タクティカルクリスタルを移送してください
「ソフィさん、星救ったんでしょ?じゃあソフィさん倒したら、私が一番だ!」「そうは…させません!」凄まじい勢いで繰り出されるブランの槍をソフィアは紙一重で回避し続ける。新たなる模擬戦、クリスタルコンフリクトの戦場で二人は相見え、鎬を削っていた!
「よーし高まってきた!おりゃーッ!」間合いを取ったブランが空高く舞い上がり、視界から消えた。竜騎士の大技、スカイハイである。周りの戦士達は5秒後に訪れる落下攻撃スカイシャッターに備え、守りを固める。だがソフィアも負けじとエーテルを解き放ち、聖騎士にあるまじき跳躍を放った!その背中にはパッセージ・オブ・アームズの翼!
「ここで食い止めますッ!」光の翼の勢いで強引に宙を舞うソフィアは盾を天に掲げ、大技ファランクスを発動させる。刹那、ブランのスカイシャッターがソフィアの盾を直撃!パライストラ上空で竜騎士と聖騎士のエーテルがぶつかりあい、光を迸らせて拮抗している!
「やるねソフィさん!だけどッ!」ブランは推進エーテルを更に燃焼!予想外の一手が彼女の闘争本能を滾らせ、ソフィアのファランクスを貫こうとする。「やらせる…ものですかッ!」
不利を悟ったソフィアはファランクスのエーテルを凝縮。渾身の力で腕を振るい、ブランの切っ先を逸らした!拮抗が崩れた二人はそれぞれがエーテルの尾を引きながらあらぬ方向へ吹き飛んで行き、やがて演習場外縁に墜落した!
砕け散った障壁の瓦礫の中からソフィアとブランが這い出し、立ち上がったのはほぼ同時だった。演習場を挟んで対角同士。肉眼では豆粒のような距離であるにもかかわらず、互いの目が合う。二人は流れる血を拭うとニヤリと笑い、駆け出した。
二人がぶつかり合ってる間、すでに試合の勝敗は決していたが、もはやそんな事はどうでも良くなっていた。今はただ、純粋にどちらが強いのか、それを証明し合うのみ!ブランの槍とソフィアの剣、凄まじいエーテルが込められたそれらが振るわれる度、パライストラの床は割れ、防壁は粉砕されていく!試合終了後の他の戦士達は這々の体で逃げるのが精一杯だ!
「天竜点睛ーッ!!!」
「ブレード・オブ・ヴァラーッ!!!」
演習場がエーテル爆発に包まれていくのを、いち早くその場を去った黒魔道士ライラ・ミーアが冷めた目で見つめていた。
◆◆◆
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イズミは読み終えた新聞をラックに戻し、荷物を背負って宿を後にした。コルヴォ地方は先の終末で大きな被害を受けたが、この街は比較的復興も進んでおり、活気もある。いずれここにも冒険者ギルドの受付が出来るかもしれない。
…それしても世の中にはマナーのなってない冒険者もいるものだ。ソフィアはそういうのを見掛けたら我先に「いけませんよ!」などと怒る優等生だったな。今頃同じ記事を読んで、ぷりぷりと怒っているかもしれない———イズミはそんな事を思いながら宿の裏の鳥繋場に向かった。
【了】
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