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うつしおみ 第59話 青空と呪い

魂は生きる辛さや苦しんで死ぬこと、
失敗したり不幸になることを恐れていた。

いつでも何かに恐れていたため、
それは魂にかけられた赤黒い呪いとなった。

魂はその呪いに水を掛けて落とそうとしたが、
それを手放すことに躊躇してもいた。

恐れのその痛みによって生が際立ち、
魂に生きている実感が与えられていたからだ。

そのため呪を解きたいという気持ちと
呪われたままでいたいという気持ちが渦巻いていた。

心に深く刻まれた呪の放つ青い閃光が魂を削り、
その痛みを抱きしめて空を仰ぎ見る。

青く澄んだ空に恐れはなく、
そこで白い雲が風にたなびき、鳥たちは自由に羽ばたいていた。

空は雲や鳥を思い通りにしようとはせず、
そこに何が起こっても黙って悠々としている。

魂が空にその身を委ねたとき、
恐れや痛みはそこに起こる雲や鳥たちなのだと悟った。

魂は呪われるだろうが、空は呪われることなく、
それがあることさえ抱きしめているのだ。

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