見出し画像

「経営目線で見た広報の存在意義」にヒントをくれた本のこと。

広報LT大会(Lightning Text) #PRLT Advent Calendar 2018 
https://adventar.org/calendars/3533 
の、9日目として参加しています。

最近、毎日が楽しいです。なぜなら広報LT大会アドベントカレンダーを読むという日課があるから。
広報LT大会(#PRLT)とは、広報PRに関する情報交換をメインに活動するコミュニティです。5分間のLT(Lightning Talk)大会を2ヶ月に1回のペースで行っています。私は初回開催時に登壇し、2回目から運営に携わってきました。

画像1

画像2


いつもはオフラインの場を大事にしているPRLTですが、この冬、オンラインでもPR担当がほとばしる想いを伝えまくる場を作りたい(なぜなら私が読みたいから)という思いがつのり、初めてアドベントカレンダーを立ち上げてみました。
毎日毎日、PR担当がそれぞれ、今年の振り返り、いまの悩みやその乗り越え方、これからがんばっていきたいこと、社内結婚してよかったこと、などが発信されています。その方の仕事生活を追随しているよう。いろんな企業の広報PRさんの毎日を体験できて、楽しい。超絶楽しいです。

そのアドベントカレンダー4日目、PRLTの代表である吉田ハルカちゃんが、若手広報担当がぶち当たる壁について、まとめて書いてくださいました。
従事年数によって、広報PR担当者が悩む内容は変化していくが、それらはおおむねこの5つに分かれているのではなかろうか。と。

画像3

(資料引用:http://prtips.hatenablog.com/entry/2018/12/05/001212

私はこの「経営とのリンク」で、この2年ほどすごぶる悩んでいました。

経営者ではない広報担当が、経営目線を持つためには?

社会人2年目にサイボウズという会社で広報に配属されたことが、私の広報キャリアのスタート。広報に理解がある会社で、のびのびと仕事させていただき、とても幸せな時間を過ごすことができました。
と同時に、広報PR業務に打ち込めば打ち込むほど、このグラフの「X(経営とのリンク)」に当たる部分の悩みが膨れ上がっていきました。
当時の私のキャリアは、広告宣伝・広報で埋められていました。限られた部門の業務にしか関わったことがなく、「労働者」カテゴリに属する人材にすぎません。このままの方向でキャリアを積んでも、経営に対して的確に進言できる人材になれるとは、到底思えなかったのです。
もう少し経営に近いところで広報・PRの可能性を探ってみたい。そんな思いで、2017年から20名規模のベンチャー企業に転職し、事業企画兼PRという肩書で、経営者の隣に座りお仕事をさせていただきました。

新しい会社で新規事業づくりや、研究事業のコーディネート等に従事する中で、経営における広報PRの重要性をますます感じたものの、うまく言語化して周りに伝えられずにいました。そして他領域の業務に圧迫され、広報PRの実務から遠ざかったことで焦る、という負のスパイラルに陥りました。つらかった。

実務経験だけでは太刀打ちできない。ようやく悟ったのが2017年の年末。
何かしら突破口を開きたい一心で、文字通り片っ端から本を読んでいた2018年の春先に、この本と出会います。

画像4

経営戦略の論理 〈第4版〉ダイナミック適合と不均衡ダイナミズム  
伊丹敬之(著)

企業の資産はヒト・モノ・カネ、そして「情報」

この本の著者である伊丹敬之先生によると、企業活動は「事業を拡大する(Ex:サービス・商品の展開)」「資産を蓄積する(Ex:資金調達・技術開発・採用)」「資産を効果的に運用する(Ex:財務健全化・人材育成・業務改善)」という3つの側面に分けられるといいます。そして、会社の資産を活用し、この3つを舵取りしていくことが経営。
本の中で伊丹先生は、企業が持つ資産のなかでも特に「見えざる資産」について、書籍内で重点的に取り上げていらっしゃいました。
この「見えざる資産」を企業に戦略的に形成することが、広報PRの存在理由であると、私はこの本を読んで確信することができました。

はい、突然現れたこの「見えざる資産」ってなんだ。

通常、企業の資産として挙げられるのは「ヒト・モノ・カネ」ですが、伊丹先生は、現代において「情報」も貴重な企業資産のひとつであると表明しています。ここでいう情報とは、企業活動においてヒトとヒトとが介し発生・蓄積・交換されるものすべてを指します。
たとえば。

・顧客が発信するサービス・商品の口コミ
・社内広報誌で発信された、とある部門の仕事に関するインタビュー
・業務上必要になって勉強し、社内のイントラで共有した、とあるWebサービスのカスタマイズ方法
・資金調達に向けた投資家へのエレベーターピッチ

と、他にも例はいくらでも挙げられるのですが、要はヒトとヒトが関わったときに発生するやり取りは、いいものも悪いものもすべて会社の資産になるということです。

顧客が製品やサービスについて、プラスなコメントを発信すればするほど、それは「ブランド価値」という企業の武器として蓄積されていきます。
サービスや商品展開において必要な技術(フィットする背もたれを持った椅子を作る木材圧縮方法とか)も職人を通じて伝承されていけば、それは「独自技術」として、すぐには他社に真似されない差別化ポイントとなります。社内広報や交流活動を通じ、従業員同士の壁が取り払われれば「風通しのいい雰囲気」といった、会社の風土形成にも繋がります。
ブランドや、業務ノウハウ、従業員のモチベーションなどは「情報交換」の結果積み上がった「見えざる資産」である、ということです。

画像5

※バリスタブラックは本当においしいです。伊藤園さんありがとうございます

人を介した情報交換を戦略的に行い、組織に必要な情報を蓄積する。

「ヒトとヒトが関わったときに発生するやり取りは、いいものも悪いものもすべて会社の資産になる」さすれば情報交換は、企業にとってマイナスの資産形成につながることもある、ということも、私達は心に留める必要があります。
製品サービスの悪い評価が広まること、非効率な業務オペレーション(紙の報告書とかさ…)、社員同士の会社の愚痴、などが例として挙げられます。であれば、「できるだけ会社にとってプラスな情報交換が行われて、会社にとってマイナスな情報交換が起こらないようにしたい」と考えるのが経営者の心。広報PR担当は、こうした企業の「戦略的情報交換」という課題に対し真摯に向き合うことが使命なのだと、私は思いました。

メディア露出を元にどんなコメントがネット上を飛び交うのか、どの研究機関とリレーションを築くことで有益な研究開発ができる基盤が整うのか、社内イベントを通じどんな会話が生まれると会社が楽しいと感じてもらえるのか…毎日の何気ない「情報交換」を設計し、企業に益となる「見えざる資産」を蓄積させることで、企業活動の3つの側面「事業を拡大する・資産を調達する・資産を効果的に運用する」の部分に貢献する、それこそが広報PRが経営に貢献するということなのかなと。

ここまで思考が進み、「広報は企業経営の全てに関わるもの」「PRを最上段において経営すべし」という諸先輩方の言葉が、より解像度高く私のモニタに映った感覚がありました。


みんなで企業の情報交換について考えてみた

私はすごぶる腑に落ちたんだけど、これに書いてあることって他部門の方や経営者は共感するのかしら…と思い、たまたまその時「広報が必要なのはわかっているのだが何をすればいいのかわからず悩んでいる」と相談を受けていた会社で、この本を使った広報勉強会を開催することにしました。

画像6

簡単な広報の歴史と概念のおさらいをした後、ワークショップ形式で自分たちのステークホルダーと広報の理想を整理してみました。

・自分たちのステークホルダーを付箋に洗い出す
・企業活動(事業を拡大する・資産を調達する・資産を効果的に運用する)に3つのカテゴリに、洗い出したステークホルダーを分けてみる
・関係構築を強化したいステークホルダーを3つ決める(この決め方は会社の意思決定の方法に沿うのがいいと思います。この時は社長の四宮さんに決めていただきました)
・ステークホルダーとカテゴリを踏まえ、どんな情報交換を図っていけば、該当するステークホルダーへの貢献と属するカテゴリの目標を達成できるかをディスカッション(例:既存顧客というステークホルダーに対し、「事業を拡大する」というカテゴリ目標)

「自分たちが毎日やっていることこそが広報なんだ」と社員さんが感じられることを目標にしたので、それは達成できたかなと思います。ただ、まだ粗が多く展開設計も甘いコンテンツなので、もっと研究と実践を重ねて、ブラッシュアップしていきたいと思います。(一緒に取り組んでくださる方がいたらぜひ連絡ください〜!)

まとめ:やっぱり本っていいよね。

「情報交換」を設計し、企業に益となる「見えざる資産」を蓄積させることで、企業活動の3つの側面「事業を拡大する・資産を調達する・資産を効果的に運用する」の部分に貢献すること、この考え方をベースに私はこれからも、実務に励んでいきたいと思います。
広報PR以外の領域に取り組みながら広報PRの可能性を探る、という仕事のやり方をはじめて1年半。伊丹先生のおかげで突破口も開けたし、2019年はこのテーマに何かしら自分の中でひとつ仕事として結論が出ればいい。

実務で相当行き詰まっていた私は、1冊の本との出会いでモヤモヤを吹き飛ばすことができました。書籍に触れて過去の諸先輩方の軌跡を体感し、自分の中の「見えざる資産」として蓄えていくのは大事だ。これからもたくさん本を読んで、じぶんの世界を広げていきたいなと思います。


おまけ、私の広報キャリアのスッタモンダはここで読めます。

おまけ、2月12日(木)に「採用広報」をテーマに17回目のPRLTを開催予定なのです。が、会場探しに超絶苦戦しています。70名規模のイベントスペースをお貸しいただける企業さんを絶賛募集しています。何卒、なにとぞ…!



読んでくださいましてありがとうございます〜