【短編】指を毛糸にくぐらせて(1)
ぬるいシャワーの水流が、日に焼けた肌を荒く伝い落ちていく。
水流が触れた箇所から、日光の熱さが蘇り、ひりひりと火照った。朝の通勤で日に焼けたのは何時間も前のことなのに、痛みが消えるのは何日も後になりそうだ。
ボタンを押して水温を三度低下させる。
シャワーの温度は熱波が訪れたマドリードの最高気温から、ひとの微熱に向かって少しずつ冷めていった。
薄く開いた窓から、樹木のにおいのする風がささやかに入り込む。
私はシャワーの水流を止めて、桜色の泡だてネットにボディーソープをかけ両