。
ここからは3日目以降に増えた“否”のRTやリプライをケース別に見ていきます。正直なところ、投稿がここまで拡散するとは思っていませんでしたが、反論されるならこういう意見が来そうだな、と予想していたものはだいたい来ました。
想定内の反論
1.郷に入っては郷に従え
遠い時代に流行っていた諺を現代社会に適用するのに違和感があります。
2.ルール
「ルールだから」と言われたら何でも聞き入れるのでしょうか。
3.TPO
マスクがTPO?
4.ドレスコード
↑は定番の反論です。私の考えが的確にまとまっていたツイートを↓
5.アンタが悪い
私たち人間は「提案」や「交渉」という行動をとることもできます。
6.(サービス提供側には)客を選ぶ権利がある
↑定番ともいえる意見。私の考えが的確にまとまっていたツイートを↓
7.マスクは「感染予防」
日本=10週連続陽性者数世界一との報道をどう受け止めたのでしょうか。
8.マスクしてないと感染する
上に同じ。
9.ノーマスクは他人に不快感を与える
逆に「マスクが不快感を与えるケースもある」との発想はないようです。
10.クレーマー
クレーマーとは正確に言うと「“執拗に何度も”苦情を入れる人」です。
11.マスクは「気遣い」「安心」「配慮」
↑定番ともいえる意見。私の考えが的確にまとまっていたツイートを↓
12.島の医療体制は脆弱
この通りだと感じます↓。東京に住む友人医師らが東北や北海道をはじめとした医療過疎地から要請を受けてバイトに行く話を聞いたり、首都圏でもたらい回しにされたりする方の事例にふれたりしていますので、一概に離島だけがそうとは言えないと考えられもします。
こういうデータも見た上で発言した方が安全かと思います。
13.マスクができないなんてあり得ない。何の病気なの?
公の場で個人的な病気や症状を尋ねてきたのは医療従事者の方でした。
こちらに対しては、下のような適切なリアクションがあったり。
ここからは“否”のRTやリプライで、予想していなかったものを挙げていきます。「こう来るか」「そんな見方があるのか」と驚くこと多々。
予想外
1.二度と来るな!
島で出会った方々からは「またおいで!」と言われました。
2.家から出るな
すこぶる健康なため顔出し・外出しています。
3.“ルール”を守れないなら観光に来ないで
観光業従事者はこの手の発言をどう傍観していたのでしょうか。
4.乗せてもらっただけありがたいと思うべき
サービスの対価を払っているので、満席の場合を除いて乗船できます。
5.海に突き落とされても仕方ない行動である
ご自身がスタッフであれば、ノーマスク客を海に突き落とすのですね。
6.禁煙エリアでの喫煙と同じ
ちょっと何言ってるかわかりませんでした。
7.「公衆衛生」を理解できていない
マスク着用=国民の健康を保持、増進させるため、公私の保健機関や地域・職域組織によって営まれる組織的な衛生活動と認識されているのですね。
8.沖縄県民同士の争い
冷静沈着な方、言葉を荒げる方、憶測で物を言う方、傍観していました。
「もし自分が〜だったら?」と知的想像するスキル
最後に、私も含めて一人ひとりが教養として、社会で心地よく生きていくための学びとして、エンパシー(※)を磨いていくことは、生きている間中の課題になるのではないか? と感じるに至ったRTやリプライを挙げてみます。
1.たかが○分でもマスクを我慢できないなんて
私の場合、マスクをつけるのは辛く、耐え忍ぶこと(=我慢)が難しいのです。ご自身はマスクをつけること=我慢なんて一切ない、ストレスフリーな状態である、と感じているかもしれません。
一方で、マスクをつけると「呼吸しづらい」「苦しい」「暑くて火照ってくる」「耳周りが引っ張られて圧迫感がある」「肌が荒れる」などの辛さを抱える方も、この広い世界には存在しているのですよ。
2.マスクつければいいだけ
マスク着用は必ず守らなければいけない規則(ルール)ではありません。
3.マスクくらい
ご自身の「〜くらい」という感覚は他者に押し付けるものではありません。ご自身が苦痛に思うことを押し付けられたらどう感じるでしょうか。
4.形だけでもつければいい
「つけたフリ」をすることの本質、それで得られることが、頭の良くない私には理解できません。
5.お前の「健康上の理由」は恥知らず
むしろ、そういう方にはマスクを外す利点、はずしても問題ないことを説明し、彼らの心身の辛さを軽減するためにはたらきかけるのが、医師免許を持つ限られた方のお役目ではないでしょうか。
7.行かなければいい
この手の「論点が違う」「会話成り立たないね😅」となる意見は多いです。
8.捏造では?
投稿が拡散されるにつれ、「捏造では」といった声が目視では2件確認できました。それなりに立場的なものがあり、実名・顔出しでSNSをしている私が捏造するメリットはゼロですし、捏造する心の余裕なんてありません。
一度「自分がもし同じ立場になったら」と冷静に想像なさるといいと思います。船で誰かに危害を加えたり、禁止されている言動をしたわけではないのに、一人だけ船外の席に座るよう告げられたとき、心身にどんな反応が起こるかを——。
自分の場合は、その瞬間にハートが傷つきましたし、受けた対応が信じられなくてしばらく呆然と立ち尽くしていました。船外に足を踏み入れたときは、普段は味わないタイプの悲しみが最も大きな感情でした。
人間、想像していないことが起きると、こうも無力なんだなとひとり苦笑するしかありませんでした。私は器の大きい人間ではないため、目の前の出来事を笑って流して対処することができなかった、というのもあるかもしれませんが。
さて「多様性を認めよう」「いろいろな人がいる」「物事にはグラデーションがある」といった考えは世に広まっていると感じていました。
しかし、それでもなおマスクに関しては、マスクをつけたい側からマスクをつけたくない側(=「健康な状態であればつける必要がない」発想がベースにある側)への「つけろ」圧力が未だ強すぎるなと、今回のことで感じています。
繰り返しになりますが、何を苦痛に感じるかは人それぞれです。マスクをつけても平気な人、苦しい人がいて、その度合いにも濃淡があります。装着時に出てくる症状や感じも人によって異なり、シーンによっても差があるでしょう。
最新のデータや世界の動き(ここに書くと長くなりすぎるので、各自各種データを見ていただけたら)を冷静に見て自分の頭で考えることをせず、他人に「マスクくらいしろ」と押し付けるのは非科学的ですし、圧をかけられる度に疑問をおぼえます。
マスクは「任意」ですから、当然したい人はすればいいです。本来は「ご自由に」「お好きにどうぞ」レベルの話といえます。そんな前提がありながら、マスクしない健康な人に着用を強要するのは、本来的なマスクの役割や意味を踏まえても、明らかにおかしいことです。
このツイートを見て「確かに!」と思ったのですが、マスクをしない健康な人が、マスクをしたい人(健康であれ、そうでない場合もあれ)に「マスクするな」と強要する場面は見たことがありません。
現状を踏まえても、マスクという商品に絶大な信頼を置いていて、つけ続けたいと考える人はもちろんすればいいです。個人の自由ですから。ただ、他人の「心身に関わる選択」に口を出すのはやめてください。心身に関わるプライベートな領域に土足で乱暴に踏み込むのはやめてください。
シンプルにいうと、寛容な社会になってほしい。そう願うばかりです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?