見出し画像

チェルノブイリ

チェルノブイリ原子力発電所爆発事故を詳細に描いている傑作。

画像1

⭐1話目⭐1986年4月26日1時23分原子力発電所爆発

炉心が爆発した時点で直ちに避難しなければいけない状態なのに原子力発電所の幹部は事故を過少に報告。放射能が舞っている中を消防士が消化活動していたり、住民が爆発現場の近くを見学している風景は、背筋が凍る思いであった。被害を被るのは一般市民なのだと強く実感させられる。

画像2

⭐2話目⭐現場検証

ゴルバチョフ書記長によってシチェルビナ副議長とレガソフ博士をチェルノブイリに派遣させる。現地調査へと向かった二人は爆発によって剥き出しになった炉心によって発せられる黒煙を目の当たりにする。世界でチェルノブイリ原発事故が報道されてから、住民の一斉避難が始まる。住人のいなくなったキエフ州に物理学者ウラナ・ホミュックがやってくる(様々な科学者を組み合わせて作り出した複合的なキャラクター)。

シチェルビナ副議長を演じるのがステラン・ステルスガルド、物理学者ウラナ・ホミュックを演じるのがエミリー・ワトソン。この二人は、ラース・フォントリアー監督作品「奇跡の海」以来の共演。「奇跡の海」は大好きな作品なので、「チェルノブイリ」での二人の共演シーンを観る度に心躍る気分であった。

画像3

⭐3話目⭐KGB

貯水池に溜まっている汚染水を三人の志願者により抜くことができたが、メルトダウンが起こり始める。KGBが監視も始まっている。チェルノブイリ原発事故を収束させるために奔走している副議長、学者の会話を全て盗聴している。そして、危険であることを知らせずに政府は石炭工の人々をチェルノブイリに送り込む。炉心の溶け出した燃料を最小限に留めるための土台を作るためだ。それを防護服無しでやらせるなんて狂気の沙汰だ。

三話目で目を引くのは、放射能を浴びた消防士とその妻の再会シーン。症状が治まっている夫とハグするシーンから始まり、放射能によって細胞が破壊されて寝たきりになった夫の看病をしている。放射能に汚染された患者の末路がどうなるのか克明に描写されているので胸に迫る。

画像4

⭐4話目⭐掃討作戦

冒頭の心揺さぶられるシーン。

老女が牛の乳を搾っている。後ろに民兵の若者がひとりが立っている。

牛舎内(昼)

民兵:さぁ、行こう。聞いてるか?あんたは避難しなきゃならない。一緒に来るんだ。

老女:(牛の乳を搾りながら)なんで?

民兵:上からの命令だからだよ。全員ここを出てもらう。放射線量が高くてここは危ないんだ。

老女:あたし、いくつにみえる?

民兵:知らねぇよ。年寄(に見える)

老女:82歳。ずっとここで暮らしてきた。この村、この家でず~っとね。何が危ないもんか

民兵:仕事なんだ。面倒かけるな。

老女:面倒?兵隊に銃で脅されるのは初めてじゃない。私が12の時に革命が起きて、皇帝軍がきた。その後はボルシェビキ。列をなしてやってきた兵隊に出てけと言われて断った。スターリンの危機にも見舞われた。ホロドモールだよ。両親が死に、姉たちも二人死んだ。よそに移れと言われても断った。で、大祖国戦争。ドイツ兵もロシア兵もきた。そして戦い、飢饉で大勢が死んだ。兄弟は帰ってこなかった。それだけのものを見てもまだ私はここに残った。それを放射線とか見えもしないものに脅えて出て行けって?嫌だね。

   民兵、老女の搾った乳牛のミルクが溜まったバケツを取り上げて外にミルクを捨てる。トラックの運転席に民兵2、そして住民が待っている。

民兵2:早くしろ!

民兵:すぐに行く!

   民兵、老女の所に戻り

民兵:外に出ろ!

   老女、バケツを元の場所に戻して乳を搾り始める。

民兵:(懇願するように)さぁ、立ってくれ!

老女:「・・・・・」

   民兵、銃を抜いて

民兵:最後の警告だ。

老女:「・・・・・」

   民兵、銃を撃つ。倒れる乳牛。

民兵:さぁ、行くぞ

   老女の後ろ姿をゆっくり映して暗転

高齢者が強制的に移住させられたが、新しい土地になじめずに居住地禁止区域に戻ったおばあちゃんたちがいる。そのおばあちゃんたちを追ったドキュメンタリーがあるのを4話目のオープニングを見て思い出した。

チェルノブイリ事故を収束させるために「リクビダートル=後始末をする人」がいた。発電所従業員、消防士、兵士、鉱山労働者、建設作業員、ボランティアらが多数従事した。 

一番過酷な任務は、建屋に散らばっている放射能に汚染されている瓦礫処理。ひとり「90秒」の仕事を交代で行う。「90秒」以上その場所にいると死ぬのだ。死と対峙する仕事に何人の人々が従事したのか・・・。考えるだけでも怖ろしい。

画像5

⭐5話目⭐真実

チェルノブイリ原発事故の真実を知るレガノフ博士は、KGBの監視に脅えている。チェルノブイリ事故裁判の証言する機会を与えられているレガノフ博士にホミュック博士は真実をはなすように進言するが・・・。

この作品の結末は皆さんの目で確認していただきたい。


日々観た映画の感想を綴っております。お勧めの作品のみ紹介していこうと思っております。