四百五話 VRスーツ

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。

バイトで知り合った眠子さんという…。

女の子に頼まれて…。

『デモンズファンタジア』というゲームの…。

テストプレイヤーをやることになった私…。

眠子さんの家に泊まって次の日の朝…。

朝食を食べようと思ったら…。

謎のスーツの女性がいるのであった…。

その女性はゲームの運営さんなのであった。

運営Lと名乗った女性…。

私は初めて運営会社の人を見た…。

朝食のパンケーキを食べ終えた…。

そして、眠子さんと私…。

運営Lさんの3人は…。

眠子さんの部屋に集まるのであった。

眠子さんの部屋はオタクグッズでいっぱい。

部屋の壁は美少女のタペストリーで飾られ。

棚には美少女フィギュアがいっぱいある。

床には漫画とかグッズがいっぱいで…。

床は足の踏み場がないほどであった…。

どこに座るかといえば…。

ベッドに座るしかないのであった…。

眠子さんはベッドで寝そべっていて…。

運営Lさんは眠子さんに膝枕をしている。

私はその横に縮こまって座るしかなかった。

眠子さんはゲームのシナリオを書いたらしく。

もうデータはゲーム会社に送ったらしい…。

なので、膝枕でゴロゴロしているだけなのだ。

運営Lさんは慣れているらしく…。

眠子さんを愛おしそうに撫でている…。

運営Lさんから私にいくつか質問された…。

なんでテストプレイヤーをやろうと思ったのか?

あとは、テストプレイヤーは若い女性を…。

メインターゲットにしている旨とか …。

ゲームのアプデでかなり内容が変わるとか。

そんな説明も受けた…。

私はあんまりゲームをしたことないし…。

最新のVRゲームをするには…。

脳内にマイクロチップを埋め込まないと…。

できないらしく、私はそれが不安だった。

マイクロチップを入れる手術は…。

簡単らしいのだけれど…。

私はそれでも手術が怖いのだった…。

眠子さんは手術が必要ないと…。

言っていたけれど…。本当かな?

運営Lさんにそのことを質問した。

「今度の大型アプデによって手術は必要ないです」

運営Lさんはそう説明してくれた…。

脳内チップと連動したVRグラスをつけて…。

今まではVRゲームをしていたわけだけれど…。

今度は全身を覆う半透明なボディスーツができたらしい。

スーツを着けていても重さを感じないぐらい軽くて。

移動したり、身体を動かすのにも不自由はないらしい。

見た目は身体に薄い膜があるぐらいらしかった。

そのスーツがゲームの世界の…。

圧倒的なリアルな世界を再現してくれるらしい。

服を着たままでも、スーツは着れるらしく…。

裸になる必要もないとか…。

もちろん裸で着ても…。

人体に害はないですけれどね…。

と色々運営Lさんは説明してくれた…。

「実は私そのスーツを今試着しています」

運営Lさんはそんなことを言った…。

私は運営Lさんの腕とか色々触らせてもらった。

スーツを着ているなんて思えない…。

肌を触っても、人間の肌の感触しかしない。

「乃亜さんも試着してみます?」

運営Lさんにそう聞かれる…。

運営Lさんはカバンから…。

A5サイズぐらいの薄いものを出した。

それはスーツを折り畳んだ物らしい。

畳めば、カバンとかに入るサイズなのだ。

私は初め躊躇ったけれど…。

どうせテストプレイヤーの時着るのだと。

決心して、着てみますと答えた…。

運営Lさんは薄い物をバッと広げた…。

すると私の身体を薄いスーツが…。

覆っていき、密着するのを感じた…。

最初は布団圧縮機の中にいるような…。

感じがしたが、すぐに違和感はなくなる。

呼吸も普通にできる…。

なにか身体に張り付いているような…。

感触は一切しなくなった…。

すごいな最新技術は…!?

私は腕とか脚を動かしてみたが…。

なんの支障もなかった…。

「それでは少しだけゲームの世界にご案内」

運営Lさんはそう言い、スマホで何か操作した。

すると、私の視界は一瞬で切り替わり…。

ファンタジーゲームの世界になってしまった。

石畳の通路に、木造の家や建物がいっぱいで…。

周りを色んな人が歩いている…。

普通の人間とか、背が異様に低い人…。

背がちょっと高くて、耳がとんがっている人。

毛が生えていて、顔も獣のような人…。

羽が生えて、飛んでいる人までいた…。

これってファンタジーゲームの街なのかな?

色んな人が歩いていて活気があった…。

敵キャラのようなものはいない…。

街の雑踏も風の感触も辺りの匂いも…。

すべて、リアルに感じ取れる…。

私はただ圧倒されてしまうのであった…。

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