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環境問題を理解するために知っておきたい「ゼロカーボン」

さあ、火曜日だ。
火曜日は環境問題について書く日だ。
先週は温室効果ガスとはどのようなものかについて書いたが、今日はその続きとして、我々が求められている「ゼロカーボン」について書いていこうと思う。

まずは先週のおさらいをどうぞ。


菅首相の宣言

2015年のCOP21において採択された「パリ協定」は、今世紀後半までに世界全体で温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという目標を掲げたものだ。

日本は当時の安倍首相がパリ協定に署名(各国とも検討期間を有することができるので署名自体は2016年に行われた)したものの、2011年に東日本大震災による福島第一原発の事故の影響で、原子力発電が先行き不透明な状態になっていた。当時、原発無しにゼロカーボンを目指すのは非常に困難と誰もが思っていたのである。にもかかわらず菅首相は2020年の所信表明演説で「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」と宣言した。

なぜ非常に困難な宣言をしたのか

その背景は大半は中国とアメリカにある。
京都議定書の頃(1997年)は温室効果ガスを削減することで経済の成長が阻害されると考えられた。その結果ブッシュ大統領は京都議定書から離脱する決断をしたのだ。しかし、パリ協定においては、中国が先陣を切って批准を表明し、国策としてEVの生産を推し進め、今や世界最大のEV生産国となっている。アメリカも一旦はトランプ大統領によって(石炭産業を守る目的で)パリ協定から離脱したが、バイデン大統領になって協定への復帰を表明し、出遅れを取り戻そうとギアを入れている状態だ。

なぜ、京都議定書の頃(1997年)とこんなにも違っているかというと、先週の「温室効果ガス」の回でも書いたように、この20年の間で世界的な気候の変動が顕著になっているということもあるが、経済界の意見に後押しされているところも大きい。世界的に、企業に対する投資の基準が、目先の利益の追求よりも、その企業が長く安定的に継続できるかというところを重要視するようになってきた。また課税率や関税などの優遇措置が設けられている国もある。その結果、多くの巨大企業が自然環境や社会への貢献、ガバナンスなどを強める傾向となっている。そしてそれはサプライチェーンに関係する中小企業に対しても同様の基準を求めることとなっていることが多いのだ。もし、AppleやAmazon、TOYOTAなどと取引をしている会社の方がいらっしゃったら、そのあたりご納得いただけると思う。

ゼロカーボンを実現するとはどういうことなのか

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