『心中するまで、待っててね。』感想

こんばんは。

市梨きみ先生作『心中するまで、待っててね。』の感想です。上下二巻完結、致しシーンと少しのグロ有、シリアス。

何を隠そう、こちらがnoteに突発的に登録した理由の漫画です。
軽い気持ちで購入、そのまま読んだのが間違いでした。他の方が感想でおっしゃっている通りバッドエンド…バッドエンド、なのでしょうか。私には分かりません。

誰からも優しいと言われる、お人好しの福太。引っ越してきたアパートの扉の前に、葵兄ちゃんがいる。ずっと大好きだったはずなのに、何故か忘れていたお隣のお兄ちゃん。葵兄ちゃんは、昔のままの姿で現れた。昔のままの、子供の姿で。思い返そうとすると、記憶に欠落した部分がある。大好きだった、福太のヒーロー。それは、開けてはいけない記憶。

…あらすじの時点で不穏な空気が漂っていますね…。
二巻一気に読ませていただきました。一巻はかわいくて、えっちで、幸せで、キラキラしてて…いえ、たぶん、各所に散りばめられた不安から目を逸らしていただけですね。二巻に入って大きくなっていく不安に、ああ、一巻のあのシーンはこういうことかと、ああ、あれは缶の底だったのか、と。
もしあのままだったら、今よりいくらか幸せだったんじゃないかとか、でも、そうしたら葵兄ちゃんはあのままあそこに居続けることになるからとか、それならやっぱりあれがまさしく二人の幸せだったのではないか、とか。でもそれは、他の誰かが決めていいものじゃない、二人の決断。真っ白い雪が、瞼に張り付いて離れない。読み返したいけれど、読み返すのが怖い。大泣きしながら読んで、目を冷やさなければいけないのに、冷やすそばから涙が止まらない。結局腫れたまんまです。
福太が痩せたのは、あのトラウマのためだったのでしょうか。福太は葵兄ちゃんが大好きで、葵兄ちゃんはまさしくヒーローで、だから耐えきれない罪悪感と悲しみに蓋をした。でも葵兄ちゃんにとってもそれは同じだったのではないでしょうか。だから福太に助けて欲しくて、福太を助けたくて、福太に守って欲しくて、福太を守りたくて。こんなに優しい二人が、どうしてこんな目にあわなくちゃならないのでしょうか。他の人の目にどう映ったとしても、二人が過ごしたあの時間はきっと本物だった。二人の笑顔も、二人の汗も、二人の涙も、幸せが詰まった二人の、二人っきりの時間が、たしかにそこにあった。物語が進むにつれて、二人が笑い合っているはずなのに、着実に"終点"に近づいていく。この世界のどこかで、ほんとうにこの二人が笑い合っているんじゃないか。この二人が泣いているんじゃないか。ひとりのこされて、泣いて、忘れようとして、それでも忘れられない愛が、あるのではないでしょうか。

とても濃い漫画でした。買ってよかった。読んでよかった。ただ、心が元気な時に読むことをおすすめいたします。

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