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願わくは花の下にて・異聞

【注意書き】パッチ6.4のヴァリアントダンジョン「六根山」踏破後のお話です。まだ探索中の人は気をつけて読んでね。

「でやぁぁぁーーーッ!」

雄叫びと共に繰り出されたイズミの刀が鉄塊と交錯し、その衝突音が林間に響き渡る。イズミは舌打ちし、即座に地面を蹴って飛び離れた。瞬間、別の鉄塊が振り下ろされ、イズミのいた地面が大きく抉り飛ばされる。暗黒騎士が振るう大剣と見紛うそれは、巨大な苦無くないだった。

イズミは受け身を取って愛刀を構え直し、相手を見つめた。土煙の中で怪しく光る桜色の双眸。巨大な女がぐるると獣じみた唸り声を上げている。怪異である。だが、イズミが臆さず踏み込むと、相手は大きく後方に跳躍。脱兎の如く背を向けて逃げたのだ。その背にはひときわ巨大な瓢箪があった。

「逃すかッ!」

イズミは籠手の機構を作動させ、鉤縄を放った。鉤縄は高い枝にその爪を食い込ませ、巻き上げ機構でイズミの身体を宙に飛ばした。枝から枝へ、幹から幹へ、イズミは鉤縄を駆使し、逃げていく怪異を追い立てる。

紫洲六根山ししゅうろっこんさんの高木林を飛び逃げる怪異には長く白い尾があった。羽根のような角も。イズミと同じ、アウラ・レン族の女だ。同族に対して湧いたわずかな感傷を振り払い、イズミは巨躯の怪異を追い続ける。怪異は振り返り、恨めしげな顔を見せつけた後、急角度で横に飛んだ。崖下へ逃れたのだ。イズミは角に触れ、通信を送った。

「追い込んだ。そっちは?」

イズミも急制動をかけ、後を追って林から飛び出した。転げ落ちていく怪異を追い、自らも崖を駆け降りていく。

「オッケー、やってやろう」

◆◆◆

怪異がずしんと音を立てて土の上に着地する。山頂へ至る険道、その途上にある広場。怪異はちらりと頭上を見た。紫髪の女侍が崖を飛び渡りながら降りてくる。

ぎりり、と怪異の顔が歪む。ここで迎え撃つか、さらに逃げるか。怪異がそれを考え始めた矢先、奥の藪を割って更なる人影が飛び込んできた。他ならぬ怪異が生み出した分身。それが二人。どちらも、やはり追っ手を気にして苦無を構えている。

やがて、彼女らを追っていた人間が藪の中から姿を現した。ひとりは青い髪の陰陽師風の男。そしてもうひとりは白い外套をまとった騎士風の女だった。陰陽師の男は印を結び、手に持った棒で土を打った。

「追い詰めたぞ」

ぎぃん、と空気が揺らぎ、広場を取り囲むように障壁が展開された。

侍が崖を降りきり、刀を構える。そして騎士風の女がつかつかと歩み出し、凛とした声で名乗った。

「……我が名はソフィア・フリクセル!貴様に引導を渡すものだ!」

名乗りを受けて、怪異達の腹の底で得体の知れない何かが疼いた。「この身体」の力の根源が揺らいだ。怪異達はその獣のような振る舞いを抑え、姿勢を正しながら手を合わせ、名乗った。

「「「ドーモ、花遁かとんのヨザクラ、で、す」」」

名乗り終わった刹那、ヨザクラ達は地を蹴り、飛んだ。三つの色付きの風がひとつに混ざり合い、白い騎士と衝突した。

◆◆◆

「イィィヤァァーーーーッ!」

ヨザクラの巨大な苦無が矢継ぎ早に振り下ろされ、その度に重い衝突音が響き渡る。まともに食らえば無事では済まない鉄塊を、白い騎士——ソフィアは剣と盾を駆使して紙一重で回避し、受け流していた。

打ち合いの隙を突くようにイズミが走り込む。ソフィアに捌かれて体勢を崩した巨体の足を居合で斬り飛ばす。そのイメージを描きながらイズミは鞘に納めた刀に剣気を込めた。

「ッ!?イズミさん!」

ソフィアの警告。イズミは見た。ヨザクラの胴体から更に一対の腕が現出し、印を結ぶ様を。

「ウッソだろ?!」

「咲いて…裂いて…舞い上がれ!桜花繚乱!」

術の発動と共に膨大な桜吹雪が舞い上がる。その花弁は全てが刃。それが紅の雲の如く群れとなり、イズミに殺到する。

「させませんッ!」

桜花の奔流にイズミが呑み込まれる寸前、ソフィアがその前に立ちはだかり、光の翼を展開した。聖騎士パラディンの奥義、パッセージ・オブ・アームズ。ごう、と音が響き障壁に覆われたソフィアとイズミを奔流が飲み込む。桜の刃に押されて削り取られていく翼を、ソフィアは歯を食いしばって懸命に保った。奔流は通り過ぎ、翼の障壁もまた霧散する。

「ぐッ……ご無事で?!」

ソフィアは膝をつき、呼吸を整える。

「無事!ていうか、また来る!」

イズミの警告にソフィアは顔を上げる。あちこちに振り撒かれた桜吹雪の塊。異形の忍びはそこへ目に見えるほどはっきりとしたエーテルを流し込んでいる。

「我が花遁の奥義を見せてくれる…!」

イズミはソフィアに肩を貸し立ち上がらせる。その様を見た青髪の陰陽師——トキモリは棒で大地を叩き、凄まじい速度で印を結んだ。

「心無となり、うつろう風の真相。不変なる律を聞け!」

「爆ぜよ…」

「不変不動!」

ぎしり、と鈍い音が響いた。ヨザクラは最後の印を結べない。

「二人共!今のうちに!」

「感謝します!」

トキモリの声に二人は応え、程なく術の圏外へ逃れた。トキモリは術を解くと、再び後ろへ下がり、結界維持の役目に戻った。ヨザクラはトキモリを睨んでいたが、再び躍りかかってきたソフィアとイズミに刃を向け直した。

トキモリの額に汗が流れる。ヨザクラの禍々しい視線は人のそれではなかった。得体の知れない悪意を前に、秘めた決意がぐらりと揺らぐ。トキモリはかぶりを振って邪念を振り払う。これは他でもない、自身が決めた戦いなのだ。

——ヨザクラを、救い出すのだ。

◆◆◆

「ヨザクラさんが、まだ生きていると?」

「あぁ、お主が六根山で見聞きした事を勘案すると、そうなる」

遡ること数日前。クガネの望海楼ぼうかいろうに呼び出されたソフィアは、陰陽師トキモリから思いもよらぬ話を聞かされた。

「でも、彼女は怪異が山に溢れた時に命を落としたと…」

「あぁ、証言したのは他ならぬ私だ。だが、殺される瞬間をこの目で見たわけではない。山から逃げられなかったあやつを、死んだものと判じた」

トキモリは淡々と語る。

「しかしあやつは、お主が山を登るたび立ちはだかって来た。そうだな?」

「…えぇ」

ソフィアはぎゅっと拳を握った。怪異に堕ちたものにせめてもの安らぎをと、手心を加えずに斬った。そのはずだった。だが、彼女は幾度も現れ続けた。

「あの胡散臭い商人はヨザクラの骸が操られていると断じていたが、それでは辻褄が合わぬのだ」

「……分身、だったのでしょうか」

「或いは口寄せ、それに類する術。ともかく奴は複数いるのだ」

トキモリは窓際まで歩き、水平線を見た。空には巨大な劇場艇が浮かんでいる。

「分身も口寄せも、そう簡単に無から生じたりせん。心核が必要だ」

トキモリは窓枠を強く握った。

「それゆえに、あやつはまだ死んでおらん。死んでいては心核足り得ぬ…」

「だからどこかに囚われている…。そうおっしゃるのですね」

ソフィアの声に、トキモリは振り返り、頷く。そして苦しげに続けた。

「これはただの推論だ。なんの確証もない。山に蠢くあの怪異を、全て改めていくしかない。ヨザクラはとうの昔に果てておるやも知れぬ」

ソフィアはそれを黙って聞いている。

「だが……あやつは、あやつは仲間なのだ。希望があるなら、私はそれに縋りたい」

トキモリは膝をついた。

「頼む、紅蓮の解放者よ。力を……力を貸してくれ」

「頭を上げてください。トキモリさん」

いつの間にか、ソフィアはトキモリの傍に跪いていた。

「わたしも、貴方の推論に乗ります。やりましょう」

ソフィアはトキモリを立たせ、強く手を握った。

「……恩に着る」

トキモリもまた、その手を強く握り返した。

「……山に潜む怪異を追うなら、狩人の力を借りましょう」

「狩人?」

ソフィアは耳に指を当て、リンクパールを接続した。

「もしもし?イズミさんですか?」

——そうして、トキモリは己の手勢と英雄、そして狩人と共に六根山に入った。山に潜んでいたヨザクラの怪異は、ソフィアが呼び寄せた狩人イズミによって次々と見つけ出された。あまりの精度に陰陽師達は「あの女も同類なのではないか」と囁く有様であったが、イズミはただニヤリと笑うだけであった。

そして今、最後に残ったヨザクラが目の前で暴れ回っている。ここまで見つけ出したヨザクラは、討ち倒したそばから霧散し消えていった。この個体で何もなければ、それはつまり——。いいや、とトキモリは気を引き締めた。俺が挫けていては、俺を信じて戦う解放者殿や部下達に申し訳が立たぬ。解放者殿は必ず好機を生み出してくれる。それを信じるのだ。トキモリはヨザクラを閉じ込める檻を崩さぬよう、術に力を注ぎ続けた。

◆◆◆

「だあぁぁぁぁぁーッ!」

ソフィアが盾を振るい、ヨザクラの巨木のような足を殴打する。エーテルを込めた一撃が火花を散らし、怪異の巨体をよろめかせた。

「グゥゥゥゥ……!呪木よ、芽吹けッ!」

印が結ばれた瞬間、大地を割って蔦草が飛び出した。それらは一瞬で撚り合い、大蛸の触手の如く蠢いて騎士を捕らえようとする。

「やらせるかァ!」

そこへイズミが跳躍し、全方位へ斬撃を見舞った。居合術天下五剣の前に、蔦の触手はボトボトと地面に落ち、枯れ果てた。

「ソフィア!あと何発?!」

「二……いえ、あと一撃あれば!」

「わかった!じゃあプランBね!」

「なんでしたっけ?!」

「各々最善の行動を取られたし!」

「了解です!」

イズミは鉤縄を撃ち出し、高く跳躍した。一方のソフィアは両足のエーテルを燃やし、一気に駆け出していく。

「ガアァァァァァァァァッ!!!」

ヨザクラは鉄塊の如く巨大な苦無を振り回し、イズミを撃ち落とさんとする。致死の一撃の嵐の中で、イズミは身を捩り、或いは愛刀で苦無を受け流しながらヨザクラの指に斬撃を見舞い、霧散させた。保持出来ず落下した苦無が地面に突き刺さる。ソフィアはそれを紙一重で避けながら走り抜けた。

苦無に描かれた文様に、ソフィアは見覚えがあった。あの文様と武器の形状はブレイズサトゥルティー。ボズヤ解放戦争の最中で生み出されたアーティファクト、レジスタンスウェポンが一振り。花遁のヨザクラは、あの泥沼の戦場にいたのだ。

「…あの戦場で、あなたにお会いした覚えはありません」

ソフィアは大地を駆けながら、独りごちる。

「でも、あなたの戦いが、きっとわたし達を助けてくれていた」

ソフィアの身体がこれまでになく光り輝く。

「だから、わたしもあなたを助けたい!」

ヨザクラの多腕が印を結び、あらゆる忍術がソフィアに襲いかかった。閃光、爆炎、爆発が荒れ狂う。だが、ソフィアはそれをものともせずに突き進む。聖騎士にだけ許された究極の絶対防御、インビンシブルであった。

「これでッ!」

ヨザクラのつま先目掛けて、ソフィアは盾を打ちつけた。エーテルの衝撃が煌めき、ヨザクラはたたらを踏む。ソフィアはそのまま駆け抜けると、盾を地面に突き刺して急制動を掛け、仲間に号令をかけた。

「イズミさん!トキモリさん!やりますよッ!」

「オッケー!」

「承知したッ!」

そしてソフィアは剣を高く掲げ、叫んだ。

「爆ぜろ!ホーリースピリット・チェイン!」

瞬間、ヨザクラの四肢に星座の如き光の線が描かれ、爆発した。

「ギィヤァァァァァァァァァァァッ!」

耳をつんざく絶叫が六根山に響き渡る。ソフィアはヨザクラと打ち合う度に、その身に魔法の地雷を埋め込み続けていたのだ。それが今、一斉に爆発した。砕けた四肢からどす黒いエーテルが霧散していく。ヨザクラはそれでも倒れず、己の心核を振り絞ろうとした。怪異の意識は全てそこに向いていた。だから、首筋に深々と喰い込んだ鉤縄に気が付かなかった。

「ブッ倒れろッ!」

イズミは目を血走らせ、ヨザクラに絡ませた鉤縄を引いた。ぎしりと音を立てて鉤縄が伸び切る。小柄な女剣士が己の何倍もある怪異を引き倒そうというのか?出来る訳が無い。だが、彼女の足元には赤い硝子の小瓶が転がっていた。貼られたラベルは「剛力の幻薬G8」。今のイズミには尋常ならざる膂力が宿っている。出来る。出来るのだ。

「イィィィィィ…………ヤァァァァァーーーーーーーッ!!!」

渾身の力を振り絞り、イズミは怪異の脳天を大地に叩きつけた。土砂が舞い上がり、着弾地点から蜘蛛の巣状の地割れが幾重にも生じた。ヨザクラはもはや叫び声も上げられず、凄まじい形相で失神している。解かれた鉤縄は巻き上げ機構により、イズミの籠手へ戻った。反動でたたらを踏んだイズミだったが、どうにかこらえて前を見据える。自分のすぐ横を、トキモリが駆けていった。

トキモリは引き倒されたヨザクラの胴体に駆け上がり、胸部の上で瞑目した。視界を断ち、気の流れを読む。足元に広がる禍々しい蠢きのその中に、ほんのわずかに光る桜色の光を見た。とても弱々しい光は今にも消えてしまいそうだった。——そこにいるのか、ヨザクラ!

トキモリは印を結び、術式を組み上げる。確固たる意思と共に、真言を詠唱する。

「人の手の為す偽りの全て、幻を天に帰す…!」

トキモリの右手が貫手の形を取る。その手にはトキモリの魔力と想い、全てが込められていた。

「絶装……魔脱ッ!」

叫びと共に繰り出されたトキモリの貫手が、ヨザクラの身体を深々と貫いた。そして、トキモリは掴んだ。怪異の心核を。

「グッ……うおぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁッ!!!!」

トキモリは怪異の身体を思い切り蹴り、その手を引き抜いた。禍々しいエーテルと共にトキモリの身体が宙を舞い、彼は右手を庇いながらどさりと地面へ落ちた。

「トキモリ様!」

結界の外で待機していた陰陽師達が大慌てで駆け寄ってくる。トキモリは己を強いて身体を起こすと、部下に向かって叫んだ。

「小槌をッ!」

「承知!」

陰陽師が懐から小さな槌を取り出し、トキモリに渡した。トキモリは小槌を握りしめ、祈りの言葉を呟いたのち、心核に小槌を振るった。瞬間、広場は眩い光に包まれた。トキモリは、明るい闇の中に桜の花弁が舞うのを幻視した。

——ヨザクラ、頼む。生きていてくれ。

光はどれほど放たれていたのであろう。一瞬のようであり、永遠のようでもあった。光が消えた時、トキモリの目の前に横たわっていたのは、一糸纏わぬ姿のアウラの女だった。白い尾と羽のような角、黒髪の女だった。

「ヨザクラ!」

「ヨザクラ様!」

トキモリと陰陽師達はヨザクラと思しき女に必死で呼びかけた。反応はない。だが、彼女は還ってきたのだ。

「グオアァァァァァァァァァッッッ!!!!」

トキモリの背後から絶叫が響いた。トキモリは反射的にヨザクラを抱きしめ、振り向いた。ヨザクラという心核を失った怪異はもはや人型を保てず、不定形の肉塊へと変じていた。ぼこぼこと肉塊が泡立つ異様は、直視すること自体が正気への挑戦である。だが、トキモリは狂気に屈することなく、怪異を見据えた。そして、その目線の前に、刀と盾が交錯した。

「やりましたね。トキモリさん」

解放者ソフィア・フリクセルは輝くような笑顔で、トキモリを称賛した。

「あとは、私らの仕事だよ」

狩人イズミ・アオバは血を吐き捨てながら、不敵に笑った。

「ィギャアアァァァァァァァァァァァァッッ!!!」

怪異は仮足を無数に生やし、それを人間達に打ち据えようと踠いた。

——だが、それが為されることは無かった。

「ブレード・オブ・ヴァラーッ!!!!」

「奥義!波切りッ!!!」

断末魔は六根山の峰々すべてに響き渡った。

◆◆◆

◆◆◆

◆◆◆

「世話になった。解放者殿、そして、狩人殿」

トキモリはソフィアとイズミに深々と頭を下げた。

「いいえ、一番の功労者は、あなたですよ」

「大した胆力だよ。やるね」

トキモリはわずかに笑い、かぶりを降った。

「……ヨザクラがどうなるかは、正直わからぬ」

トキモリは南の空を見つめた。いくら呼び掛けても、ヨザクラは目を覚さなかった。彼女の身柄は一足早く陰陽師達がウズミビの領地へと運んでいった。

「だが、死んではおらぬ」

びゅう、と風が吹き抜けた。

「ならば、希望はあるはずだ。そうであろう?解放者殿」

ソフィアはにこりと笑い、頷いた。

「……わたしたちの国の医師達にも、ヨザクラさんのこと、伝えておきます。何か助けになるかもしれません」

「……何から何まで、痛み入る」

トキモリはもう一度深々と頭を下げ、踵を返して大隼に跨った。

「謝礼はすぐに組合ギルドに。あぁ——」

トキモリは英雄二人が泥だらけであることに、今更ながら気づいた。

「——東側の山道は厳しい道だが、途中に絶景の温泉がある。紫洲の自然を、楽しんでくれ」

「怪異だらけの山で風呂に入れっての?!」

「今更お主らを襲う怪異などおるわけなかろう」

「だってさ。どうする?」

「ちょっと釈然としませんが、お言葉に甘えさせていただきます!」

紫洲の空の下、ささやかな笑いが響いた。そしてトキモリは隼の手綱を握り、彼方の空へと去っていった。後に残ったのは、泥だらけの娘二人である。二人はトキモリの消えた方角をしばらく眺めた後、おもむろに東の登山道へ歩き始めた。

「……ソフィア、水着とか持って来てる?」

「実は、下に着てました」

「嘘でしょ?」

「嘘です」

「なんで嘘ついたの?」

「でもカバンには入れてますよ」

「用意がいいねほんと」

「イズミさんだって持ってるんでしょう?隠し武器たくさんお持ちなんですから」

「一緒にしないでよ」

「持ってないんだったら貸しますよ」

「なんでそこまで用意してんの?」

——そして彼女らの他愛もない会話は、静謐な山の中に消えていった。

【了】

EDテーマ

三月のパンタシア/花冷列車

ライナーノーツ

はい、ということでね。6.4ヴァリアントダンジョンの「花遁のヨザクラ」があまりにも可愛かったと思ったら解説で「すでに殺されてます」って書かれて、おい!そりゃねーよ!そりゃねーだろ!と思い、どうにか自分の納得できる形で生存ifルートを捏造しました。トキモリさんについてもかなり独自設定モリモリです。陰陽師なんだからFFTの陰陽術は使えるだろ…と思い、FFT使用のスキル構成です。棒装備も同様。ソフィアさんとイズミさん、なんだか最近はすっかり二人一組で戦うイメージになってきました。それでいて、お互い必要なときだけ呼び合うという、付かず離れず微妙な距離感は大事にしていきたいと思います。あと、今回のイズミさん別ゲーネタは、はい、FF16です。ガルーダはインフラ。それと、ヨザクラの攻撃も放っておいたら千本桜になってしまいました。しかたないだろ!世代なんだよ!


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