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超大手 オーストリアのボイラメーカー frolingを訪ねる

今回は、木質バイオマスエネルギーの活用が活発なオーストリアを拠点とする、超大手ボイラメーカーfroling社を訪ねました。ちょっと日本では考えられないくらいのオフィスや工場のスケールに開いた口が塞がりません。それからいきなり余談ですが、社食でビールがいただける環境は素敵でした。

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まずは巨大オフィスの前で記念写真。何かの博物館のようです。実際に中では様々な種類のボイラが展示されていました。

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オーストリアのバイオマス熱供給の実態はというと、都心部では地下に配管網が整備されており、その上にいくつかのバイオマスボイラを設置し地域熱供給を行なっています。また、少し離れた位置にある住宅(コアゾーン)には家庭用ペレットボイラが普及していているとのこと。実際にfroling社が扱うボイラの中でペレットボイラが主力になっているそうです。

froling社は、1961年にオイルボイラのメーカーとして、10人のスタッフによって設立されました。転機は1971年に訪れます。1980年までの約10年間にわたるオイルショックを機に木質バイオマスボイラの研究を開始。1981年に第一号機が完成しました。そこから政府の後押しもあり、今では欧州にとどまらず、世界各国を相手に年間20,000台を販売する超大手メーカーへと成長しました。木質バイオマスボイラメーカーとしては間違いなく世界最大級であり、その技術もピカイチ。その分、メーカーとしての誇りが高く、間違った使い方をされないように代理店に対して徹底した研修制度が設けられています。当日も煙突掃除屋の研修があったようで、チムチムニーなおじさまたちで展示ルームがごったがえしておりました。

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※froling社やオーストリアの取り組みについてご説明いただいている様子

再びオーストリアの話に戻りますが、なぜこのように木質バイオマス利用が進んだかというと、仕入れとなる原木代が安いこと、それからボイラシステムについても日本よりもはるかに安い値段(5分の1~10分の1)で設置できることが要因になります。それは欧州という陸続きの巨大マーケットが存在している分台数がはけることと、配管網の整備などのエネルギーの自産自消を後押しするような政策を早くから進めてきたことが要因です。

また、チッパーはチップボイラを導入する際の大きなコストになりますが、農家などではチッパーを1週間ほどレンタルして、その期間中に1年間のチップを作り終えてしまうなど、イニシャルコストを削減する工夫が随所に見られました。このシステムは日本においてもチップ製造が密集しているエリアでは参考になりそうです。自治体がそれぞれ新しいチッパーを購入するのは非合理かもしれません。。

また、地域熱供給ではボイラ出力1kWにつき配管の長さが1m以上になるとコスト効率が悪くなるとのことで、そういった場合は無理をせずに小型のペレットボイラを設置するそうです。

地下配管網が整備されていたり、林道が整理されていて木材価格が安かったり、なおかつ乾燥した気候だったり、大量生産でボイラ代が安かったり、、、日本からしたら羨ましい点は数え上げたらきりがありませんが、同じ森林大国として我が国も木材利用には向き合っていかなければなりません。

そんな中で、一つ今回の訪問を終えて感じたことは、ペレットの可能性です。地下配管網を今から整備することは1kW=1mの法則からしても非合理的であると考えられるため、家庭用として使えるペレットが肝になってくると感じました。当然、現在の流通量(製造量、消費量)ではペレット代が高くなってしまい家庭の負担になってしまいます。したがって流通量を意図的に増やす政策は必要になりますが、それに加えて環境意識に訴えかけるプロモーションが大事になると思います。実際に欧州では先日の環境デモをきっかけにバイオマスボイラ導入への補助は今がピークのようです。オーストリアの場合、家庭用ボイラ設置費140万円のうち約50%を国が負担。ランニングコストは灯油やガスよりも安くなります抑えられます。

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ウィーンのホームセンターでは15kgのペレットが4€(1€=120円  32円/kg 2019.11現在)以下で販売されていました。日本の消費者に届く価格よりもお得感を感じました。

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また、家庭用ペレットストーブはなんと500€、約6万円です。いかにペレットが大衆化しているかを伺えます。

日本でここまで普及させるのはなかなか難しいですが、31年度からの森林環境譲与税は一つのポイントになるように感じています。また、木質バイオマス=堅苦しい、難しい、というイメージを物色するための、環境意識と合わせてイカしたプロモーションを展開していく必要性を感じています。frolingかっこよかったですもの。

以上。

文責:半田

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