What's your opinion? そのたの始まり

家から徒歩1分のアメリカ人宅で、月に一度ほど、英語のレッスンを受けている。会社員を辞めてからなんとなく始めて、もう2年と少し。

レッスンといっても基本的には雑談をするだけで、好きな音楽についてとか、最近見た映画、住んだ街、旅、ときには時事問題の記事なんかをはさんで、小一時間好きに喋って、帰る。

「気楽なもんだ」と思うだろう。
しかし、毎度わたしはそこで50分間、脳みそに詰まった知恵や記憶を一滴ももらさず、ギュギュ〜ッと絞って、相手にすべて差し出すような意気込みで、真剣に英語で雑談している。

海外旅行の時なんかに発動する、身ぶり手ぶりすら武器とする「わずかな語彙総動員コミュニケーション」を思い出す人もいるだろうか。
あの切実さ。あれを短時間集中・1テーマで、課金してやる。

・ふだん漠然と考えていることを
・時間や体験や文化を共有していない相手に
・母国語以外で
・誤解のないように伝える

難しい。そもそも日本語でも「ふだん漠然と考えていること」をいちいち言語化させてなんていない。(そういえば、「言語化する」って英語でうまく伝えられなかった。どなたかよい表現ご存知ないですか)

アメリカ人気質なのか、性格なのか、多分どちらもなんだろうけど、私の表現に「ゆるふわ」なところがあると、講師のブレディからは即ツッコミが入る。

「それはサンゴにとってなにがどう良いの?(を英語で)」
「いま話したことの、特にどの部分がどうひっかかるの?(を英語で)」 

共有体験の少ない相手とは曖昧さ=誤解につながるから、5W1Hでブレディはガンガン問うてくる。あらゆる時制・文法・語彙をもってなんとか返す。いまいち伝わりきらず、ブレディからまた5W1H。

環境問題、資本主義の是非みたいなことから、好きな店、酒、お笑い芸人。硬軟問わずさまざまなことを話し合ったけど(有料雑談なのでね)、結局ブレディが繰り返し訊いてくることは「What's your opinion?」だった。

「個」としてどう思うよ? 

最初のころは、そう訊かれること自体に驚いてしまった。そして、正直いって嬉しかった。
立場や関係性を超えて、ポジショントークとかでもなくて、「個」の意見を真正面から問われたのって、かなり久しぶりなんじゃないの。
「私」の意見、聞いてくれるんだ・・(有料とはいえ)。

そうして喋り続けるうち・・出るわ出るわ、めっちゃ「My opinion」あったわ。

退職後、<何でも見てやろう/Do It Yourself>精神のもと、自分の手足をやみくもにバタバタと動かしてたうちに、会社員時代とはずいぶん違うMy opinionが自分のなかに降り積もり、いつの間にかパンパンになっていたことに、自分でも驚いた。月に一回、しがらみのない外国人に母国語以外で自分の考えをぶちまける行為は、ちょっとカウンセリングに近い感覚もあった。

ブレディを相手にMy opinionがどんどん形になっていくを感じながら、これらを伝えたり実践するちゃんとした場がほしい、という欲がわいてきた。
そして生まれたのが「編集室 そのた」でございます。
以後お見知りおきを。





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