おしょーせつ

まだ、題名がありません

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 一人きりの夜。一人には少し広い部屋にはテレビの光が目立っていた。テレビにはバラエティ番組で科学実験をやっていた。
 魔法に一番近いものは何かと問われると、物理的には「科学」と答える人が多いかもしれない。でも今の僕はでは、「人」と答えるだろう。
 二人で使っていたときのこの部屋は少し狭いように感じたが、今では少し広い。君は僕から離れていった。心には深い傷がついた。
 わかっていた。なんとなく過ごす日々が少しずつほつれていたことには。でも、背を向けてしまった。だから、完全にほどけ、消えた。
 今現在、魔法は一つだけ存在すると思う。人の心を操る魔法。使えるのは人だけ、人間ほど人の心を癒し、動かし、傷つけるものはいない。
 君は僕から離れるとき、僕に魔法を使った。僕の心には大きな穴を空けた。遠ざかって行く君の揺れるスカートが、余計に僕の心を虚しくさせた。