見出し画像

京浜工業地帯で工場夜景を撮ってみた話

工場夜景の撮影は、ハードルが高い。まず暗くて危ない場所が多いし、どこで撮っていいのかもわからない。また、交通手段が車じゃないと工場地帯を巡るのは難しい。

そんなとき、元上司がかつてはよく京浜工業地帯で工場夜景を撮っていたと言う話を聞いたので、連れて行ってもらうことにした。今回持っていった機材は、カメラがα7Ⅲ、レンズは標準ズームの「TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD」と中望遠の「SIGMA 85mm F1.4 DG DN」の2本を持っていく。

線路と工場と煙突

最初に訪れたのは、工場のすぐ近くに貨物線路のある場所。まずは標準ズームを使い、手持ちで撮ってみたら見事に手ブレしたので、三脚を使うことにした。脇をしっかり締めればそれなりに撮れるだろうと高をくくっていたが、夜景撮影に三脚は必須である。

E 28-75 F1.8
ISO640 28mm f4.5 4/5秒
E 28-75 F1.8
ISO400 28mm f4.5 4/5秒

ずっと広角で撮っていたのだけど、なんだか物足りない気がしたので今度は85mm単焦点で撮ってみることにした。中望遠の圧縮効果というやつで、かなり迫力が出てきた気がする。

85mm F1.4 DG DN
ISO100 85mm f1.6 4/5秒

同じ画角で撮った写真を、Lightroomで色温度を上げてみた。暖色系と寒色系で変化させるだけでも、かなり雰囲気が変わる。

85mm F1.4 DG DN
ISO100 85mm f1.6 4/5秒

工場地帯には、夜空を明るく照らすように煙突から炎を噴き上げている光景がよく見られる。そうしたシーンも、広角で撮るよりは中望遠のほうが迫力が出る。

E 28-75 F1.8
ISO2500 28mm f4.5 4/5秒
85mm F1.4 DG DN
ISO400 85mm f1.6 4/5秒

張り巡らされたパイプと湧き上がる水蒸気

次に、敷地いっぱいにパイプが張り巡らされている工場へと場所を移した。
工場の敷地に面して車通りの少ない道路があるので、歩道からカメラを構える。

85mm F1.4 DG DN
ISO2500 85mm f1.6 1/15秒

縦横無尽に張り巡らされたパイプ、あちこちから噴き上がる水蒸気がまるで産業革命時代のようである。Lightroomでスチームパンクを彷彿させるようなレトロな雰囲気で現像を施してみた。

85mm F1.4 DG DN
ISO2500 85mm f1.6 1/15秒

こちらは、人類滅亡後も工場だけが動き続けている終末感あふれる世界。
こうやって撮影したあとにLightroomで遊べるのも、工場夜景撮影の楽しさの一つである。

85mm F1.4 DG DN
ISO2500 85mm f1.6 1/15秒

穴場の夜景スポット

次に、川崎マリエンという名称で知られる川崎市港湾振興会館を訪れてみた。ここは東扇島にある10階建ての公共施設で、最上階には東京湾から東京、神奈川方面まで360°一望できる展望台が備わっている。

絶景が鑑賞できて21時まで入場ができる上に、入場は無料で駐車場も1時間無料にも関わらず、知名度が低くアクセスも悪いため、訪れる人が少ない超穴場スポットである。できれば誰にも教えたくないのだけど、あまりに人が訪れないと閉鎖されそうなので、ここでこっそりと教えておく。

さらにこの展望台は人が少ないせいか、三脚も自由に立てられる。窓のすぐ前に台があるので、足を伸ばしきらなくても三脚を置くことができるという、至れり尽くせりの展望台である。

まずは東京方面を撮ってみた。上の方にぽつんと建っているのが東京タワーである。

85mm F1.4 DG DN
ISO100 85mm f1.4 1.3秒

人がぜんぜんいないので、シャッタースピードを思い切り落として流れるヘッドライトを撮影することもできてしまう。

85mm F1.4 DG DN
ISO100 85mm f10 13秒

こちらは横浜方面。眼下に並ぶ工場地帯やベイブリッジ、ランドマークタワーまで一望できる。色温度は全くいじっていないのだけど、こうして比べてみると横浜方面の方はずいぶんとオレンジ色が多い。

85mm F1.4 DG DN
ISO10000 85mm f4.0 1/25秒

そびえ立つキリンと灯りが消えた高炉

最後は、運河を挟んで高炉やクレーンをながめることのできる公園からの夜景である。
この向かいにFEスチール東日本製鉄所京浜地区があり、この場所で100年近く製銑・製鋼、熱延工程を行っていたため、この公園から高炉の灯りを見ることが眺められた。しかし、2023年9月に国内市場の縮小などに伴なって操業が中止されたため、今はその夜景を見ることができない。

かつて100年もの間絶やさずに灯されていた高炉の灯りに思いを馳せながら、シャッターを切る。キリンの形をしたガントリークレーンの奥にひっそりと佇んでいるのが、高炉である。

85mm F1.4 DG DN
ISO200 85mm f8.0 30秒

工場夜景を撮るためのポイント


さて、最後に工場夜景を撮るためのポイントを記しておく。

昼間のうちに場所を下調べしておく

今回は工場夜景のポイントを知り尽くした人に案内してもらったので、安全な場所で撮影することができたが、知らない人がいきなり夜の工場地帯に足を踏み入れるのは大変危険である。誰でも入れそうな場所が関係者以外立入禁止であることも多い。そんな場所に入れば不法侵入になるし、真っ暗な場所をまっすぐ進んだらそのまま車止めもなく海へダイブしてしまうような場所もある。まずは詳しい人に聞くか、昼間のうちに入念に下調べしておくことが大切である。

働いている人たちのならないように撮影する

工場地帯は、眠らない街である。深夜に働いている方も大勢いる。遅い時間帯でも大型トラックや関係者の車が頻繁に出入りをしているため、邪魔にならないように撮影する必要がある。三脚を立てるにしても、大型トラックや車の行き来には十分注意した上で置いた方がいい。

なるべく1人では訪れない

夜の工場地帯には、誰も踏み入れそうにないひっそりとした闇の場所もある。そんな場所で何かあって夜の海に投げ込まれたとしても誰も気付かない。できれば、2人くらいで訪れた方がいい。かといってあまり複数いても、そこで働いている人にとって邪魔者でしかないので、3人くらいにしておいたほうがいい。

三脚は必須

最初の方でも書いたとおり、どれだけしっかり構えても夜景は手ブレする。夜景撮影に三脚は必須である。

しっかり構えたけど手ブレした

レンズフィルターは外す

85mmの単焦点はレンタル品だったので、予めレンズフィルターが付いていた。このレンズフィルターのせいでフレアやゴーストのような変な光が写ってしまっていた。撮影時には全く気付かず、あとで現像しているときにようやく気が付いた。夜景撮影には必ずレンズフィルターを外しておくことをおすすめする。

フレアとゴースト
ゴースト

締めくくり

工場夜景は冬に行くと水蒸気の量が増えて幻想的な雰囲気で撮影できるのだという。今度は違うレンズを借りて、また訪れてみたいと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?