文芸部誌「うわごと」

毎週金曜日誰かが投稿する週末文芸部。オンライン文芸部誌「うわごと」です。

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最近の記事

くしゃみ

過敏な身体を抱え 午後に知る部屋の空虚 思うままにならない 意識に握られたブレーキ 電灯の紐は何度も弧を描く 頭を今よぎるのは 水平線を切り取る港のカモメの羽と 透視図法の消失点の孤独 小さな破裂音 声なき狼煙           (執筆者  すいか)

    • 杖はないけどペンはある

      私は魔法少女の夢を見ることはできたが、手にできなかった子どもだ。 カードと杖を手にすることができず、タロットにときめきを覚えた。 魔法の力がこもった宝石の代わりは祖父母の家の砂利石の一等透明なものやとっておきのキラキラの折り紙を巻いた石だった。 あの子の家には日曜朝の魔法少女達のステッキがあった。私も同じものを持っていたが、それはお菓子売り場のおまけのもので、あの子のよりも小さく、シールの巻かれたそれはさらにチープさを際立たせた。 けれど今は違う。 私の杖は0.5のSARA

      • ながしよみ⑩

        こいぶみ ゆりの一つもまともに描けない この身をどこへ連れて行こう 紙に咲いた徒花を 眺めて破くこともできず 仰ぐ6畳の天井 ケトルの先の水滴が雨を呼び込む サンダルで出たべランダ いきものの呼吸が匂うコンクリートから 衝動に駆られ飛び出す ゆりの一つもまともに描けない この身をどこへ連れて行こう 花弁に差すはずのない陰影が純真を偽る  それでも筆を止められず 雨すら流せぬ泥を持ち 傘の間で 肩を濡らして突き進む こんにちは。すいかです。 今自分の中の沸騰ワードは『脱

        • 虚夢十行 〜水筒の夢〜

           子どもが泣いている。月が見たいと土砂降りの甲板を指差すも、親らしき人は子を駆け出さすまいとしっかり手を握り拮抗状態だ。 「風邪をひいてしまうからやめなさい」  けたたましく駄々をこねる子を嗜めつつ、引っ張っていく姿とすれ違った。子どもの赤くなった目尻にチクリと胸が痛み出す。 「悪いことをしてしまったな」  水筒を開け底を覗きこむ。白々輝く満月が仄暗い筒の中で雨宿りをしていたとは思うまい。    あとがき こんにちは、マリービスケットの消費に今日も忙しいです。

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        • まちやのこ執筆作品
          3本
        • すいか執筆作品
          13本
        • イドバタゴロー執筆作品
          4本
        • 南村杞憂執筆作品
          3本
        • 撲殺院阿修羅丸執筆作品
          2本

        記事

          ながしよみ⑨

          残暑 猛暑で沸騰した色は飛び込む景色をより鮮やかにした 塗装仕立ての壁は地中海から来たような顔をして蝉時雨を仰ぐ その中であなたの浮かぶ境目だけが淡く 朝顔の群れに溶けていく 空白の便箋 転がるブルーブラック 紡ぎたいことほど違うものになり 心とかけ離れていく気がした あなたの溶ける今日この頃 朽ちたひまわりの中 麦わら帽子を突き抜ける日差しが眩しくて 後頭部につい投げかけた空耳 振り返るあなたは 輪郭を取り戻す こんにちは。最近某ロゴの命の輝きが有名ですね。うちのベ

          はちがつのうわごと

          よく分かっていない 飲み干したら感情になるのに ワンコインのそれ 狂った定規を叩き割れない 透明をどこまでも濁らせる ぼくらの思惑 上から 下から このままじゃ死ねない 不幸な思い込み ぼくもきみも そうやって生きてる 焦燥感は、なくならないから大丈夫 霊柩車 子供部屋 このままじゃ 死ねない お久しぶりです、やる気のある時とない時の差が激しい。イドバタです。でもみんなそんなものでは……?って思おうとしています。 なんか、近いうちにまた引っ越して環境が変わりま

          はちがつのうわごと

          ながしよみ⑧

          シルエット 君の靴音消えてゆく 夕方横断歩道 信号アラームの二拍子に 割り込む革靴の四拍子 君が離れていくほど ほどけていく感覚に陥っていく 融けていく友人像 はみ出た正体が一歩を踏み出すも 横切る車輪が引き止める もう誰もいない向こう側 君の知らないわたしは 君の知らない顔で 君の知らない音楽を思い出しつつ 君の知らないわたしを今日も夕陽にくべました 時差の関係で今日載せました。(金曜日に間に合わなかった)

          ながしよみ⑦

          今年はお墓に行けなかったのでテレパシーで拝みました。

          まちアソート②健気なモノたちの町(町は廻る)

           「かみさま」はうんざりしていた。塔の外を飛び回る空飛ぶバイクの列はもちろんのことだけれど、地上に鳴り響く銃声の喧噪がいっそうその人の気を滅入らせた。知らない間に塔よりも上背のある超高層ビルがつくしのように立ち並んでいて塔の日照権は侵害され続けている。  いつもみたいに窓の縁に腰掛けることはせず、塔の中に三角座りをしておそるおそる下の様子をうかがっていて、そんな日がもう三日は続いている。死ぬ可能性はないけれど、大きな音と塔が地面から揺さぶられる感覚は心地よいものではなかっ

          まちアソート②健気なモノたちの町(町は廻る)

          ながしよみ⑥

          宿る 各々の呼吸音がもし耳によく届いたなら 縮み上がってひとたまりもないこの身体 空き家の蜘蛛の巣は 木漏れ日と羽虫を捕らえるだけで かすりもせずに遠のいていく 生き物も無機物もたたえた土の匂いに 命が宿った気がしていても 質量の軽さに小枝すら軋まない 宙ぶらりん 月明かりの灯る前 トカゲの夢 シダの葉にて待つ 今日はミョウガを漬けました。              (執筆者:すいか)

          ギワンの行方

           液晶画面の時刻と信号の赤色を交互に睨みつけた。気休めにと踏み出せない足を前後に小さく蹴り上げるも、はやる気持ちは変わらない。 『もう一本早い汽車で行くべきだった』  心の中で毒づくも時間は容赦なく刻まれる。SNSで紹介されていた好みの世界観の作品が遠のく気がした。なぜうちの地元はミニシアターの映画になると三ヶ月遅れになるんだ。さらに言えば放映期間も上映回数も短い。タイミングを逃せば観ることすら叶わない。最悪、上映より先にDⅤDのレンタルが早い時もある。それなら映画館より

          ながしよみ⑤

          シャンプー 電気を消した浴室で 水音だけが響く 湯気が鼻先を撫ぜる時 身体の空気は抜け 換気扇に巻き上げられれば 星を独占した曇天へと召し抱えられるだろうか 床に転がした星座盤がじわりとぼやける 息を潜めた箱の中 聞こえぬ泡の鳴き声を吸い込み 知りゆく胸いっぱいの孤独 鼻をひとつすすり まつげに願う蝶の羽ばたき こんばんは。すいかです。誰かおすすめの洗剤を教えてください。               (執筆者:すいか)

          しちがつのうわごと

          いつでも 笑顔でいたい 腹のうちに抱えて 爆弾魔 不敵な笑みを溜める 真顔はできない 泣いてはいられない どこかへ行こうよ 笑えないうちに、、、 指も足も、全てが惨めになる そんな夜もある 誰かのことを好きという その瞬間重みを持つ 身体はとても薄情で 唇を振るわさない愛情もまた 転けて滑って、なれない、なれないよ 血がにじまないことが なにより寂しいなんて! そんな夜もある って、全ての夜を片付ける 飲み干せない帳を干す、明日のシーツ、 滑る爪さえ、 お疲れ様

          しちがつのうわごと

          掌編刺繍は57577

          肩を食む 歯形の赤がいちばんの コンビニエンスなきみの証明 背徳の中でほうけて笑ってたきみ なんも意味なくってすきだ 口移し 戯れ夜の最寄駅 お前の唾液の味が好きくない   地獄行きだなおまえもおれも エンドロールにきみがいる 殴るほどラブやピースはうたえない 愛してもない憎いかんばせ 執筆者:南村杞憂 #短歌 #詩 #刺繍 #言葉 #note文芸部 #文芸部

          ながしよみ④

              柵 カレンダーの切れ端を 握り締めてベランダへ 今日にすがっても 星の溶ける速度は変わらない 生き物の呼吸よりうるさい室外機の回転が 緩やかに朽ちゆく心をなだめていく 閉ざされた向かいの窓で わたしの影法師を見た 別世界の顔をしてこちらを眺めてくるから 縮こまる気がして 花殻が散ったコンクリートへと目を伏せる お前のようにはなれないさ お前のようにはならないさ 鼻を抜けるミルクチョコの匂い 誰も見てないさ見てくれないさ 固めて丸めた今日を投げつける 暗がりに浮

          ながしよみ③

          こんにちは、すいかです。 好きな味はハッカ味です。 (執筆者:すいか)