見出し画像

退職を決意する日は、突然やってくる

新卒で裁判所職員となり、退職するまでちょうど10年働いた。はたから見れば唐突に辞めたように思われたかもしれないが、実は裁判所に入ったときから辞めたいという気持ちは常に心のどこかにあったように思う。ただ、実際に退職の決意を固めるまでには、結果的に相当な時間がかかった。


最初のころからぼんやりと辞めたいと思っていた

裁判所で働き始めたときから、一番やりたいことではないな、という自覚はあったものの、自分に向いている仕事ではあったので、続けることはそれほど難しくなかった。ぼんやりと辞めたいとは思いつつも、最初のころはまだ退職を具体的に検討するまでにはいたらなかった。裁判所で得られるものを一通り吸収してから辞めようという思いもあった。ただ、いつか辞めることは最初から決めていたような気がする。

裁判所書記官4~5年目で、辞めたい気持ちが高まっていった

辞めたいという気持ちが高まっていったのは、裁判所書記官になって4~5年目ぐらいだったと思う。書記官の仕事に慣れて余裕ができたことで徐々に先が見えてきて、この先もずっとこの仕事を続けていくのか・・・と悶々とするようになった。

人事異動をきっかけにメンタル崩壊

退職を決意する直接のきっかけになったのは、それまでとは全く畑違いの部署への異動だった。それまでと仕事のやり方が全く違う上に、仕事内容に対する苦手意識も強く、大きく躓いた。人間関係にも悩まされて、そのころはだいぶ病んで仕事を続けるのが難しくなっていた。自分のやっている仕事が何の役に立つのかわからない、非効率で無駄が多いと感じるのに労働時間ばかり長い状況に嫌気がさしていて、やりがいも感じられず、仕事を頑張るモチベーションがまるで湧いてこなかった。もちろん、そのときの自分は視野が狭く、やりがいを見出そうとする努力が足りていなかったことも重々承知している。もっと経験を積んでいけば仕事の意義を見出せたのかもしれないとも思う。しかしその境地に達する前に自分のメンタルが崩壊しそうだった。仕事を好きになれないからいまいち頑張り切れず、結果上手くいかない→上司や先輩からも叱責される→より自信をなくし、仕事のモチベーションも下がる→仕事がもっと上手くいかない、という悪循環に陥ったまま、ぎりぎりの状態で仕事を続けていた。

退職を決意した瞬間

ある日、限界値を超える出来事があり、張りつめていた糸がぷつんと切れた。もう頑張れない、とはっきり悟った瞬間が退職を決意した瞬間でもあった。

退職を決意するまでに10年必要だった

結果的に10年かかったけれど、この10年は必要な時間だったと思っている。10年働いたからこそ色々な経験をさせてもらえたし、自分が納得して辞められるまで機が熟すのを待っていたように思う。だから、早く辞めればよかったとは思わない。

一切の迷いがなくなるときが、退職するとき

自分の経験から思うことは、迷っているうちはまだ辞めどきではないということ。本当に辞めるときというのは、たぶん本能的にわかるもので、そのときにはもう何の迷いもなくなっている。私の場合は仕事で病んだことをきっかけに退職にいたったわけだが、逆に言えばそのようなきっかけがなければ退職を決意することはできなかったと思う。
仕事を辞めたいけど辞められないと悩んでいる人には、焦らずそのときがくるまでじっと待とう、と伝えたい。そのときはすぐにやってくるかもしれないし、こないかもしれない。いつやってくるかはわからないが、いつきてもいいように、辞めた後のシミュレーションをして、あらかじめ準備できることはしておいた方がよい。辞めてすぐに前職のときと同じ収入を稼げればいいが、それは難しい場合も多いだろうから、最低限の貯蓄はあった方がよい。転職に有利な資格をとっておくのもよい。
早く辞めたいと焦る気持ちもよくわかるが、迷いがある状態で無理やり辞めても、何かしら悔いが残る可能性が高い。だから自分の中で腑に落ちるまでは辞めない方がよいと思う。

遅かれ早かれ、辞めたいと潜在的に思っていたら、いつかそれが現実になる日がくる。不思議なもので、その日は突然やってくる。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?