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『SHŌGUN』リメイク版 石堂和成にまつわるエトセトラ

皆さんもう見ましたか、Disney +で放映中の『SHŌGUN』!  筆者もさっそくハマりまして、今回はとくに気になるメインのライバルキャラ・石堂和成の情報を公式ソースやメディア記事から集めてみました。大河や時代劇などでお馴染みの三成像「能吏」「くそまじめ」「空回りもしがち」「主家に義理堅い」などがキッチリおさえられている一方で、独自のスパイスもきいていて大変面白いキャラに仕上がってますよね。完全ネタバレを含みますのでご注意下さい。以下、随時更新。





◆石堂のキャラクター造型

レイチェル・コンドウ(以下R、ショウランナー兼脚本家): 2話目で気に入っているシークエンスは、石堂の朝支度です。彼がひとりでいる時どうしているのかを垣間見る断片的なシーンですが、同時に虎永の何が石堂の気に障っているのかもわかる作りになってます。つまり、最初に自分の具足に目をやり、シークエンスの最後に太閤の、あのいかにも立派な具足を眺めるでしょう? それに比べて石堂の具足は──別に悪くはないんですよ? 機能的な作りですし。でもあまり見映えはしない。それにあのシーンでの彼は、いかにも官僚的な朱印の重みを、自分と虎永の違いだと感じているんです。つまり虎永は長らく日の本を治めてきた、ほとんど伝説的ですらある美濃原将軍家の生まれという設定で、石堂にとっては癪にさわる存在なんですよね。虎永は生まれついてのリーダーだけれど、石堂は努力しなければリーダーにはなれない。だから虎永にはつい喧嘩腰になってしまうんです。

エミリー・ヨシダ(以下E、スタッフライター兼ポッドキャスト司会): 驚く方もいるかもしれませんけど、石堂は──当番組のキャラクターである石堂にしても、歴史上のモデルである石田三成にしても、元々は平民なんですよね。名門とされるサムライの家には育ってこなかった。そこは太閤も同じでしたよね?

R: ええ、太閤も低い身分から天下人に成りあがった人物です。太閤と石堂のような苦労人と、その社会の中で元から超越的な地位にあった虎永には大きな違いがあります。そこがスタイルの違いにもつながって来るんですよ。そもそも虎永は策略家でしょう? 石堂や太閤の世界観だと、自分にふさわしいと思ったものはなりふりかまわず戦って勝ち取るものだけれど、虎永のような人物の場合はまったく異なった戦略を採るんです。

ジョナサン・ヴァン・トゥレケン(以下J、第2話監督): あの石堂のシーンでのユーモアはかなり気に入ってますね。彼はあの(太閤の)具足を羨ましがっていて、ねたんでもいるような節もあるんですよ。権力の座についている人間が、この地位は案外楽しくないぞと気づいているというのは非常に人間臭いものがありますよね。権力の座というものもやはり仕事で、しかもデスク仕事。やっていることは官僚なんですよ。それに石堂は、華々しいスター性がある虎永と違って自分はひたすら書類に印を捺す事務屋で、形式にがんじがらめにされている人間だと自覚しているんです。自分の具足だってあるけれど、もうちょっといい具足だったらいいのにな、とも思ったりして、非常に現実味がありますよね。

E:ヴィランとしての石堂にはどうアプローチしたんでしょう? ぱっと見た感じですと彼は、あまり応援したくないキャラクターの条件をほぼ満たしてるような気もしますけど。

J:ええ。私が思うに石堂の実に面白いところは、多くの点でそこなんです。彼もちょっとこの話のヒーローにあたるキャラクターなんですよ。色々な意味で「正しい」人物を取り上げるのは楽しかったですね。石堂の言っていることや他の人々に訴えていることは大抵間違ってはいないんだけれど、正しいことを言うだけでは駄目だから苛立ちを募らせてもいるんです。そのためには、しかるべき人物であることも必要なんですよね。そういうキャラクターなので、石堂のキャスティングは本当に手を尽くして、虎永の強敵になってくれそうな俳優を探したんです。くたびれきって、先も長くなさそうな老人ではなくね。タケヒロ(平岳大)に決めたのもそれが理由です。彼は石堂という、自分だって虎永のような傑物になれるはずだと思いながらもなかなか上手くいかないキャラクターに、ただならぬ真実味をもたらしてくれました。
物語に説得力が出たのも、演出していて楽しかったのも、二次元的でない奥行きと今の世の中にも通じる要素を備えたキャラクターたちのおかげです。たとえば、自分たちのリーダーは慎重に選ばなきゃいけないという点にしてもそうですよね。そういう選択を、人は間違った理由で行いがちですから。
さらにこの物語が終わる時、登場キャラクターの全員について視聴者がどう感じているかも興味が尽きないところです。たとえば今のブラックソーンはどうかというと、完全に間違ってる時もあるでしょう? レイシストだし、ちぐはぐだし、混乱していて頭も固くて頑固な人間です。でもゆくゆくは好きになる。あるいは、そうなってくる。人への愛着というのは、人格に問題があっても、むしろ問題があるからこそ湧くものですからね。


◆石堂役・平岳大インタビュー①

インタビュアー:『Shogun』は比類ないドラマになりましたね。俳優として一番の課題は何でしたか?

:一番の課題ですか。今回はセリフが日本語なので、日本語話者ではない視聴者にも自分のやっていることや、心の中で感じていることが伝わるような演じ方を心がけました。撮影中はそこがずっと気になってましたね。

インタビュアー:フィジカル面での準備はどのように?

:そうですね、キャラクターの名前である「石堂」には「石の建造物」や「石の壁」のような意味があるので、虎永が将軍への道を辿る上でのそういうイメージの存在になることを目指したんですよ。ですから、筋肉増強に努めてました。

インタビュアー:その秘訣は?

:プロテインドリンクです!(笑)

インタビュアー:(笑)効き目出てますねぇ! お聞きしたいんですが、『Shogun』と『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』はどちらの撮影が先だったんですか?

:『Shogun』が先です。文字通り、『Shogun』撮了の翌日に私とアンナ(・サワイ、鞠子役。ともに『モナーク』にも出演している)で『モナーク』の現場へ移ったんですよ。タイムスリップみたいでしたねえ。とくにこの『Shogun』ではお互いの命を狙い合うような政敵同士の役だったのに、『モナーク』では父娘役でハグとかしますから(笑)。

◆石堂役・平岳大インタビュー②

インタビュアー:最初の五大老の会合シーンの撮影はいかがでしたか?

:席上では私が一番偉そうにしているんですが、本人としては変に威張りたくないとも思ってるんですよ。慎重に様子を見ながら、ほら誰のメンツも潰してないだろ、でも俺がリーダーなんだから俺の言うことは聞けよ、と思っている感じですかね。

インタビュアー:なぜ石堂は虎永に脅威を感じているんでしょう?

:石堂は平民生まれなんですが、一方の虎永は名家の出身です。石堂は現場の叩き上げで、何もないところから自力で這い上がらなければいけなかったんですけど、虎永はいわゆる「銀のスプーン」で食事を口に運んでもらっていたような人物です。そこに我慢がならないんですよね。


◆石堂豆知識集

・自室の掛け軸に書かれている言葉は 「山濤識量」で、竹林の七賢のひとりである山濤のように豊かな度量と見識を兼ね備えた者のたとえ。出典は『蒙求』

・衣装デザインを担当したカルロス・ロサリオによれば、虎永のイメージカラーは「茶、銅と金」で、石堂は「グレー」。

・イメージカラー以外にイメージ属性も考えており、石堂の場合は「火と灰」。帯や紐などの差し色にオレンジが使われているのはそのため

・第1話で石堂の着ていた直垂に白雉柄の生地が採用されたのは、その前の鷹狩りシーンで虎永が雉を狙っていたためで、ふたりの敵対関係を象徴しているそう。当初は虎柄も候補になっていたとのこと

・石堂の英語吹替キャストは『ゴースト・オブ・ツシマ』境井仁のフェイスモデル、モーションキャプチャーアクター、声優を担当したダイスケ・ツジ氏(他にも兼ね役あり)。ちなみにツジ氏はビデオゲーム『Mortal Kombat 1』でのスコーピオン役も担当している